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復讐完遂

 手首の動脈部を魔刀で掻っ切る。

 血が噴き出るが、気にしない。

 高レベルの『痛覚耐性』のおかげか、痛みはさして感じない。


 そしてこの溢れ出る大量の血を咽び泣く女の口に無理矢理ねじ込む。

 抵抗はもちろんしてきたが圧倒的ステータス差を利用して強引に飲み込ませた。


 すると変化はすぐに現れた。

 さすがは即効性の毒なだけある。


 顔色が青白く変色。

 鋭敏になった痛覚が反応して呻き声をあげながら軽く痙攣している。


「た……助け、て」


 息も絶え絶えに助けを求めるが、俺は無感情に毒で苦しむ様を傍観するだけ。

 助けようなどとは一ミリたりとも思ってはいない。


「た、助けてくれたら……これ、あげる……からぁ」


 震える手で懐から取り出したのは狼の意匠が彫り込まれたエンブレム。

 何か鉱石のようなものに彫られたそれは神々しい輝きをはなっていた。


「なんだ、これは?」


 地面にのたうちまわる中年女には不釣り合いなほど美しい逸品。

 だからこそ、謎。

 どこで手に入れたのか……聞く必要がある。


「こ、この前……銀色の毛の、狼から――」


 女の言葉は途切れ途切れで聞き取りにくいことこの上ないものだったが、なんとか内容は理解した。


 要約すると、銀色の毛の狼の寝床にあった高そうな物を留守の間に片っ端から奪ったらしい。

 そんでもって問題なのが、銀色の毛の狼。

 これはもしかしなくても俺たちが戦ったシルバリーコボルトのことだろう。


 そういえば、あのコボルトが襲ってきた時に妙なことを言っていたのを覚えている。


 たしか――


『私の住処を散々なまでに荒らし回り、遂には我が宝物まで持ち去りおって!』


『荒らされ場所には貴様の匂いがベットリと残っておったわ!』


 だったか?

 なるほど、今全てが繋がった。


 つまり、あのコボルトの住処を荒らし回った挙句、宝を奪ったのはこのクソ女で俺と同じような匂いが残っていたがために俺が疑われたということか。


 ――ふざけんな。


 純粋に更なる怒りがこみ上げてくる。


 この女の所為で俺たちは死ぬかも知れない危機に陥ったのだ。許せるわけがない。

 そもそも、こいつの持っている宝はあのコボルトを討伐した俺たちが持つのが当たり前のはず。それを恩着せがましくこれをあげるから許して……だと。

 馬鹿にするのも大概にしろ。


 怒りに震え、その手は無意識のうちに魔刀の柄を触れていた。


 いや、だめだ落ち着け。

 ここで殺すのは勿体ない。

 もっと苦しめて殺すんだ。


 取り敢えず、と女からシルバリーコボルトの宝物をひったくる。

 すると何を勘違いしたのか、女は安堵の表情を浮かべた。


「よ、よかった……助けて、くれるのね」


 まさかそんなわけもなく、俺はこの勘違いを利用して更に新たな毒を追加することに。

 先程できた手首の切り傷は『自己治癒』によって既に修復済みだったため、もう一度リストカット。

 溢れ出る血液に『毒性体』を使用。

 今度は遅効性の毒。ただし効果は抜群。

 全身に回れば直ぐにでも死に至ることだろう。


 その間に面白いゲームでもしようじゃないか。


「この血を飲め」


 女は命が助かるのだと勘違いしたまま、なんの迷いもなく俺の手から滴る紅血を服する。


「こ、これで……助かるのよね?」


「……本当に、そう思うか?」


 ニヤリ、と悪人ヅラで口角を上げる。

 同時に『王者の威圧』まで発動させ、貫禄を出す。


「だ、騙したの!?」


 体全体を震わせ、顔を朱に染め上げる。

 それは怒りから。

 だが、お前に怒る資格などあると思うか?

 いや、ない。


「騙したんじゃない。そもそも、俺はお前を助けるなんて一言もいっていないぞ?」


 俺は血を飲め、としかいっていない。

 勘違いしたのはお前の方だ。

 非難される謂れはない。


「ちなみにさっき飲ませた血は遅効性の猛毒だ。あと数分でお前は死に至るだろう」


「――なっ!」


 驚愕。

 赤みを帯びていたその顔面が青を通り越して黄土色へと。


 残りあと数分の命、どう弄んでやろうか。


「ここで一つ、条件だ。俺の質問に虚偽なく全て答えられたら解毒の薬をくれてやる」


 まあ、そんなものはないんだが。

 女は質問するなら早くしてくれと瞳に涙を溜めて懇願。

 しかし、俺はそれを煽るようにゆっくりとしたスピードで言葉を紡ぐ。


「じゃあ最初の質問だ。お前が銀のコボルトから奪った残りの宝はどこにある?」


 さっきの会話。

 そこでこいつは高そうな物を片っ端から奪ったと話した。ならば、このエンブレム以外のものはどこかに隠されていると考えられる。


 果たして、その返答は?


「ほ、他の物は主人の部屋にあるはずよ。私はそれ以外のことは知らない……本当よ!? だからもう助けて。もういいでしょ!?」


「いや、まだだ。次の質問。今朝、俺たちを襲うように命令したのは誰だ?」


「そ、それは……」


 突然きょどりだす女。

 視線が泳ぎ、黄土色に変色した顔面には大粒の冷や汗。


「そ、そう! あの人が命令してたわ!! 私は何も知らないの!!」


「そうか……」


 確定。

 あまりにも挙動不審すぎる。

 自分がやったと自白しているようなものだ。

 しばらくの間、静寂が流れる。

 女も焦りによって、毒による制限時間を忘れているよう。

 顔色が更に更に悪くなっているが、気がついていないのか?


 俺は時間を稼ぐべく、口を開く。


「じゃあ次の質問だが――って、ああもう時間切れか……」


 だが、楽しい時間は過ぎるのが早いもので制限時間が訪れてしまった。


 突如、体が大きく跳ね上がり、痙攣。

 ビクビクと陸に上げられた魚のようにのたうちまわること数秒。


 その動きを止めた。


「……もう、死んだかな?」


 脈をはかる。

 やはり、動いていない。

 死んだみたいだ。


 思ったよりもあっけない死に様。

 長年一緒にいた親を殺したわけだが、特に何か湧き上がるものがあるわけでもなかった。


 親を殺したら少しくらいは心が痛むものかと思っていたが、親のクズっぷりを再認識したことが関係しているのか全くもってなんとも思わない。


 やはり俺の心はもう壊れているのだろうか。





皆さんはクリスマスイブをどう過ごしましたか?

私は昨日も今日もクリぼっちですww


今日から新作が始まるのでこっちの更新が遅れることをもう一度言っておきます。すみませんm(._.)m

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