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転生させられたアイドルは異世界の波に揉まれて生きていきます  作者: 黒龍
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11:レッドウルフ

 さすがに4日目になると、さすがになれてきて、ニワトリに似た鳴き声が目覚ましになった。

 ただ、学校のない日は遅くまで寝ていたいタイプの私は、ここ最近の激務で少し寝不足気味。だけど、昨日は久しぶりに深く眠れた気がする。


「おはようございます、ミネコさん。今日もどの冒険者さんよりも早いですね。朝食は今おかあさんたちが必死に準備中なのでお待ちください」


 どうやら、私が早すぎたようだ。ただ、私としてもまだまだ寝たいところではあるものの、もう目が覚めてしまったら、私としては、学校モードか仕事モードのどちらかに変わる。堕落モードは私には搭載されていないから、ここで待つしかないよね。

 とりあえず、今日はどうしようか。

 そういえば、昨日お風呂で一緒になった人が言っていた魔獣とやらを見に行ってみようか。さすがに門番の人に止められるかな。

 そんなことを思っていると、メイランちゃんが朝食をトレイにのせて持ってきた。


「ミネコさん、お待たせしました。本日の朝食です」


 私は、ありがと。とだけかえして静かに食べ始める。


 そして、早々に食べ終わると、食事の準備を手伝っているメイランちゃんに、出かけてくるね。と言って宿を出る。

 ちょっと危険だけど、好奇心には叶わない。

 ということで、南の森に足を運ぶ。

 街の門を出ようとすると、昨日と同じ門番の人が立っていた。


「おう、嬢ちゃんか。今日はどこまで行くんだ?」

「ちょっとそこまでね。魔法の練習がしたくて」

「そうか。そのかわり、南の森の近くは危ないから行くんじゃないぞ。昨日も言ったが、上位種の魔獣が目撃されているからな。たとえ嬢ちゃんが魔法を使えると言っても吹っ飛ばされそうだな。まぁ、森じゃない場所で中位種を見つけたら報告してくれよな」


 そうしないと私が死んじゃうよ。冗談を言うように軽口を叩いてから門番の人に見送られ、私は今日も街の外に。

 とりあえず、南の森って言うくらいだから、道なりに南へいってみようか。

 ちょっと歩きさえすれば、森の入り口に着けるだろう。


 だいたい30分くらいだろうか。徐々に木々が密集してきた気がする。

 感覚はすでに森の中。

 想像する森の中よりはまだまだ明るいんだけど、街を出たころに比べたら、薄暗い。

 そんなことを思っていると、どこからかなにかが唸る声が聞こえた。

 ……どこだ。

 そんなことを思いながら、道の真ん中で立ち止まり、少しだけ空を見上げるようにして、耳をすまし、周りの音を探る。

 ……風は、後ろから前、唸り声は両サイド少し前から。

 これ以上進むのは危険だな。そう思って一歩だけ下がろうとした瞬間、正面から黒いなにかが飛び出してきた。


「シールド!」


 唐突なことだったから、私でも何がしたかったのかよくわからなかったけど、自分の体は守らなきゃと本能的に感じたのか、シールドを張っていた。

 なんとか間に合ったのか、思ったより硬かったのか、そのなにかは、シールドに跳ね返されていた。

 向こうも、何が起きたのかわかっていない様子で、私の目の前をうろうろしている。

 シールドの効果を見て少しばかり安心する私は、距離の空いているうちに少しだけ観察をする。

 身体は極端に赤い。そして4足歩行。高さは、私の頭の高さまである。ということは、だいたい160センチほどか。


「何してるんだ!すぐに逃げろ!アイスストーム!」


 後ろから声が聞こえたと同時に、私の真横をひんやりしたなにかが飛んでいった。

 そう思っていると、私を襲ってきたなにかは、一瞬にしてどこかにいってしまった。

 なにかが去ったあとに残っていたのは氷のつぶて。

 とりあえずぶつけて追い払っただけ。って感じかな。


「あれだけレッドウルフに睨まれていたのに、よく無事でいられたな」


 声の主は昨日、浴場で一緒になった女の人。名前は……なんだっけ。

 というか、あればレッドウルフなのか。

 確かに、体は赤かった。それくらいしかわからないけど。


「一応、シールドは張っていましたから」

「シールドが使えるのね。使えない人もいるから、危ないと思ったから駆けつけたけど、どおりでレッドウルフが攻撃しないはずだわ」


 どうやら、レッドウルフが見ての通り困惑していたみたいだ。ある程度の効果があるのはわかったのは大きい。

 あとは私の攻撃技がどこまで通用するか見ておきたい。もう1匹どこからか現れてくれないかな。


「で、芸者のあなたがなんでここにいるの?」


 ちょっと突っかかってくるような言い方をしてくる……。やっぱり名前を思い出せない。

 まぁ、この際、気にしなくていいか。ちょっとこのままにしよう。


「深い理由はあまりないけど、この国の魔獣が気になったってところかしらね」

「また危なっかしいことを考えるとバカもいるものね。はぁ。警告しておいてあげるけど、シールドだけじゃ、いつか本当に命を落とすわよ。ここを通るなら、Cランク以上の冒険者を雇うことをお勧めするわ」

 そういうと、女の人は来た道を引き返していく。

 どうやら、彼女はこの森の様子を見に来ただけのようだ。それならもう少し様子を見てから街に戻ろうかな。

 ……おっと。そんなことを思っていたら、正面からレッドウルフが唸りながらこっちに向かってきているね。ちょうどいい。


「水鉄砲!」


 飛びかかってきたレッドウルフに向かい水魔法を放つ。するとお見事に当たったものの、ぶつけただけ。というほうがいいくらいに威力が弱かった。

 さすがに同じ技を続けるのは見切られるよね。となると、試したことなかったけど、これならどうよ。


「ファイヤーボール」


 まだイメージする威力は小さい方で試している。

 正直に言うと、ファイヤーボールはレッドウルフに命中する。ただ、込める魔力が小さすぎて、効いていないのか、すぐ燃え尽きて消えた。

 もう少し火力を上げてみるか。


「ファイヤーボール!」


 さっきよりもかなり火力を上げて飛ばした球はレッドウルフに当たるとそのまま包むように広がり、燃え続ける。

 そして、燃え尽きると、黒く焦げたウルフが落ちていた。

 これがこの世界では食料になるんだっけ?一応、持っていて損はないかな。そう思うと、昨日買ったアイテム袋に入れようとする。

 どうやってメイランちゃんは入れていたっけ?

 ……袋の口を被せていただけだったかな。

 とりあえず、そうしてみるか。


 そう思うと、静かに袋の口をレッドウルフの口に被せる。するとウルフはスルスルと袋の中に吸い込まれていった。

 なるほどね。こん使い方をするのか。これなら簡単だ。わざわざ重たいものを持ち上げなくてすむ。

 そんなことを思いながら、もう少しだけ森の奥へと進む。もう少し自分の使える能力を見てみたいから。

 この単なる好奇心が命取りになることもわかっている。とにかくあと1回遭遇できればそれでいい。


 おっと。さっそくレッドウルフがまたお出ましだね。今回はこっちから行かせてもらおう。


「アクアボール!」


 この技は、直接攻撃してダメージを与える訳じゃない。

 水の膜で窒息させる考えだ。

 これを思い付いたのは湯船に浸かっているとき。いろいろ考えすぎて、溺れかけた。そのときにこの技を思い付いた。

 思惑通りだったら、溺れさせるつもり。溺れさせさえすれば、楽に狩りができるだろう。


 そこからほんの少し。レッドウルフは最後までもがいていたけど、力尽きたのか、おとなしくなった。


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