6 ロミオとジュリエット駆け落ちルート
最近恐ろしい事件がありました。
とある侯爵が神隠しに遭ったのです。
なんの痕跡もなく消え去りました。
とても恐ろしいですね。
怖くて夜も眠れません。
まあ、私が転移魔法で攫っただけですけどね。
ハーゲイ伯爵は満足しています。
私に心からの忠誠を誓うほどに。
これで、お兄様の派閥も終わりですね。
ハーゲイ伯爵が抜けたら無能しかいなくなるし戦争したら負けるでしょうね。
まあ、戦争になって負けると困るのでハーゲイ伯爵にはまだお兄様の元で働いていただきます。
今、お兄様の派閥が無くなっても困りますしね。
どうしてかといいますと、お兄様の派閥に匹敵する派閥がもう一つあるからです。
今までは、元王太子のお兄様と第三王子のお兄様ともう一つの派閥の三大勢力が争っていたのですが、一つは消えましたし、ここでお兄様の派閥が消えてしまいますと勢力が保てなくなるんですよね。
なので今はこのままです。
仕事ができない侯爵が消えたところでそこまでバランスは崩れませんし。
いつでも消せるお兄様の派閥はいったんこのままで次に行きます。
もう一つの派閥である第2王女の派閥です。
王女ですが、正室腹なので王位継承権は高いです。
となると当然神輿にする人が出てきます。
お姉さまは人ととしてあまり問題ありません。
どちらかというと女性だてら王になるという決意がありますし重要性も分かっています。
王族としての役割を懸命にこなそうとしています。
わがままでも喧嘩っ早いわけでもありません。
では何が問題なのかというと、人を信用しすぎなんですよね。
派閥の人たちが自分を王にと望んでいる。
ならば皆が望むような立派な王にならなければ!!
お姉さまはそう思っています。
それは悪い事ではありませんが、お姉さまの周りが腐っているんですよね。
もし仮にお姉さまが女王になったらこの国は腐り堕ちます。
立派な傀儡政権の誕生となります。
それだけは避けなければなりません。
なのでお姉さまの派閥は消えていただきます。
大丈夫です。
お姉さまには悪いようにいたしません。
身分違いの恋って素敵ですよね。
身分の差を超えて実る愛。
どんな壁があろうとも共に乗り越えていける愛。
最後には結ばれる愛。
それこそが真実の愛だと思います。
え、お兄様の真実の愛は邪魔したって?
なんのことですかね?
私はそんなことするはずないじゃないですか。
あんなのは真実の愛なんかじゃありませんもの。
これから私がお姉さまに用意するものが真実の愛ですよ。
わたしにとってね。
ふふふ。
ー▽ー
というわけで、お姉さまには王子様に迎えにきていただきましょう。
お姫様を迎えに来るのは王子様って決まっていますからね。
なんてロマンチックなのでしょうか。
特にロマンチックなのはお姫様がピンチの時に駆け付ける王子様ですよね。
例えば、賊に襲われているところを助けたり。
とってもロマンチックですね。
おや、これは。
お姉さまがとある町に出かけているところに賊が現れたではありませんか!?
ああ、お姉さまがピンチです!!
賊の中には手練れがいます。
今の護衛では守り切るのは難しいです。
手練れの護衛が出発の前日に腹痛で倒れたりしなければこのようなことにならなかったのに。
これではお姉さまが殺されるかもしれません。
おや。
誰かが馬に乗って駆け付けてきました。
まるで王子様みたいだ。
華麗な剣技で賊たちを倒していきます。
とても強いですね。
負けを悟ったのか賊たちは去っていきました。
お姉さまは助かりました。
突如加勢した方にお姉さまがお礼を言っています。
おや、少し頬を染めていますね。
まあ、仕方がありません。
命の危機を助けていただいたのですから。
しかも王子様のようにかっこいい方に。
惚れても仕方ありませんね。
まるで物語みたいでね。
ふふふ。
さて、あの方が来るまでしばらくはセレスと遊んでいましょうか。
そして数日後。
なんと、私の目の前にはお姉さまを助けた方がいらっしゃるではありませんか!?
まあ、私が呼んだだけですがね。
この方はロミオさんと申します。
いえ、本名は違うのですが。
まあ、いろいろあって本名は使えないのですよ。
ロミオさんとは子供のころからの知り合いです。
私は今も子供ですけど、ロミオさんは立派になりましたね。
ロミオさんは世界中を渡り歩く冒険者なのですよ。
とある目的のために旅をしているのです。
そしてその正体は本物の王子様です。
まあ、元が付きますが。
別に廃嫡されたわけではありませんよ。
そんなのは真実の愛がどうとか言っている方だけで十分です。
彼は亡国の王子様なのですよ。
戦争で滅んでしまい、処刑されそうになっているところを私が助けたのです。
そして、とある目的のために旅をしているのです。
かなりファンタジーチックな目的なので彼の話を本にしたら売れるんじゃないですかね。
まあ、それはいいとして。
今はただのロミオさんとして私の食客として呼んだのです。
しばらくは王宮で過ごしていただきましょう。
そして、数日後。
ロミオさんとお姉さまが再会しました。
今は彼らと共にお茶会を開いています。
「まあ! ではお姉さまはロミオ様にお助けいただいたのですね!! まるで物語の王子様とお姫様みたい!! とっても素敵です!!」
とまあ、こんな感じにお姉さまにロミオさん存在を植え付けます。
運命の相手として。
もちろんロミオさんにも。
「そういえば、うんと昔の事なのですが、お姉さまって仲のよろしい方がいらっしゃいましたね」
ええ、本当に仲のいい方がいたんですよ。
ちょうどロミオさんを幼くした感じの。
ええ!?
ロミオさんってここに来たことがあるんですか!?
その方がロミオさん?
じゃあ、10年ぶりの再会じゃないですか!!
素敵ですね。
まるで運命みたい。
あーあ、ロミオさんみたいな方が私のお兄様だったらいいのにな。
おや、もうこんな時間。
お姉さまもお忙しいですしそろそろ解散しましょう。
はい、いいところで切り上げます。
そして後日、またお茶会を開きます。
ということを何度か繰り返してお姉さまとロミオさんの距離を縮めます。
そして二人は人目を盗んで合うようになっていきました。
そう、二人は愛し合うようになったのです。
しかし、身分の違いが二人を分かちます。
お姉さまは女王候補の王女。
ロミオさんは元は王子といえども今は身寄りのない旅人。
二人が結婚することなんてできないのです。
二人ともそれを重々承知しています。
しかし、それでも止めることのできないこの想い。
今はこれでいいと人目を忍んで会っていました。
しかし、それが周囲にばれてしまいました。
やはり身分の違いが二人が共にいることを許さないのです。
「という訳でロミオさん。お姉さまを連れてお逃げください。お姉さまもそれを望んでいます」
ならばやることは一つしかありません。
駆け落ちです。
「......お前、これを望んでいたな?」
「さあ、なんのことでしょうか?」
「ジュリエットが邪魔なのだろう?」
あ、ジュリエットはお姉さまの名前です。
だから、私は彼にロミオと名付けたのです。
まあ、お姉さまの名前に合わせただけで彼らのようにさせるつもりはありませんけどね。
「いえいえ、私はただお姉さまにお幸せになっていただきたいだけです。それに、このままではお姉さまは誰かと結婚しますよ。もちろんあなた以外の方と。それではお姉さまもあなたも不幸になってしまいます」
「......お前、ろくな死に方しないぞ」
「ちゃんとした死に方ができるならこんなことしませんよ」
本当に。
私も彼も苦労する。
「それはともかく、あなたの最後の目的地はここですので。それが終われば旅は終わり。お姉さまと幸せに過ごしてください」
「そうさせてもらう」
「これは、私からの報酬です。好きに使ってください」
「ありがたく貰おう」
「さて、そろそろ時間です。逃走ルートは頭に叩き込みましたか?」
「ああ、大丈夫だ」
「ならお別れですね。お気を付けて」
少しだけ会話をして別れを告げます。
すぐにお姉さまを連れてこの国の目の届かないところに消えていくでしょう。
王子様、必ずお姉さまを幸せにしてくださいよ。
王族としては少し問題はありますが、幼いころ唯一私たち姉妹に手を差し伸べてくださった人なのですから。




