52 遠吠え 上
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
二度のがけ崩れの被害は甚大だ。
緑豊かな木立は真っ黒な土砂に飲み込まれ、馬車道は完全に崩れ落ちた。
道が復旧しない限り、ピートアイランド王国には行けない。
しかし、このトラブルのお蔭でアリアドネの魔法属性が明らかになった。
彼女の持つ魔法属性は時(時間)。
これは隣国ピートアイランド王国の王族の血筋にしか現れないと言われている属性だ。要するにレアな属性なのである。
「(あ~、もう、ジャイル(第四王子)がアリアを王子妃に迎えたいなんて言い出したら、最悪だ・・・)」
ライナスの中に新たな懸念が誕生した。
現状、ライナスはアリアドネの恋人でも何でもない。だから、ピートアイランド王国の王族が彼女を欲しいと言い出したら、止める術がない。
「(もし崖崩れに合わなかったら、十時前にはブリシア公爵家に着いて、アリアドネは祖父母と感動の対面をしていたはず・・・。そして、明日は大聖堂で教皇立ち合いのもと、魔法測定を受ける予定だった)」
そして、教皇がアリアドネの魔法属性を発表して、世間にアリアドネが時属性を持っていると知られてしまったら・・・
「(アリアはブリシア公爵家のアリアドネ嬢として、強制的に王族へ嫁ぐことになるだろう。やっとクロ―シェ伯爵家から解放されたばかりなのに・・・)」
ライナスはどうやってアリアドネを守るべきか・・・と、思考を巡らせる。
「アリア・・・」
彼は今後の懸念も含めて、一先ず、彼女に伝えておこうと決意した。
ところが、アリアドネは・・。
「ええ、道も、馬車もないですし、この先へ行くのは無理ですね~。相変わらず、雨もパラついていますし・・・」
アリアドネはライナスの心配事を知らない。
だから、この先に進むのは難しいという現実的なことを口にした。
「ああ、確かに・・・」
ライナスは彼女の言葉で我に返る。目の前の大惨事をすっかり忘れていた・・・と。
「―――助けを呼ぼう。アリア、かなり大きな声を出すから、私が良いというまで耳を塞いでおいてくれないか」
「はい、分かりました」
アリアドネは両耳を手のひらで覆った。
「用意出来ました~」
彼女の返事を聞いてから、ライナスは天を仰いで、グオ~~ッと遠吠えを始める。
(スゴイ声量、皮膚がピリピリとする・・・。耳を塞いでいなかったら、気を失ってしまいそうだわ。―――で、この声はどこまで響いていくの?)
ライナスは遠吠えを繰り返していた。アリアドネは遠くの山を何となく見つめて待つ。
―――十五分ほどで皇宮とピートアイランド王国の両方から返事を得た。ライナスはジーッとアリアドネを見つめる。
(ん? もういいのかしら・・・)
「手を離しても、大丈夫ですか?」
ライナスは大きく頷いた。
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