閑話 同僚たちの週末
総務部でいろんな騒動があった週末のこと。
王都にある酒場で、総務部のAとBは仕事の疲れを癒しに来ていた。
AとBはビールが入ったグラスをカチンと合わせて、グイッと一口あおった。
「いやー今週は大変だったー」
「お前、ほんとに大変だったな」
「まさかしまっておいた決裁書がなくなるなんて、思わないっしょ」
Aはそう言ってから、一口ビールを飲むと、グラスを置いた。
「しかも内部犯だなんて思わないって」
「全くだ」
後ろの席から顔を出したのは、なんと主任だった。
「うわあ!」
AとBはびっくりして、思わずイスから落ちそうになった。
「主任!驚かさないでくださいよ」
「すまん、すまん。いや、俺も混ぜてくれるか?」
「どうぞ、どうぞ」
Bが席を空けると、主任がそこへ座った。
「まさかとは思ったが、内部の人間が書類を隠すなんて。前代未聞だ」
主任の言葉に頷くAとB。
「確かに。元々あの人癖強かったけど、こんなことするとは思わなかった」
「ああ、俺も」
主任も一口ビールを飲むと、ため息をついた。
「前々から彼女には手を焼いていたんだ。新人の女性官僚が入ってくると、何かと嫌がらせしていたようでね」
「えっ?新人の女の子がすぐいなくなるのデボラさんのせいだったんですか?」
「ああ、だからすぐ部署替えになってしまって、総務部は男所帯になったんだ」
主任はそう言ってから頭を抱えた。
「マジか。あっ、すいません」
Bは思わず出てしまった軽口を謝った。
「いや、今はいい。今日は無礼講だ」
主任はグイッと一気にビールをあおると、店員におかわりを頼んだ。
「中間管理職も大変なんすね。これもよかったらどうぞ」
Aは心なしかげっそりしている上司を労った。
「ありがとう。うまいな、これ」
主任はうんうん頷きながら、つまみをかじる。
Bは主任に恐る恐る尋ねた。
「あの、そういえば、あの人どうなるんですか?」
Aもつまみをかじりつつ、前のめりになった。
「結局、被害者が多数だったのがわかって、減給のうえ管理部に降格したぞ。殿下が」
Bはそれを聞いて、驚いた。
「管理部って、実際は倉庫番の?あのベテランのおっかないばあさんが仕切ってる…」
「言葉を慎みなさい。あの人は元メイド頭だったんだ。だから、彼女ももう悪さはできないさ」
主任はため息をつきながら、頼んでいたビールを飲んだ。
「だからな、俺らは真面目にコツコツやるこった」
「そうですね」
AとBは顔を見合わせると、頷きあった。
少し酔ったのか、Aが赤い顔をして話題を変えた。
「そういえば怒ったグリーン様。ヤバかったですね」
Bはルイーゼの怒った様を思い出して、思わず身震いした。
「ああ。背筋がゾクっとした。普段穏やかな人が怒ると恐いってほんとだな」
Aは、恍惚とした表情でポツリと呟いた。
「俺、グリーン様だったら、ちょっと怒られてみたいなと思ってしまった」
主任とBは、顔を見合わせると、2人ともAの肩に手を置いた。
「大丈夫か?やめとけよ。お前、殿下のブリザードで凍らされるぞ」
「そうだぞ。殿下の笑った顔、忘れたのか?」
「はっ!そうだった」
同僚たちと主任の楽しい週末の夜は、こうして更けていった。




