40 帰還
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
アシュレイは隣国の大聖堂から、ドラクロア城の近くにある山小屋まで一気に駆け抜けた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・。夜明けまでに戻るのは無理だったか~」
悔しげに朝焼け空を見上げる。
ピートアイランド王国で見聞きした酷い話が、脳裏を掠めた。しかし、今は悠長に考え事をする時間などない。頭をブンブンと左右に振って、気持ちを切りかえる。
山小屋の鍵を開けて中へ入り、アシュレイは銀狼から人間へ戻った。
続けて、布で身体に巻き付けていた書類を外し、身体中から滴っている汗をタオルで拭う。
本当は熱いシャワーを浴びてサッパリとしたい。だが、今は一刻も早くライナスのところへ戻らなければならないので我慢する。
彼は用意していた服に着替えると、ベッドの下にあるレバーを引いて、棚を右へ動かし、皇宮に通じる秘密通路(近道)を開けた。
♢♢♢♢♢♢♢♢
「殿下! 長らくお待たせしました~!! って、えっ!?」
山道を全力で駆け抜けたアシュレイはアドレナリン全開モードで、勢いよく執務室のドアを開けてしまう。
勿論、ノックはしていない。
三人掛けのソファにピッタリとくっついて座っていたライナスとアリアドネはスッと離れた。
「(ちょっと待て、この二人・・・、距離が近くなかったか!?)」
アシュレイは目を細めて訝しむ。
「殿下?(これはどういう状況ですか!?)」
「アッシュ、お前のいない間に色々あったんだ・・・」
「色々・・・ですか?」
「ああ、実は・・・」
ライナスはアシュレイにアリアドネ投獄事件と、バーゼル公爵による『違法薬物密輸業者の摘発作戦』が大々的に行われたことを伝えた。
「はぁ? たった二晩で色々在り過ぎじゃないですよ~! でも、まあ、アリア様がご無事で本当に良かったです」
「はい、皆さまのお蔭で牢から出てくることが出来ました。ご心配をおかけしてすみません」
(それもこれも暗闇で私を見つけてくれた銀狼さんのお蔭だわ!! ライナス殿下にもきちんと伝えてくれたし・・・)
「アリアは被害者だろう。謝らないといけないのは私の方だ。部下が暴走して申し訳なかった」
何となく、良い雰囲気になっている二人を邪魔したくない・・・。アシュレイは一旦、出直そうと決意する。
「殿下、私の報告は後ほど・・・」
「いや、下がらなくていい。お前が部屋に飛び込んで来て中断したが、アリアにブリシア公爵家の話をしようとしていたところだったんだ」
「そうですか・・・」
即座にライナスから引き留められ、アシュレイは戸惑ってしまう。
―――隣国で調べてきたことを彼女の前で包み隠さず話してもいいのだろうか・・・と。
教皇から最後に聞いた話はアシュレイでも顔を顰めてしまうくらい酷い内容だったのに・・・。
急に表情を暗くしたアシュレイの代わりに、ライナスが口を開く。
「アリア、アシュレイ、実は今、ブリシア公爵家の次期当主ジョナサンがここ(皇宮)で働いている」
「?」
(えっ? ブリシア家の次期当主!?)
「他国の貴族がここ(皇宮)で働いている!? 殿下、どういうことですか!」
アリアドネもアシュレイも入り込むことが帝国内で一番難しい皇宮で、他国の貴族、しかもブリシア家の次期当主が働いているという意味の分からない話を聞かされ、混乱してしまう。
「アシュレイ、真相は本人に直接、聞こう」
―――ライナスは廊下に控えていた警備兵に皇宮捜査官のクラウス(ジョナサン)を直ぐに連れて来いと命令した。
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