『復讐』
「グルルルァァ! グガァァァァ!!」
唸り声を上げ突っ込んでくる狼。
どの狼も同じことしかしないから処理が簡単で助かる。
「[影縛]」
影で縛って鉄パイプで撲殺。
これで五匹目。
《レベルが上がりました》
ついにレベルが上がった。
スキルポイントを使えば習得済みのスキルのレベルを上げることもできるそうだが、今のところ必要ではないので新規のスキルを取得するつもりでいる。
取得可能スキル一覧
・『闇魔法』
Lv.1
[暗闇](1)
[闇球](1)
[暗視](1)
・『魔力視』(1)
・『魔力感知』(1)
――
「ん?」
新しいスキルが取れるようになってる。
『魔力視』と『魔力感知』。
今はいらないかな。
[暗闇]と[暗視]の二つを取る。
ちゃんと取得出来ていることを確認するとまた、狼を探し始める。
「にしても、おかしいな」
こんな緊急事態なのに放送もかからない。
さっき教師が体育館に避難するように指示していたのは知っているけど。
避難出来なかったのか、それともしなかったのか、俺の耳にはいくつもの悲鳴が聞こえてくるが、無視。
校内を練り歩き数分、狼発見……と思いきや交戦している人間がいた。
よく見ると一文字の取り巻きの一人だった。
……名前は知らないけど。
一匹なら楽勝だろ、と思っていたけど二匹同時に相手取っているようだ。
そしてどうやらあいつもレベルを上げているらしい。
電気の球のようなものを手から出していた。
魔法だろう。
あいつはちょうど一文字達から離れて今は1人、死んでも狼のせいにすれば良い。
絶好のチャンスだ、ここで殺す。
2匹の狼を電気の魔法で絶命させて油断している間に背後から忍び寄る。
[影縛]を発動させ、拘束。
「な、なんだこれ!? くっ、取れない!」
ジタバタと影の拘束を解こうと躍起になる取り巻き一号を尻目に鉄パイプを頭蓋目掛けて振り下ろす。
一撃では死なない。
二撃目、まだ死なない。
三撃目、気を失った。
四撃目、まだ死なない。
五撃目、多分死んだ。
保険のため後二回くらい殴っておく。
《固有スキル:『復讐』が発動しました。
対象から一つスキルを奪取出来ます。選択してください》
奪取可能スキル一覧
固有スキル
スキル
『柔術』Lv.4
『苦痛耐性』Lv.2
魔法
『雷魔法』Lv.1
[雷球]
――
[雷球]を選択した。
《対象から[雷球]を奪取しました》
ステータスを表示すると、魔法欄に『雷魔法』とあった。
俺はニヤリと口角を上げる。
これで、レベル上げもさらに捗る。
狼だけじゃなくてあのクズどもも見つけ次第殺していこうかな?――とも思ったけどやはりやめておいた。
一文字はあれで保身の為には何でもやる男だ。
きっとあいつの周りには何人もの護衛が付いているはず。
やるなら、圧倒的なまでの力量差をつけたい。
それにしても、いきなり狼が溢れかえったり、メニューとかステータスとかが見れるようになったのは何で何だろう。
と今更ながらに疑問に思う。
自衛隊どころか警察もくる気配がない。
こんな事になったら真っ先に連絡を入れているだろう。
なら、これがこの学校内だけで起こったものではないという事。
街中……もしかしたらそれ以上の規模でこんなことが起こっているのかもしれない。
だとしたら――俺にとっては美味しい状況だ。
取り敢えずは力を蓄えることに専念しよう。
その為にも学校外の様子も見ておこうと校庭に出る。
早速二匹の狼が襲ってくる。
もう何匹も殺しているからか、慣れた様に[影縛]で拘束する。
そういえば――とさっき取り巻き一号から奪い取った『雷魔法』を試して見ることにした。
「えーと、[雷球]」
二つの雷で構成された球が発生した。
『魔力操作』を駆使して、二匹の狼にぶつける。
キャオーンと切ない悲鳴をあげてビクビク、と痙攣した後、絶命した。
威力としては鉄パイプで殴るよりは強い様だ。
これで俺のステータスが前衛よりだったら逆に鉄パイプで殴った方が強かったのかもしれないが。
再び歩みを進める。
校庭では生徒達がこの世の終わりかのような悲鳴をあげながら狼との壮絶な鬼ごっこを繰り広げていたが校門前には生徒や先生の姿どころか例の狼の姿も見当たらない。
あたりを警戒しながら校門を出る。
学校のすぐ外には住宅街が広がっている。
いつものこの時間なら近所のおばちゃん達が延々と続く井戸端会議をしているところだが、やはりと言うべきか人影一つ見当たらない。
早々に避難したか、家にでも引きこもったか。
こっちに狼はいないのか? と辺りを練り歩いていく。
「ん? あれは……なんだ?」
学校で見つけたような狼ではない。
が、しかし人間でもなければ動物でもない。
敢えて言うなら人型の犬。
そう、コボルトというやつだ。
顔は犬のそれをそのまま貼り付けたような感じで、体は成人女性と同じくらいの身長。
大体150後半はあるだろうか。
体に衣服の類は身につけていないせいかモサモサとした体毛がよく目立つ。
開いた口からは獰猛な牙が見え隠れし、更には棍棒のような物まで持っていやがる。
コボルトは俺の視認できる範囲だけでも三匹もいた。
物陰に隠れて観察しているのでまだ俺の存在には気づいていないだろうがなんだか何かの匂いを追っているようだ。
――気が逸れているうちに仕留めておくか。
まず一匹。
他の二匹に気づかれないよう[影縛]を発動させる。
次いで、もう既に慣れた手つきで鉄パイプを振るう。
コボルトは[影縛]で拘束されている為、碌に抵抗も出来ずに死亡。
流石に鉄パイプの音が煩かったのか他のコボルト達も俺の存在に気づいた。
俺が仲間を殺したのを見たからか相当に俊敏な動きで俺に迫りかかる。
彼我の距離は大体二十メートル。
それだけあれば問題はないと特に慌てることもなく[影縛]を発動させようとするが……。
「は!? な、なんでだ! 発動しない!?」
二匹のコボルトの内一匹には[影縛]は正常に働いた。
が、問題はもう一匹。
そいつには何故か[影縛]が発動しなかった。
混乱する俺を他所にコボルトはグングンと距離を縮めてくる。
「ガァァァァ!!」
コボルトはその手に持った棍棒を俺目掛けて振り下ろす。
俺はヒィッという情けない声を上げながらも地面を転がりながら必死に回避する。
コボルトの振り下ろした棍棒が地面に衝突して没落する。
「ち、力……強くね?」
俺がやっても絶対あんなになんないぞ、と心の中で毒づきながら考察する。
まず、何故[影縛]が発動しなかったのか。
実はこれは何となく察しがついていた。
――MPの問題だ。
今までMPの量を考えて使っていなかったからこういう自体に陥った。
完全に自滅だ。
でもそれはもう過ぎたこと。
この失敗は次に活かせばいい。
必要なのはこれからこの状態をどうするか。
ぶっちゃけ魔法の使えない俺が、棍棒をで地面に穴開けちまうような奴とやりあっても余裕で死ねる。
なら、どうするか。
そんなもん、決まってるだろ。
――逃げるんだよ。




