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赤ずきんを被って森へ入ったら、銀狼が助けてくれました(継母と双子の妹にはもう懲り懲り)  作者: 風野うた
第二章 ブリシア公爵家のアリアドネ

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53 遠吠え 中

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


「アリア、二時間ほどで皇宮の救助隊がここへくる」


「二時間!? 意外と早いですね・・・」


「あと、ピートアイランド王国へ先に入ったアッシュにも、崖崩れで道が通れなくなったから、一度、皇宮へ戻ると伝えた。私達がいつまでも到着しなかったら、ブリシア公爵夫妻が心配するだろう?」


「はい、お心遣いありがとうございます」


(あの遠吠えだけで皇宮やアシュレイ様とのやり取りを完了!?―――それって、ライナス殿下の遠吠えを聞いた相手も、何らかの手段で返事をしたということよね?)


 彼女は抱きしめていたライナスの服を身体から離し、それを手に持って、ジーッと見つめる。上質な絹糸で織られているジャケットは彼女に強く抱き締められてシワだらけになっていた。


(崖崩れで気が動転して、ライナス殿下と銀狼さんが同一人物だったという事実をすんなり受け入れてしまったけど・・。改めて考えると皇子の正体が銀狼って、かなり衝撃的な話なのではないかしら・・・)


 眉間に皺を寄せているアリアドネをライナスはジーッと見ている。


(その上、遠方の相手と遠吠えで連絡を取り合えるって、一体・・・)


「遠吠えに何か暗号のようなものが仕込まれているのかしら?―――だとしても、それを受け取った相手はどうやってこちらへお返事を届けるの?」


 アリアドネの密かな呟きを銀狼(ライナス)の耳はしっかりと聞き取っていた。


「アリア、銀狼の血を持つ者は私だけではない」


「血?」


「皇族には時々私のように銀狼の姿へ変身出来る子が産まれるんだ。銀狼同士だから、遠吠えでコミュニケーションを取れる」


「―――そうなのですね・・・」


(驚いたわ。ライナス殿下以外にも普段は人として生活している銀狼さんがいるなんて!)


「皇族の方にそんな秘密があるとは知りませんでした」


「ああ、知らなくて当然、これは国家機密だからな。アリア、ここまで告白したついでに教えておこう。ドラクロア帝国を建国した初代皇帝ラクロアの正体は聖獣だ。そして、その血を引く私も・・・」


(聖獣・・・)


「いにしえの聖戦によって穢れに覆われてしまった大地を浄化するため、女神は聖魔法を使える聖獣ラクロアをこの地へ遣わした」


 ここでライナスは視線を遠くの山へ向ける。アリアドネもつられて同じ方向を見た。


「かつてはあの山々も穢れに覆われていた。ラクロアはすべての浄化を終えるまでには長い年月が必要だと考え、ドラクロア帝国を建国した。―――そして今はラクロアの直系である私が指揮を執り、仲間たちと共に浄化の使命を果たしている」


 彼はアリアドネを見る。


 まだ前方の山を見つめている彼女の凛とした横顔はとても美しかった。


「―――穢れに覆われている場所は昔より減少した。だが、穢れを生む不毛な戦いがこの世から無くならない限り、全てが消え去ることはないだろう」


(戦いが穢れを生む・・・)

最後まで読んで下さりありがとうございます。


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