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偶像を作り始めてどれだけの時間が経過したのだろうか。外から聞こえてくる雨音は穏やかになっていた。
「よし、出来た」
思わず声が漏れた。目の前には2体の歪なこけしが並んでいた。頭は丸くしようとしてむしろ角張っているし、胴に至っては何もしていない。
だが、俺はコレで満足だった。初めての挑戦で、しかも道具が限られている中でコレだけのモノを自らの手で生み出せたのだから。
暫く手に持ったり並べたりして鑑賞した。いつまでも見ていられた。頭を見て自分の技術不足を恨んだり、頭と胴を分ける為のくびれは上手くいったと賞賛したり。
鑑賞しているとある事に気づいた。見分けがつかない。多少の差はあるがパッと見るとどちらも同じに見える。
コレはちょっとマズいんじゃないだろうか。今日、スキルの神として拝んでいた偶像を相手に、翌日は観測の神として拝むのは不義理だろう。
偶像の1体を手に取り胴に刃を宛がう。そのまま刃の上を数回転がした。胴の中央に横一文字の跡が浅くついた。
これで良し。今、跡をつけた方が観測の神で、もう一方がスキルの神としよう。勝手なイメージだけど、観測の神は女神でスキルの神は男神なイメージがある。
そのイメージから横一文字の跡を腰のくびれに見立ててみた。俺の技術力ではコレが限界だ。いつか道具が増えたらリベンジしよう。
そう決意し2体の偶像に手を合わせた。観測の神様、スキルの神様、いつか必ず作り直しますのでその時をお待ちください。目を閉じ祈りを捧げる。
黙祷を終えると木の外に出た。雨はすっかり止み空は赤く染まっていた。もう日が沈もうとしている。
偶像制作に丸一日使っていたのか。気づくと疲れがドッと押し寄せてきた。
せっかく晴れたが今からは動けそうにない。疲れたのもあるが夜の森を探索するのは出来れば避けたい。軽くノビをしてから洞へと戻った。
幸いにも食料はまだ残っている。作業の合間に摘まんでいたから、全身あった狼が今では右の後ろ足しか残っていないけど。
その右足も数時間後には食べてしまう。それで手持ちの食糧は尽きる。昨日に引き続きまたも食料の危機だ。明日こそは人里を探すために動かなければ。
ただ、一昨日と昨日と森を少し探索したが人の痕跡を1つも見なかった事が気がかりだ。人が森に入る理由が無いだけならまだ良い。
万が一、この場所が人が入れない程に危険だったり深部だったりしたら……いや、考えるのは止めよう。近くに人里はあるさ、きっと。
そう自分に言い聞かせた。残りの狼の肉を食べる。嫌な考えを断ち切るように。明日の活力を得るために。
心の中に希望と不安を抱えながら眠りについた。




