表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/44

狂信のススメ

 どうも皆様。


 私はとある王国の王女のシスティーナという者です。

 つい先日、私たちに新しいお義母さまが出来ました。

 今日も今日とて私たちを守るためにせっせと肉盾業をこなしてくれています。

 何気に才能があったのか、私が誘導しているとはいえ、私を完璧に守ってくれています。

 きっと前世は騎士か、盾そのものだったのでしょうね。

 まあ、そんなことどうだっていいのです。


 そんなことよりとても大変なことが起きてしまいました。

 妹のセレスが病気にかかってしまいました。

 ただのお風邪ですけど心配です。

 なんせ赤ん坊ですからね。

 このまま症状が悪化したらどうしましょう。

 やはり、こんな劣悪な環境で子育てするのが間違っていたのです。

 確かに、それなりに広い部屋が与えられていますが、ほとんど放置されています。

 掃除などはまあ、ある程度私がしていますから問題はないのですが、問題は食事です。

 私の分はどうとでもなるのですが、セレスの食事が問題なのです。

 セレスはまだ乳飲み子です。

 本来なら母親から母乳を貰うのですが、残念ながら彼女の母親は彼女が生まれると同時に亡くなりました。

 なので、私たちの環境的に乳母から母乳をいただくのが普通なのですが、派閥の問題かセレスに母乳を上げようとする乳母はいません。

 いろいろと代用品をいろんなところからもらってきてはいたのですが、やはり限度というものがあります。

 今回のお風邪も私がちゃんとしたものを与えられなかったことが問題でしょう。

 お義母さまもオッパイが出ればもう少し役に立てたのに。


 という事で今からオッパイを取りに行こうと思います。

 後宮の破壊はどうするのかって?

 そんなことより今はセレスです!


 今すぐ取りに行きましょう!

 乳母を後宮に誘致するのかって?

 出来なくはないですが時間もかかりますし、仮に誘致しても、派閥の関係で動かしにくいですからね。

 前に手駒の侍女や騎士を後宮に招き入れたことはありますが、それにしても基本的には私とは無関係なところで動いていましたからね。


 ならば、乳母に頭を下げるのかって?

 私がそんなことするはずないじゃないですか。

 仮にも王女ですよ。

 乳母ごときに頭を下げるはずないじゃないですか。

 なに、簡単な事です。

 乳母に授乳させてくださいと頭を下げさせればいいのですよ。


 この後宮にはそれなりの人数の乳母がいますからね。

 乳母の数だけその人その人の事情があり、考えがあるのです。

 例えばあのカミーラさん。

 あの人なんかとっても引き入れやすそうです。

 この後宮内にいながら適度に善人で、ほんの少し弱みがある普通の人。

 後宮内で起こっている虐めなんかについては恐ろしくて目にも入らないような可愛らしいくらい普通の人です。

 小心者故に私たちのことを見て見ぬふりをしていますが、内心では罪悪感を感じているのは知っています。

 いえいえ、別にあなたの事を咎めたりしませんよ。

 前世の創作物なんかで、虐めの復讐としてその対象の見て見ぬふりをしている人にも復讐をしていたりしますが、私はそんなことしたりしません。

 あなたが普通の人故に何もできなかったのは知っていますから。

 そんなことは咎めたりしません。


 ところで、この後宮なのですが、騎士もいるためか意外と恋愛事があったりします。

 以前、騎士と侍女が結ばれてそのままどこかに消えていったって話もありましたし。

 もちろんそれだけではなく、騎士と人妻のいけない関係もあったりします。

 つまり、騎士と側室が肉体関係にあると?

 いえいえ、そんなことほとんどあるわけないじゃないじゃないですか。

 そんなものバレたら極刑ものですよ。

 ただでさえ、どこかの誰かが騎士に傾倒して側室カースト最下位に転落したのに、実際に肉体関係があると知られたらもうね。

 人妻なんてこの後宮には他にもいるじゃないですか。

 例えば乳母とかね。


 ふふふ。


 ー▽ー


 さて、セレスの容態も落ち着いてきましたし行動を開始しますか。

 ほうほう、今日はこんな所でお盛んになさっているんですね。

 ダメじゃないですかカミーラさん。

 旦那さんもお子さんもいるのに、こんなところで騎士とプロレスごっこをするなんて。

 そういうのはお家に帰ってからしないと。

 いつどこに誰の目があるかわからないんですよ。

 だからこそ燃え上がっているのでしょうが。

 ならばもっと熱くして差し上げます。


 近くまで行き、軽く物音を立てます。

 その音に2人の体が一瞬硬直します。

 よし、フラグは立てましたし帰って寝ましょう。

 2人ともビクビクしながら物音がしたところを覗きましたが、残念がらそこには何もありません。

 既に私はその場から離れていましたからね。

 風の音だと思ったみたいです。

 その後2人のプロレスごっこは終わるどころか激しくなり、先ほどとは違う様子でビクビクしていました。

 何ででしょうね。

 子供の私にはわかりませーん。


 翌日、カミーラさんは少し疲れを見せながらも、中庭で私の義母兄弟と自分の子供のお世話をしています。

 のんきでいいですねぇ。


 あ、ちょうど彼女たちの近くに子鳥さんが来ました。

 残念ながら私にはこの後宮でお友達というものがいません。

 なので私のお友達はこの子鳥さんたちです。

 異論は認めません。

 小鳥さんに昨日の出来事をご報告しましょう。


「鳥さん、鳥さん。昨日私は夜中に目が覚めてお外を歩いていたのです。そしたら男の人と女の人が服を少し脱いで抱き合っていたのです。何していたのでしょうね」


 いかにも無垢な幼児を演出して鳥さんに素朴な疑問を投げかけました。

 絶妙にカミーラさんにも聞こえたりしたかもしれませんが。

 そんな私の素朴な疑問をたまたま聞いてしまったカミーラさんの目が見開かれます。

 なんだかカミーラさんの視線を感じますねどうしたのでしょう。


「シ、システィーナ様!?」

「はい?」


 あらあら、そんなに焦ったかのような声を出してどうしたのですか。

 何かやましいことがあるようですよ。


「あ、昨日、男の人と抱き合っていた人」


 そんな彼女にばっちりと顔まで目撃していたことを言外に告げます。

 すると彼女は冷汗をかきながらパニックになりながらもどうにか私の口を閉じさせようと考えます。

 実力行使に出ない所が彼女らしいですね。

 まあ、わかっててこんな大胆な事しているのですが。


「システィーナ様、アレは」

「アレって昨日男の人と抱き合っていたことですか? なんで抱き合っていたんですか? どうして裸だったんですか?」


 出した結論は何とか私に忘れさせる、もしくは勘違いと思わせることだったのですが、私はさらに子供っぽい質問を投げかけます。

 子供なら何を聞いても仕方ないですからね。


「それはその......」

「むー、わからないなら他の人に聞いてきます」

「それはダメ!!」

「なんでですか? もしかして、いけないことしていたのですか?」


 いったん、頭をパニックにしてから、カミーラさんの罪悪感を表に出させます。

 これで正常な判断は出来なくなるでしょう。


「あ、ぅ......」

「答えてくれないならあなたの旦那様に聞いてきます」

「だんな、さま?」


 そしてさらにカミーラさんの罪悪感を引きずり出します。


「あれ、違うのですか? 旦那様でもないのに違う男の人と抱き合っていたのですか?」


 などなど、カミーラさんが浮気していたことを本人が完全に認めるように徹底的に揺さぶっていきます。


 基本的にカミーラさんは小心者の普通の人です。

 いじめがあれば可哀そうに思うし、かといって何もできずに見て見ぬふりをします。

 今回の事はそれとそう変わりありません。

 騎士と肉体関係を持った。

 それはカミーラさんの正義感と言うか貞操観念からすればそんなこと本来許されるものではありません。

 それ故に、彼女は自分の心さえも見て見ぬふりしていました。

 旦那さんのことは愛していますし、騎士と肉体関係を持ったのも押しに負けただけです。

 何ならいざとなったら肉体的に勝てない騎士に逆らえなかったという風に、カミーラさんは心の中に幾重にも蓋をして見て見ぬふりをしていました。

 そうしないと小心者故に罪悪感を感じて押しつぶされてしまうから。

 なので、その蓋を取り外して見て見ぬふりが出来ないように一つずつ取り払って行きました。


 私の言葉にカミーラさん自分がしたことに気が付いた、認めてしまった。

 今まで直視せずに考えないようにしていたことが頭の中を駆け巡り、罪悪感に押しつぶされそうになっています。


「裏切られてしまって。旦那様可哀そう」

「あ、あぁぁあ」


 そして最後にトドメを刺します。

 いやー、自分の才能が恐ろしいですね。

 たかが浮気で言葉一つで廃人間近まで追い詰めることが出来るだなんて。

 おっと、追い詰めたんじゃないですね。

 純真無垢な子供の質問によって何故か知らないですけど、たまたま彼女か自分で勝手に精神的に追い詰められているだけですしね。

 こんな所でしょうか。


「大丈夫です」


 頭を抱えて泣く彼女の側に歩み寄り耳元でささやく。


「大丈夫です。確かにあなたがしたことは許されることではないです。誰もがあなたを罪深い人と思うでしょう。旦那様も絶対に許しはしないでしょう」


 誰一人あなたを許さないと刷り込みます。

 これだけ精神的に弱っていると意外と心の奥底に刷り込まれるんですよ。

 彼女の場合、自分は世界一罪深い罪人だと思うようになっていますね。


 可哀そうに。

 そんな罪を一人で抱えてしまって。

 大丈夫です。

 私が。

 私だけがあなたを許して差し上げます。

 しかしそれではあなたは自分が許せないでしょう。

 罪を犯したのならそれを償えばいいのです。

 私が導いてあげます。

 さあ、顔を上げて私の手を取って。



 こうして、私を神だと思う一人の狂信者が出来ました。


 ふふふ、すべて計画通りです。


 カミーラさんの性格は知っていました。

 カミーラさんの男女関係も知っていました。

 カミーラさんの罪を知っていました。


 すべて知っていました。


 カミーラさんはただ小心者な普通の人です。

 世間一般の人とそう変わらない、見たくないものは見ず、心に蓋を作って罪を押し込める。

 そんな普通の人です。

 それ故にちょっとしたことで罪悪感を感じやすく、簡単に押しつぶされてしまいます。

 逆に言えば土台を作れば支えることが出来るのです。

 私はその土台として私に対する忠誠心、と言うか信仰心を植え付けました。

 私の言う通りにしていれば大丈夫。

 そうすれば自分は救われると信じるように。

 たいして心が強くないカミーラさんは何か縋るものがなければ肥大化した罪悪心を抱えたまま生きてはいけないですからね。


 そして、その罪の元となる、旦那さんと生まれたばかりの子供がいるにもかかわらず、この後宮に来てから騎士の方と肉体関係を持っていることも知っていました。

 ていうか、その前から別の人とも肉体関係がありますし、何ならそのお子さん、旦那さんとの子じゃないですしね。

 おとなしそうな顔をして随分とまあ。

 基本的に押しに弱いというのはあるのでしょうが、心に蓋の仕方を覚えたのに問題があったのでしょうね。

 これは仕方ない事だと認識してしまえるのですから。

 今度何か問題があったら、その子は旦那さんとの子じゃないと教えてあげましょう。

 きっと途方もない罪悪感にまみれて、さらなる土台を作ることになるでしょう。



 それにしても、何気に今回は無茶しましたね。

 結果的に成功しましたけど、カミーラさんに本性とまでは行きませんが、幼児とは思えない性格を出してしまいましたからね。

 まあ、私の事を神のように思っているようなので問題はありませんが。

 次はもっとこう、私のあずかり知らないところで事が進む感じにしたいですね。

 今回はセレスの件で急を要していましたからね。


 とにもかくにも、これでセレスの食料ゲットです。

 私の妹がお腹を空かせていると知った彼女は、神の妹であるセレスに自ら進んでオッパイを差し出しています。

 それが自らの贖罪の第一歩だと信じて。

 そのおかげか、セレスの体調も良くなり回復に向かっています。

 ひとまずの栄養的な問題はこれで解決でしょう。



 ありがとうございますカミーラさん。

 愚かなあなたのおかげでセレスにひもじい思いをさせないで済みます。

 可愛い可愛い私の狂信者さん。

 今後あなたのその信仰が揺らぎないなら、あなたの望む贖罪に導いてあげますよ。

 あなたの罪が許されるその日まで。


 ふふふ。







システィーナ様が今後よくやる手駒の作り方の一つです。

システィーナ様は自分に心酔させるために、救いと許しを用います。

単純に絶望の淵から救い出す事と、自分が罪深い人間だと思わせて、システィーナ様に仕える事によって許されると思わせたりしています。



よろしければ、ご意見・ご感想お聞かせください。

ご評価・ブクマがとても励みになります。是非よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 泥々の真っ黒な続きは?
[一言] すごく面白かったです! 続きが読みたいです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ