11月13日 ~歩きお遍路8日目~
俺、疲れた……
今日行ったお寺が、薬王寺という、23番目のお寺だけだった。
たった1カ所だけ……
平坦な道で距離も30キロと昨日と大して変わらないのに、焼山寺と同じくらい足が痛んで、同じくらい疲れた。
別に山道でもないのに……
なんで?
もう日記を書く余裕もないし……
今までの疲れが一気にでたのかな?
昨日イライラしたせい?
俺はアスペだから、無意識に無理をしてしまうことがある。
自分で無理してるって気付けない。
また、ADHDでもあるので、自分が無理をしているということ自体を忘れてしまうことがあったりする。
普通の人は、過去の自分が今の自分と繋がってることをちゃんと理解出来てる。
俺は、理解出来ていない。
過去の自分と繋がっていないから。
たった今、この一瞬に生きてる自分しかここにいないから。
俺にとって、過去の自分と今の自分は、全くの別物なんだ。
だからすぐに過去の自分を忘れてしまう。
過去の自分に興味がなくなってしまうから。
何かを忘れてしまうということ。
たまに、とてつもなく怖くなる。
いつの間にか大切な思い出も忘れていそうで。
それでも、いっぱい思い出は作っていきたい。
思い出を忘れることがあっても、思い出自体は脳の中にしっかりと残ってるから。
記憶の蔵書を作って、作って、作りまくりたい。
もう2度と、俺が取り出せないような場所に保管されるとしても。
ってことで、歩く。
我慢して進む。
日記も書く。
ひたすら頑張る。
でも、疲れるものは疲れちゃう。
これはしょうがないよ、うん。
うー。
俺の体、もうガタがきてるのかな?
いやいや、俺、まだ若いのよ?
60歳のおじいちゃんが歩きお遍路してるってのに、俺がここでへばるのか?
ないないない。
海外でバックパッカーやってたことを思い出せ。
暴力と屈辱にまみれた旅に比べれば……
ヘロヘロな状態で着いた宿泊先は、とあるお遍路ブログで紹介されていた民宿。
ここには陽気なおばあちゃんがいて、とても楽しいとのことで、俺も予約をいれて入ってみた。
けど実際に泊まってみて、ちょっと嫌な気持ちになってしまった。
だってそこのおばあちゃん、お金を受け取る時だけニヤついて、後は殆ど睨むんだもの。
なんか用があって話しかけてくる時は、やたら馴れ馴れしくため口だし。
これがプライベートならいいんだけど、宿泊には金が発生してるんだから、せめて敬語で話して、不愛想に舌打ちしないでほしいな……
それにサービスも良くなかった。
民宿だからしょうがない部分はあるんだろうけどさぁ……お客の洗濯物を「あー重かった!」とか文句言いながら運ぶことないんじゃないかな?
歩き遍路で疲れていた心に、グサッと刺さった一言だった。
ブログで良く紹介されていたからって、そこが本当に良い場所なのかどうかは、分からないもんだな〜って思った。
でも、そう思ったのは俺が先入観を持っていたからかもしれない。
俺が先に、おばあちゃんに不快な思いをさせたのかもしれない。
実際にそういうことが、俺みたいな異常者には結構あるから。
無自覚に人をイライラさせる天才なのだ、発達障害者は。
だから、普通の人が泊まったら、俺とは違う感想になるかもしれない。
現にお遍路のブログでは、大絶賛だったし……
ああ、自己嫌悪。
こういう日は、さっさと寝るに限る。
暖かい布団の中で、うじうじ悩みながら就寝した。




