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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千二十


―――咆哮で呪いをかける、という発想は『狼男』にはピッタリだよね。

『影枷』を仕掛ける方法としても、『巨狼』に化けてから浴びせかけられたら?

戦場に君臨する巨大な獣から、誰が目を離せられるというのだろう。

解剖学についても習得済みという点も、『影枷』には向くのだが……。




「や、やれるでしょうか……っ」

「『声』を呪術の触媒として使うのは、古典的なものだよ」

「そ、そうなんですか。そ、そう言われると、そんなお話を、聞いたことがあるような気もしますっ」

「基礎的な呪術でもあれば、奥義としても扱われる。『声』と『喉』の呪術というものは、そういう領域のものになる。つまり、呪術の根幹でもあるのさ」




「う、うう。基礎という点は、安心できますけれど。お、奥義のレベルとなれば……ぼ、ボクには難しいかもしれませんっ」

「ジャン。ゆっくりと成長していけばいいんだよ。クンクン呪術のほうは、完璧なんだし」

「く、クンクン呪術っ」

「イエス。分かりやすくはあるであります」




「クンクン呪術は可愛らしすぎるから、やめてやれ。嗅覚呪術の方が、やはりカッコいい。呪術はカッコいいほうがいいだろ?」

「呪術師としては、そちらがいいですな」

「オレもだ。一応は、呪術師だからな。少尉だって、同じ判断をするよ」

「そーかなー。女子としては、意外と可愛いもの好きかもしれないじゃない」




「そんなタイプじゃ、ないよ。度数の濃い酒を、塩舐めながら味わうような女性だぞ」

「かなりの酒好きだな、シドニア・ジャンパーは」

「そうさ。可愛いとかよりは、カッコいいのが好きなんだよ」

「そ、それは、ともかく。やはり嗅覚呪術と呼んでほしいです。あ、アルトーから伝わったものなんです」




「先祖伝来の呪術なら、クンクン呪術よりは嗅覚呪術の方がいいよね」

「たしかに、迫力が維持されますし」

「分かった。ジャン、嗅覚呪術で行こう」

「た、助かりました……」




「で。『声』の呪術についても、教えて欲しい。『影枷』を仕掛けられてはいるが、重ね掛けしてもいいところだよな」

「ええ。ゼファー殿が『声』の呪術を放つことで、この戦場の『影枷』の完成度は、より高まるでしょう」

『おしえて、ぷれいがすと』

「『声』の呪術は、感情を込めることが肝要です」




―――感情と魔力の属性は、かなりの関連性があるものさ。

『喜び』は『炎』に、『悲しみ』は『風』に。

『怒り』は『雷』に、というのが三大属性の傾向だ。

『怒りの声』と、神経と筋肉を呪う『雷』の呪術『影枷』は相性がいい……。




「怒りを、ぶつける感覚です。呪術は、微小な魔力の量で成り立つものですが、魔力の流れと質と属性には、依存しているものです。肺腑に空気を呼び込みながら、その空気に『雷』が混ざるように集中力を使うの始まりになります」

「肺腑にまとわりついている血管を、『呪術を編むための道具』として使うのか?」

「さすがは、ストラウス卿。そうなりますな」

「想像がつきやすいものだよ。ジャンも、やれるんじゃないか?」




「は、はい……そ、そうかも……しれませんっ。魔力を高めるための基礎訓練として、リエルにやらされた気がしますから、そ、それ」

「エルフほど魔力のコントロールが上手いわけじゃないが、基礎訓練としてはよくあるヤツだ。『炎のおてだま』と同じようなもんだな」

「あれは『炎』の魔術の才能がないと出来ないでありますが、呪術ならば、より魔力が小さくても使える」

「う、うん。肺腑に……『雷』の魔力を、送るカンジにすれば……やれる、かな」




「ゼファーちゃんは、余裕でやれるよね」

「プレイガストさんの動きを、もう完全模倣していますし……」

「正直、これは『歌』を放つときと」

「同じですね。ゼファーちゃんは、もう前々からちょっと無意識のうちに使っているかもしれません」




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