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10:冒険者

「そう言ってもらえると助かるわ。それじゃあ、お食事にする?お風呂はさっき戻ってきた女性の冒険者さんが使っているけど」


 お風呂に入ってからご飯を食べたい気もするけど、一緒がいやというわけじゃないけど、冒険者ってつかれてそうだし、わざわざそんな癒しの空間にずかずかと入るデリカシーのなさを持っているわけじゃない。ここはご飯にして、あとでお風呂に入るか。


 メイランちゃんのお母さんにそう伝えると、わかったわ。といって、ささっとカウンターの後ろに下がる。その後ろをメイランちゃんがついていくところを見ると、さらにここからお手伝いをするようだ。

 それじゃあ、私はお言葉に甘えて、いつものところで待っていようかな。そう思うと、いつもの席に向かい、夕食を待つ。

 そして、しばらくすると、いい匂いとともに、メイランちゃんが料理を運んできた。


「お待たせしました。ミニチュアウルフのステーキです」


 うぉ。ステーキか。通りでいい香りがすると思ったよ。

 この香りで白米が食べたい……。ただ、目の前にあるのはパンか。でも、おいしいから文句は言ってられない。

 ここ3・4日朝昼晩ずっとパンだもんな。ちょっと白米が恋しくなる。

 こういうときって、なんだか、私は日本人だということを実感するよね。


 出してもらったミニチュアウルフのステーキはとてもおいしく、牛ステーキと変わらないんじゃないかと思うくらい違和感はなかった。


「お口あったようでよかったです」


 自分で作ったわけじゃないのに、嬉しそうなメイランちゃん。でも、それほどの自慢の両親なんだろうな。なんて思いながらも、おいしかったって伝えてあげてね。なんていって、自分の部屋に戻る。


 自分の部屋に戻るってしばらくすると、外が少し騒がしいことに気づき、嫌気がさす。

 何かあったんだろうか?

 こういうときは、階下で情報収集するのが一番だよね。そんなことを思って階下に降りると、食堂が少しざわざわしていた。

 ただ、お酒を飲み交わして騒いでいる様子は何もない。何かを怖がっている。そんな風にも見受けられる。

 そして、聞き耳を立てると、どうやら、南の森の入り口近くでまさかの上位種が見つかったらしい。

 詳しいことは騎士団が調査中だというが、初心者の狩場ということもあれば、問題が出るのは必須か。こりゃ、私もしばらくは南側に行かないほうがいいかもしれないな。

 なんて思いながら、浴場に向かう。

 浴場には先客がいたようで、身体にあざや切り傷があるところを見ると、冒険者のようにも見える。もちろん、偏見で物事を決めつけるのはよくないけど、そういう風に見えてしまった。

 先客は、私の姿を確認すると、危害がないと思ったのか、すぐに目をそらした。

 とりあえず、私も絡むのは面倒だし、シャワーだけ浴びて、そそくさと退散しようか。


「あなたはさっきの話聞いていたの?」


 唐突に話しかけられて、私の動きはすべて止まった。

 声の主は、先客だ。


「さっきの話って?」

「聞いてないの?南の森に上位種の姿が見えたっていう話」


 あぁ、食堂でちょっとした騒ぎになっていた話か。まぁ、それ以外に何があるんだっていう話なんだけど……。


「う~ん。正直に言うと、わからないっていうのが本音かな。だって、私、冒険者じゃないし。それに、この街に来てまだ数日しかたってないのに、田舎者の私にはどういうことかわからないっていうのが本音ですかね」


 そう答えると、先客は、びっくりした様子で私を見た。また田舎から来たということに驚かれるんだろうな。


「それだけの魔力量を持っているのに冒険者じゃない!?」


 浴場で大きな声を出されると、よく響くからやめてほしい。

 というか、魔力量って何?そもそも、冒険者じゃないことに驚かれている?


「あっ、ごめんなさい。つい驚いちゃって。えっと、あなた、職業は?」

「芸者ですが?」

「げいしゃですか。それは、さっき広場にいた雑技団の一員?」


 雑技団?……あっ、さっきのあれか。


「いや、あれとはなにも関係はありません。なんなら、私ソロで活動していますし」

「へぇ。そうなんだ。珍しい人もいるんだね。あっ、ごめんなさい。私はウェルメンっていうわ。あなたは?」

「ミネコっていいます。それで、ちょっと聞きたいんですけど、南の森に上位種の出たらしいっていうのは聞きましたけど、どんなのが出たんですか?」

「本当に何も知らないのね。ミドルウルフに比べると、力が何倍も強いブルーウルフよ。高級肉として知られているけど、毎年、新人が調子に乗って一攫千金を狙って突っ込み、命を落とす。ランクで言うなら、ミニチュアウルフがEだとすると、ブルーウルフはBといったところかしら」


 なるほど。なんともわかりやすい説明だ。

 それならなおさらのこと、私が近づかないほうがいいということか。


 そこから、彼女は、いろんなことを教えてくれる。どうやら、彼女はおしゃべりさんらしい。

 私が話しやすいと感じたのかわからないけど、私が聞いてもいないのに、パーティの愚痴や専門魔法のすごさなど、いろいろ話された。まぁ、私にとっても無駄じゃないことを祈ろうか。

 とにかくやたらと話す彼女のせいで、湯船につかるつもりはなかったのに、しっかりとつかることになってしまった。


 久々に長く湯船につかったせいか、少しのぼせた気もする。人の話はいいところで区切らないととんでもない目に遭うな。とあらためて感じた時でもあった。


 なんとか解放されて、自分の部屋に戻って、少しだけ魔法の力を借りて自分で水を飲む。

 こんなことができるのは水属性魔法を持っている私の特権だろうな。なんて思ったりするなかで、今日の疲れを余計に感じてしまい、ベッドに横になると、一瞬で深い眠りに落ちて行った。


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