第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千二十一
『うん。やってたとおもうよ』
「ククク!さすがは、オレのゼファーだ!!」
「ゼファーは、おりこうさんだもんね。よしよし」
『うふふふ。りゅうは、とってもかしこいんだから』
―――ゼファーはご満悦だった、ミアの手に撫でられるのは大好きだからね。
喜びに黄金色の瞳を細めながらも、魔力をしっかりとコントロールしている。
『影枷』に重ねがけするように、『歌』でも呪術をぶちかますつもりだ。
感情に連動させやすい属性を選んで、呪術にするという目標を得た……。
『とっても、かんたん。ぼくなら、やれるよ。ぷれいがすと』
「見てみたいものですな。その後の戦闘に関しても、興味は尽きません」
「ああ。『パンジャール猟兵団』の戦い方ってものを、教えてやろう。シドニア・ジャンパー、いいか?聞こえているなら、耳でもふさいでおけ。お前を殺すつもりはないし、死なせるつもりもない。傭兵団を一方的に攻めて、無力化してやるつもりだ。君は、死なないように立ち回れ。オレへの恨みがあるならば、主君への無念へ応える道が欲しいなら、後で相手をしてやろう。復讐する権利は、くれてやる。それで、満足してくれ」
「……少尉。身を守ってくれよ。傭兵たちの人質になんて、されないように……暴走すれば、ヒトってどんな真似でもするのは、オレだって分かっている。アンタだって、そうだろう」
―――ノヴァークは帝国軍に蹂躙される、諸都市の戦士たちや市民の光景を見た。
問答無用で斬り捨てられ、焼き払われていく。
『西』へと派遣された帝国軍は、非エリートらしく暴虐さを持っていたから。
それは暴走と呼ぶべき残酷さも、当然のように含んでいる……。
「生きていてくれ。また、会おう。必ずだ」
「……いい言葉だ。心が揺さぶられているかもしれん。違っていても構わん。生き残れ。オレを一度ぐらいは殴りたいだろう」
「アンタは、そんなヤツだ。性格、ちょっと悪いトコロがある」
「まあな。乱世の傭兵団の団長なんだぞ。ちょっとぐらいは、意地悪さ」
―――ノヴァークにニヤリとした笑みと、牙を見せつけながら。
ソルジェはゼファーの背の上で、背骨を反らせて深呼吸だよ。
赤毛が風に揺れて、竜鱗の鎧はギギギと軋む音で震えた。
プレイガストは呪術を見ようと感覚と研ぎすませるが、キュレネイが動く……。
「団長。私も、いっしょに呪術を使ってみたいであります」
「ん。キュレネイも、か?」
「ソルジェ兄さんや、ゼファーちゃんみたいに大声で叫ぶの?」
「キュレネイさん、そういうのは不得意なような気がするんですが?」
「イエス。歌声を私は持たないであります。感情など、消え失せて久しいので」
―――我らがキュレネイ・ザトーは、そう言いながらソルジェの前にするりと入る。
ミアの特等席を奪う形だね、ミアはワクワクしながら反転した。
ソルジェの胸元にアタマを置いている、いつものように無表情な鏡の乙女。
にんまりと笑うミアは、あまりにも楽しそうだ……。
「どーんなこと、してくれるのかなー?」
「団長およびゼファーと、試してみたいものがあるであります」
「ソルジェ兄さんと、キュレネイさんの連携……」
「どんなものなのか、とても興味深いですね」
「イエス。ククリとククルの技巧から、アイデアをもらったであります」
「ん。私たちから?」
「何か、ありましたかね……あ」
「『デリバリー』であります。魔術を、二人で同時に使う方法。あれは、『メルカ・コルン』の双子ならではのものであります」
「すっごく、難しいと思う」
「キュレネイさんでも、再現はできない……魔術では」
「魔術がダメならー。呪術ならってことだね!」
「イエス。呪術版の『デリバリー』……のようなもの。団長の『ターゲッティング』に、私の魔力と呪術を重ねてみたいわけであります。実験の許可、もらえるでありますか?」




