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60.事情聴取

「この家のものか?」


 私の姿に気づいたのか、近衛兵が近づいて声をかけてきた。


「えぇ、そうですが……。なにかありました?」

「あぁ。ここ数日で、この辺りで火の玉が浮いているという情報が何件もあってな。少し調査をさせてほしい。とくに、家の裏を」

「えぇ。かまいませんが、先にお名前を聞いても?」

「あぁ、そうだったな。すまない。私は、王城で騎士団に所属しているレン・フォーミンという。突然の訪問で恐縮だが、調査のため、この家の裏を見させていただいても構わないだろうか?」


 すっと片膝たちになり、私の目線より下にかがみながら自分の身分を明かし、さっと私を見上げる。

 その顔立ちは、かなりイケていて、ちょっとだけ心が奪われそうになった。


「えぇ。と言っても、何もないと思いますが」


 私が許可を出すと、レンさんはすっと立ち上がり、スタスタと私の家の裏へと回る。

 といっても、もちろん何もない。炎の龍だって、騒ぎになるのはわかっているんだから、練習が終わると同時に、魔力供給を絶って消滅させている。

 それに、燃えるイメージなんてなにひとつしていないから、裏庭は私がパフォーマンス練習をした足跡しか残っていない。


「ふぅむ。足跡しか残っていないが、かすかに魔力を感じるな。お嬢様、身分証明ができるものをお持ちですか?少し拝見させていただきたいのですが?」


 私も、断る理由がないので、さっとギルドカードを渡すと、レンさんは、腰に差していた鞘を抜いて、私のカードを当てた。

 そこから、しばらくの間、鞘に当てたカードを見つめていた。


「……おっと、これは失礼。珍しい職業だったのでつい。私からひとつ質問をよろしいですか?」


 唐突に目の奥を光らせて私を見るレンさん。少し怖く感じて、一歩退いてしまった。


「あぁ、すまない。そういうつもりはなかったんだ。質問というのだが、芸者と職業に書かれてあるが、普段はどういった芸を披露されるのかなと思いまして」


 あぁ、そのことか。私が怪しまれているわけじゃないんだ。


「私の芸ですか。私の芸は、歌と舞ですが。ただ、今はまだ練習中の身なので、実績があるとは言えませんが」

「なるほど。そのときに、魔力を使った芸をしようとされているのですか?」

「練習中なので、なんとも言えませんが、今は確かに、魔法の力を借りて芸を披露しようかなと思っているところです。どこまでできるかわかりませんが」

「もちろん、ギルドには、許可を得ている。それは、カードにも書かれてあることで、あなたの魔法を少し見させていただいてもよろしいでしょうか?」

「あっ、はい」


 それだけ答えると、私は、何の考えもなしに、レンさんに魔法を見せる。


「えっと、こっちが、魔獣討伐のときに使う水魔法で、こっちが芸の披露で使ってみようと考えている炎魔法です」


 と言いながら、左手から水魔法を、右手から炎魔法を蜘蛛の糸を吐くようにそれぞれ軽く飛ばし、すぐに魔力供給を絶つ。

 いかにも、ただただ見せるだけ。というような感じで魔法を使ってみたのに、レンさんの顔は少しこわばっていた。


「どうかされましたか?」

「……。……あっ、いや。2種類の魔力を操れる人が本当にいるんだと思ってしまって。失礼。せっかく見せていただいたのに。話を少し変えさせていただいて、あなたが操ることのできる炎魔法で、火の玉を作ることはできますか?」


 そんなものお安い御用よね。

 私の手のひらに小さく周りを少し照らせるだけの火の玉を作る。


「なるほど。それを自由に飛ばすことは?」

「それも、この通り簡単に」


 そこからしばらくレンさんの指示通り、私の魔法について調べられた。


「ありがとうございます。それでは最後に。寝ているときも、その魔法を自在に操ることはできますか?」


 一瞬で私の思考回路を焼き切るような質問に、私は思わず固まってしまう。

 何を言っているんだろうか?という考えだけがかろうじて水の上に浮くようにぷかぷかとしている。


「寝ているのにそんなのわかるわけなくないですか?私、そんな能力はさすがにありませんから」


 レンさんは、私の答えを聞いて少しハッとしたよう。というか、この人、馬鹿なのかな。って思っちゃう。

 見た目はものすごく格好いいんだけどなぁ。中身が伴わないと幻滅一直線よね。

 現に、私からの評価も急降下しているわけだしさ。なんというか、馬鹿ってかわいそうよね。ってたまに思っちゃう。


「失礼した。それでは、ある程度分かったので、私はこれで失礼する。また何かあれば、協力を依頼することもあるがそれは構わないか?」

「面倒じゃなければね。それと、狩りの途中と、パフォーマンス中はさすがに協力できないからそれだけわかってもらえれば」

「あぁ、そこまで私も周りが見えていないわけでもない。協力感謝する」


 それだけ言うと、レンさんは私の家から立ち去って行った。

 まぁ、夜も遅いのに大変なこった。徹夜で仕事しているのかな。なんて思っちゃう。

 私には絶対できないことだ。

 さすがに、オールでダンスのビデオとか面白い動画とかを見ることはあるけど、仕事となると別だ。たぶん、私には無理。それだけは言い切れるだろう。

 まっ、火の玉騒ぎも、小さくなって、私の周りも静かになればそれだけで安泰だ。ここでの暮らしは何も言うことはない。

 そんなことを思いながら、正面玄関から自分の家の中に入る。

 とりあえず、ご飯食べたら、ゆっくりとお風呂に入ろうっと。ちょうど、炎魔法と水魔法も使えるわけだし。光熱費は実質ただよね。

 この魔法が元の世界に戻った後も続けばいいのになぁ。なんて夢見るけど、さすがに元の世界であれだけの魔法を操れば、大事件につながっちゃうか。

 まぁ、元の世界に戻れたらどうでもいいんだけどねぇ。


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