87 自称友人 下
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「ごきげんよう、ジャイル殿下。本日はどのようなご用件で?」
アシュレイは淡々とした口調と表情のない顔で挨拶をする。
「その顔、その言い草!――――アシュ、随分と冷たいじゃないか! 先日は俺の寝所にまで入って来たくせに!!」
頭脳明晰で豪快な性格の第四王子ジャイル。
彼は今、もっとも次の国王にふさわしいと噂されている人物だ。
しかし、ライナスとアシュレイは彼のことを警戒している。食えない人物として・・・。
「先日は大変失礼いたしました。お陰様で助かりました」
アシュレイは恭しく頭を下げる。
――――相手の煽りに乗るつもりはない。
「いやいやいや、何でそんなに他人行儀なんだ!? 俺とお前の仲だろ?」
「いえ、いつも通りの距離です」
「酷い・・・。お前、ライナスに似て来たんじゃ・・・、いや、そんなことを言いに来たのではなかった。―――なぁ、アシュ、俺をライナスのお気に入りに会わせてくれ」
(ああ、やっぱり、殿下じゃなくて、アリア様に会いに来たのか~)
予定通りなら、ライナスとアリアドネはもうブリシア家に到着している時間だ。しかし・・・。
「父上に謁見する前に会っておきたいんだ」
「何か急ぐ理由でもあるのですか?」
「ん~、強いて言うなら、ライナスの女の好みを知りたいという・・・、好奇心?」
ジャイルはアッハッハッハ~と大声を上げて笑う。
(怪しい・・・。絶対に嘘を吐いている)
食えない相手である。
アシュレイはついつい疑ってしまう。
「大変申し訳ないのですが、ジャイル殿下は当分の間、アリアドネ様とお会い出来ません」
「はぁ!? どうして?」
「先ほど、ブルーフォレスト(国境の森の名)で大規模な崖崩れが発生し、道が寸断されてしまったからです。恐らく、復旧するにはかなりの時間を要するでしょう。―――というわけで、ライナス殿下たちは皇都に引き返すことになりました。今後の予定も未定で・・・」
「いやいやいや、情報が早すぎないか!? ブルーフォレストのがけ崩れ? 俺の耳には何も届いていないぞ!」
「左様でございますか。差し出がましいとは存じますが・・・、ジャイル殿下、こちら側からブルーフォレストに至る道を、一刻も早く封鎖された方が宜しいかと・・・」
「ああ、もう! 分かった!! 今日のところは引くが、次の機会には絶対、父上(国王)より先にアリアドネと会わせろよ!!」
―――ジャイルがアリアドネのことを呼び捨てにしたので、アシュレイはカチンと来た。
「それはお約束出来かねます」
「なっ!」
一瞬、怒りを覚えたジャイルだったが、スーッと深呼吸をして、感情を整える。
「今日はお前の勝ちだな。俺は今から街道を封鎖しにいく」
「迅速にご対応して下さり、ありがとうございます!」
アシュレイは晴れ晴れとした声と笑顔でお礼を告げ、キャビンから降りた。
ジャイルが御者に指示を出すと、程なく馬車は動き始める。
「上手くあしらえて良かった・・・」
馬車を見送りながら、アシュレイはボソッと本音を溢す。
(崖崩れの連絡時に『ピートアイランド王国の王族にアリアを奪われたくないから、今から婚約を申し込む!』と殿下が言ってたし・・・。俺、いい仕事をしたんじゃないか?)
アシュレイは満足げに曇り空を見上げた。
「(恋愛経験ゼロの幼馴染の恋が)どうか上手く行きますように・・・」
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