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71.「火傷しそうなお茶会」

「兄さん、このお茶どう?」

「魂の安寧(あんねい)は遠かりし日々に過ぎ去れど、怨讐(えんしゅう)の果て、刹那の暁光(ぎょうこう)は此処に在る(訳:うまい)」

「だよね。ゴードンさん、お茶淹れるの上手なんだね……」


 わたし達が阿鼻叫喚(あびきょうかん)している横で、兄妹はほっこりお茶会中。

 ちょっとは手伝っ……


「……こういうの、久しぶりだね。子どもの頃以来かも」

(いにしえ)陽炎(かげろう)は霧散し、怨嗟は(ことごと)くを()いた。……が、灰燼(かいじん)と化してなお……懐古の情は、欠片を留めたらしい……(訳:昔のことはあまり覚えていないが、懐かしいな)」

「……ふふ。兄さんは、お茶淹れるの下手だったよね」

「…………。否。幼き稚児(ちご)は微かな渋苦(じゅうく)にも泣哭(きゅうこく)の調べを(うた)う(訳:違う、子どもの舌はこだわりが強すぎるんだ)」

「た、確かに、あの頃は小さかったけど……それだけであんなに苦いかなぁ……?」


 嘘。二人はそういうのずっとやってて。

 むしろ、もっとちょうだいそういうの。


「……お嬢、そろそろ茶でもどうっすか」


 ゴードンも同じものを見ていたのか、わたしに耳打ちしてくる。

 その顔には、思いっきり「お嬢に褒められたい」って書いてある。え、何それ。レイラに褒められても満足できないけどわたしには褒められたいって??? どうしよう。そんな顔されたら、めちゃくちゃ褒め倒したいけどめちゃくちゃ焦らしたくもなってくる。

 どうしたらいいのわたし。わたしの情緒をどうするつもりなのゴードン……!


「良いじゃーん! 続きはお茶飲みながらじっくり話そ!」


 わたしの葛藤をよそに、リナが明るい声で言う。

 彼女にもゴードンの提案が聞こえていたのかな。目がキラキラと輝いている。


「そしたら、アタシのブリッジお茶飲みも披露できるしね!」


 待って何それ。

 危ないから普通にやめた方が良いと思うし、熱湯顔面に引っかぶる未来しか見えないんだけど。レイラちゃんじゃなくても予知できるよそんなの。


「せやな。休憩した方がおもろいアイデアも浮かぶやろ」


 うんうんと頷く黒沼さん。

 リナはまたしてもハッと目を見開き、黒沼さんの方へシュバッと振り返る。

 

「ムムッ……この芸人魂……! やっぱりキャラが被っ」

「リナ、同じネタを(こす)るだけでは一生勝てませんわよ」

「ガーン!!!!」


 めちゃくちゃショックを受けたのを、分かりやすく顔と動きとセリフで表現してくれるリナ。

 まあでもブリッジ一辺倒(いっぺんとう)以外にネタができたのは良かったんじゃないかな。あと4~5個くらいは増やした方が良い気がするけど。


「関西人がみーんな芸人気質や思てたら大間違いやで。あたしは常に大マジメや」


 黒沼さんがなんか言ってる。

 大マジメに欲望に正直ってことかなぁ。……そっかぁー……。


「ほな、マジメに茶ぁしばきながら考えよか。『豚さん音頭』」

「マジ……メ……?」

「ヒヒッ、ここは黙っておいた方が面白くなりそうだよ」


 ほんとに?

 テーブルではアルバートが無駄に優雅な顔面と仕草で待機し始めてるし、大事故の予感しか見えないんだけど?


「さあ……僕に、君の素直なインスピレーションをぶつけてくれないか。それは処女(おとめ)のように初々しい侮蔑か、それとも淫売(はは)のように手慣れた嗜虐か……! ああ、(たの)しみだねぇ」

「帰れ変態」

「安心してぇなアルバート様! 帰ってもアンコールで呼び戻したるからな!」

「お嬢ー! なんか厄介なの増えたんスけど!!!」


 黒沼さんの熱烈なアルバート推しのせいで、ゴードンもかなりやりにくそう……

 ニコラスさん、笑ってないで助けて????

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