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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千六十七


「戻らない。今の少尉は、間違っていると思うから」

「臆病に震えながらも、強がれるとは。成長したと褒めておいてやろう」

「怯えちゃいないよ。ただ、少尉のために、何が出来るのか……」

「何もないさ。その場で、黙って見ているがいい。私の勝利を」




―――シドニア・ジャンパーの右手に、赤い呪いの糸が巻き付いていく。

それが祭祀呪術を、彼女をつないでいる絆のようなものだった。

燃えるような痛みがそれから伝わり、どう猛な力の拍動を感じ取る。

『狼男』を捧げられた罪科の獣の力は、彼女の想像を上回っていたらしい……。




「これだけの力があれば、魔王が相手だったとしても怖くはないさ」

「……少尉、知っているかい。そんな言葉を吐くような者を、あんたが見たら。あんたはそいつを臆病者だと判断するって」

「皮肉は師である私譲りか。殺されると思っていないとは、舐められたものだよ」

「黙って見ていることはしない。でも、無力なオレにやれることは少ないよな」




「ここを生きて出られたら、私以外の師匠を持つがいい。多くを学ぶ必要がある」

「持たない。きっと、オレは……」

「甘えるなよ、小僧」

「甘ったるいクソガキに過ぎなくても、しつこさだけは一流のつもりだ」




―――シドニア・ジャンパーは指を鳴らし、彼女とつながる触手に命じる。

ノヴァークはまたたく間に触手の群れに絡みつかれ、全身を締めあげられた。

殺されると彼が思ったのは、戦闘に関してはまだまだシロウトだからだね。

引き千切ることなど容易かったはずなのに、彼はまだ生きているんだ……。




―――しゃべれもしない、言葉を発しようとすれば肋骨が折れていただろう。

肺腑に空気を溜めておくことが、胸郭の破綻を防ぐ術だと本能が理解していた。

殺意はないがそれぐらいの罰を、シドニア・ジャンパーは与えたがっている。

まだ師弟の関係を、彼女自身も解消し切れていないようだ……。




「いずれにしても、ここから先は修羅の道である―――」




―――無数の触手が、黄金色の爆炎に焼き尽くされながら吹き飛ばされた。

焦げた血の疾風を、シドニア・ジャンパーは涼やかな詐欺師の貌で受け止める。

焼き尽くされた触手の群れの向こう側に、ソルジェがいた。

炎をまとう竜太刀を肩に担いだ姿は、ああやはり大魔王だったよ……。




―――イライラしているね、激怒を理性の檻で抑制するのは難しい。

北方野蛮人のなかでも、とくに戦士としての感情の強いのがガルーナ人。

ストラウスの剣鬼、竜騎士の一族。

不機嫌な奥歯を軋むほどに噛みしめた直後、口を開いた……。




「ジャンの魔力が消えているが、説明をしてもらおう」

「察している通りだ。祭祀呪術の生贄として、呪いに落とした」

「どこにいる?うちの猟兵は」

「説明が必要だろうか。お前も、呪術師だ。祭祀呪術の脅威を多く見て来ただろう。お前の自慢の『狼男』であったとしても、こんな結末が訪れる」




「結末、か」

「私にも覚えがある。お前の介入のせいで、姫さまが亡くなられた。腹立たしいものだ。お前は、お前は……本当に、大切な者を私から奪ったんだよ」

「逆恨みに過ぎんと思うがね。だが、オレも復讐の道を進む男だ。お前に、オレへと挑む権利をくれてやろう」

「嘆くよりも、戦いか」




「オレは猟兵の生存を信じる。オレとガルフは、死ぬようなヤツを猟兵として選んだわけじゃないからな」

「なんだ、その傲慢な誤解は」

「まあ、それでも。腹は立っている。お前にも、オレ自身にも。甘すぎたよ。ジャンにお前は気絶させておけと命じておくべきだった」

「その通り。お前の愚かな選択のせいで、お前の部下は死んだ。このギルガレアの混じった触手の生贄となった」




「ギルガレア、か。なるほど。ここは……あいつの」

「無数の信仰が入れ替わりこの聖なる地を選んだ。そのなかにいたのは確かだ、罪科の獣も。その力が、お前を裁く……ああ、ジャン・レッドウッドの『狼男』の力も混じっているぞ。部下に、お前は殺されるというわけだ!!」

「猟兵は、死なんと言っている」

「死ぬさ!!お前がどんなに強くても、しょせんはヒトに過ぎんのだからな!!」




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