21 魔王ミツキ
「魔王ミツキ。なら、お姉さまはシスティーナお姉さまはどこにいるのですか!!」
私がシスティーナではなく魔王ミツキと名乗った瞬間に敵意をむき出しにするセレス。
「あら、いるじゃないここに。あなたの目の前に」
「目の前に。まさか!?」
察したようですね。
「ふふふ。そうよ。私は魔王ミツキだけどこの体はあなたの大好きなシスティーナのものよ」
そう、今の私はシスティーナの体を乗っ取った前魔王の娘、魔王ミツキなのです。
いろいろとややこしいですね。
ちなみにミツキは私の前世の名前です。
この名前の方が反応しやすいですしね。
「そんな、システィーナお姉さま。うそ。返して。システィーナお姉さまを返して!!」
必死の表情で私に詰め寄るセレス。
ごめんなさいね。
「ふふっ」
そんな彼女に対して私はどこからともなく取り出した剣で一閃。
ーーパサリ。
「あっ」
首元を狙った一閃は首を切り落とすことなく髪だけを切り落としました。
しかし、首元を斬られた恐怖から彼女は膝から崩れ落ちました。
「あら、あらあら。随分短くなったわね。お姉さまとおそろいに伸ばしていたのに。ふふふ。似合っているわよ」
「あああ......」
「ここであなたを殺そうと思ったけどシスティーナがお願いするものだから後回しにしてあげるわ。ふふふ」
私はセレスにそう言い放ち、愉快そうに笑いながら歩きます。
「さてさて、どうしようかしら。魔王となった以上システィーナの体を乗っ取ってこの大陸を支配することに失敗してしまったわ。けどちょうどいいわね。ここには各国の指導者たちが一堂に会している訳だし。皆殺しにでもしようかしら」
獲物を選ぶかのように当たりを見渡します。
「と思ったけど止めにしましょう。調子が出ないんだもの。あなたたちよかったわね。システィーナが精いっぱい私の邪魔をしようとしているわ。どうやらまだ完全にこの体を乗っ取れていないみたい」
私がそう言うとチャンスと思ったのか数いる指導者たちの護衛が数人私に攻撃してきました。
最高位の護衛なだけあって強いですが。
「でも、あんまり舐めないで欲しいわね」
私もそこそこ強いです。
近づいてきた護衛を逆に殺します。
職務を全うしようとした彼らには申し訳ございませんが。
まあ、これも運命だと思っていただくとしましょう。
彼らのおかげで精神的に、そして物理的に私に対する恐怖が深まりましたから。
「あーあ、血で汚れちゃった。まあいいわ」
やれやれといった風に剣を振って血糊を飛ばした後一度俯きます。
そして、狂気の笑みを浮かべてこう宣言します。
「私は魔王ミツキ。この世界の支配者にして新たなる神となる者。まずは手始めにこの体の本来の持ち主であるシスティーナが治める王国を手中に収めるとしましょう。大陸全土の人間たち。死にたくなければ私を畏れなさい。崇めなさい。従いなさい。死か服従かを選ばせてあげる。ゆっくり選ばせてあげましょう。それでは皆様ごきげんよう」
そう言い残して私は転移で会場を後にしました。
ー▽ー
ふう、疲れました。
さてと。
あああああああああああ!!
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
セレスごめんなさい。
怖い思いをさせてごめんなさい。
怖かったでしょう。
死を覚悟していましたもの。
それに髪まで切ってしまってごめんなさい。
せっかく伸ばしていたのに。
私とおそろいだったのに。
でもあの時はああするしかなかったんです。
私はあなたの姉ではなく、あなたも殺せる魔王となるにはああするしかなかったんです。
あなたを魔王の妹ではなく、魔王に姉を奪われた悲劇の妹にするにはああするしかなかったんです。
本当にごめんなさい。
あなたを傷つけることでしか守れない愚かな姉でごめんなさい。
「女王陛下?」
「......目下反省中だから少し待ってください。すぐに終わりますから」
「かしこまりました」
はぁ。
まあでも最悪の事態は避けることが出来ました。
もっとうまくできたかもしれませんが、短い時間で考えた方針にしては上出来なのではないでしょうか。
さてと、いつまでもこうしてはいられない。
ああ宣言してしまった以上は早く行動しなくてはいけませんから。
「ガルウェン公爵」
「はっ」
「あなたの考えで正解ですよ。流石ですね」
「お褒めにあずかり光栄でございます」
やっぱりガルウェン公爵は優秀ですね。
彼を選んでよかった。
私が転移してきたのはガルウェン公爵の所です。
それなりの付き合いの彼なら私が魔王に体を奪われるなんて事あり得ないと分かっていらっしゃいますからね。
むしろ私にとって魔王なんて利用して捨てるものだと認識していると認識していますからねこの方は。
魔王になぜか認定されてはいるが、私は魔王ミツキではなくちゃんとシスティーナだと思っていたようです。
それは正解なので話は早く進むことが出来ます。
まあ、ガルウェン公爵がそう考えていると分かっているから彼の元に転移してきたわけですがね。
「それにしても、あなたが魔王に認定されるよりもセレスティーナ様の髪をお切りになったことに驚きました」
「あの時はああするしかなかったんですよ。私だってあんなことしたくありませんでしたから」
「まあ、その様子を見ている限りそのようですな」
普段絶対にしない床に転がってジタバタゴロゴロしていたわけですしね。
「さてガルウェン公爵。あなたの予想を訂正しておきましょう。まず、私の大陸征服の計画は完全に失敗です。私自身が魔王に認定されるなんて全くの予想外でしたから。なのでこの状況は私が望んでいたものとはかけ離れています」
ガルウェン公爵は私が魔王に認定されるのも私の計画の内だと思っていたようですがそれは違います。
まあ彼自身も今回の件に違和感は大いに感じていたみたいですけどね。
私がセレスを突き放すなんて本来あり得ない事ですから。
「あとは大体合っています。前魔王の娘、魔王ミツキ何て口から出まかせです。それを踏まえて聞きます。私は魔王になりました。世界の敵です。それでもあなたは私についてきますか?」
「私はシスティーナ様に忠誠を誓った身です。あなたが魔王になろうがそれは変わりありません」
私の問いに帰って来たのは即答でした。
彼ならそう言うと分かっていましたがよかった。
「そう。やっぱりあなたを選んでよかったです。ではこれからの作戦を伝えます。私が今から名前を挙げる者たちを謁見の間に集めなさい。私は少し出かけてきます」
さて、では始めましょうか。
魔王による恐怖の時代を。
実は強い女王陛下。




