62 忠誠 上
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
ミアに手伝ってもらい、雨でしっとりとしてしまったドレスを脱ぐと肩が楽になった。思っていたよりも水を含んでいたようだ。
「身体が冷えていらっしゃいますね。でも、大丈夫ですよ。毛布も持って来ましたから。お着替えが終わったら、しっかりと温まりましょう」
手際よく持参したドレスを着付けしていくミア。アリアドネは彼女から指摘されるまで、自分の身体が冷えているということに気付いていなかった。
(それどころじゃない出来事があったから、雨のことも余り気にしてなくて・・・)
「で、アリアドネ様、殿下は何故、服をお脱ぎになったのですか?」
ミアは何気なく質問してくる。アリアドネはハッとした。
(何度も服を脱いだことを追求してくるということは・・・、ミアは彼が銀狼ということを知らないのかしら?)
もしそうなら、ライナスの許可もなく勝手に銀狼の話をしてはならないだろう。
(でも、その場合、ライナス殿下が服を脱いだ理由を何と説明したらいいの!?)
口を噤んだまま、なにやら真剣に考え込んでいるアリアドネを見て、ミアはヤキモキする。『そんなに言いにくい出来事があったのだろうか?』と。
「あ、あのね、その、理由は・・・」
「理由は?」
「――――ライナス殿下に聞いて下さい!」
(ダメだわ。私が下手な言い訳をしたら、絶対におかしな話になってしまうもの)
「承知いたしました」
(今、ミアの目の奥が光ったような・・・。気のせいね、きっと!!)
「それにしても、土砂崩れ現場は酷い有様ですね。素人目にも道が復旧するまでしばらくかかりそうですし、やはり一度、皇宮へ戻られた方が宜しいかと・・・」
「ええ、ライナス殿下もそのつもりみたいです」
「ご家族と会う予定が延びてしまいますね」
ミアは残念ですね~と、アリアドネを気遣う。
「ええ、でも準備を整えてから向かう方が安心なので」
「準備?」
ミアは怪訝な顔をする。アリアドネは今更、何の準備をするというのだろう。彼女はこの一か月で突貫の淑女教育も難無く済ませている。
「ミアには先に伝えておきます」
アリアドネはライナスから了解が出るまで、時属性のことは周囲にも秘密にしておくつもりだ。ただ、一番身近にいる彼女にはアリアドネとライナスの関係が変わるということを話しておくべきだろう。
「先に?――――何でしょうか」
「私、ライナス殿下の妃になります」
「はぁ~~~~~~あ?」
ミアの大きな声は辺りに響き渡った。騎士団員たちが『何ごと?』と全員馬車の方へ振り返ってしまうくらいに・・・。
「殿下―っ!!やっぱり無体を働いたのね!!既成事実で断らせないようにするなんて卑怯だわ!!」
ミアは興奮している。彼女はメリルと共にアリアドネのことを守っていこうと約束した。なのに、目を離したすきに狼皇子が子ウサギのようなアリアドネを手籠めに・・・。
「待って、ミア、違うの!!ライナス殿下から無体なことなんて・・・、されてないわ」
「では、何故、服を・・・」
「それはきちんとした理由があるの。私からは言えないのだけど」
「――――分かりました。後で直接殿下に聞きます」
ミアは『クビを賭けてでも、殿下から事情を聞いてやる!』と決意した。
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