01
15歳の誕生日に私は全てを悟った。
フッ……15歳にしてお先真っ暗。
目の前にはそんなことも知らずに笑顔で私の誕生日をお祝いする家族。
アアアアア!
詰んだよ今世っ、さよなら今世ッ!
この世界が前世の日本でプレイしていたゲームとそっくりだと知るのに何故今なのか。
なんでもう少し早くなかったのか、運命を恨む気持ちで胸がいっぱいだ。
こんな状況で楽しくパーティなんて出来るだろうか?
否、無理である。
美味しそうな料理だって喉を通らな……
「ジュリーこちらもお食べ?」
「はい、おにいさま」
わ〜、このお肉美味しいー!
すごーい、日本ではこんなにも肉厚で蕩けるようなお肉を食べたことないよ。
もっと食べたいのだけど、最近下腹が気になる。
そろそろ三段腹妖怪に取り憑かれそうで。
って、違うだろうが!
しっかりしろ私。
それから兄、肉を刺したフォークを揺らすな。
私は犬か?アザラシか?
芸をしつけられているペットじゃないんだから、そんなものを揺らすな。私は取りに行かないからな。
ほんの少し前、大好きな兄が私のために魔法を使った。
だけど、少しだけ間抜けな兄の魔法が私の顔面に直撃したのはご愛嬌だろう。
でもそれがきっかけで私は前世の記憶を思い出してしまった。
思い出せたことはいい事なのだと思う。
なんてったって、このまま行けば私は血統書付きの悪役令嬢として家を破滅させて、家族を路頭に迷わせて、最後に私は城下町できっと首チョンパだ。
乙女ゲームの中では処刑とだけあったが、きっとそこは中世ヨーロッパの歴史と同じく首チョンパだ。
それで済むならマシなのかもしれない。
自分の終わりがそんな恐ろしい結末だなんて怖すぎる。
普通に怖すぎる。
誰だって普通に死にたい。
80ぐらいまで生きて「あー眠い」とか言いながら大往生とげるのだ。
でも私が今、記憶を取り戻さなければきっとそんなこと叶わなかった。
この世界では15歳から王都の学園に通う。
そりゃあそうだ、だってここ乙女ゲームの舞台だもの。
貴族も平民も入学可能で、それこそ魔法がある世界。
人間のみならずエルフや獣人もいて、彼等も等しく15歳の誕生日を迎えればいつだって入学できる。
15歳から入学可能なだけで、何歳でも構わない。
エルフは長寿だから見た目は同じ歳でも倍の年齢だなんてことごく普通にあることらしい。
だから私は、エルフには近づかずに生きよう。
何故って、フレンドリーに近づいた結果、めちゃくちゃ年上でしかもすごく失礼なことして私の評判が落ちるとか、やらかしてしまいそうだから。
「ジュリー、食べないの?」
隣の兄がうるさい。
好きだから、ちょっと待ってて欲しい。
だって私は今、明日からの学園生活をどうやって逃れるか考えているのだから。
「お父様」
「なんだ?」
「私、出奔を希望します」
家族全員が口を閉じた。
しまった、焦りすぎて口が滑ったか?!
とんちんかんな事を口にする娘を訝しんだか?!
「出奔して冒険者か?」
「そういえば昔にもあったわね〜」
しかし家族からは想像していた反応は返ってこなかった。
「出奔してもいいが、一応この家の娘なのだから学園だけは出なさい。国王も楽しみにしているんだからな」
ですよねー!
そらそうだ。私の父は侯爵だ。
国王とは仲が良くて父は宰相だ。
だからこそ、原作でも私の処刑だけで済んだんだよ。
「ジュリーッ、兄さんのお肉が食べられないの?! 兄さんのウインナー咥えてくれないの?!」
兄よ、それ結構アウトだから。