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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百五十九


―――ゼファーが着地した場所には、ビビアナが駆け寄ってくる。

今にも泣き出しそうな顔をしていたが、フリジアの姿を見つけると飛び跳ねた。

親友に抱き着いたものの、フリジアの骨はあちこちヒビだらけだからね。

「うぐう」といううめきが、戻って来たよ……。




「ごめん。でも、あなたが、悪い……ムチャしすぎだもの」

「あ、ああ。そうだな……」

「ビビアナ、フリジアのことを任せるぞ」

「ええ。もちろん」




―――ゼファーが身を低くかがめてくれたおかげで、フリジアを下ろすのは簡単だ。

ビビアナは彼女を抱きかかえたまま歩き、地面に寝転がせる。

周りには多くの戦士たちが、集まっていた。

これなら、『オルテガ』の保守派たちも手を出せないだろう……。




―――ソルジェに密告することを、ビビアナは選ばなかった。

政治的な配慮の側面もあるし、安全は十分に確保されていると判断したからだ。

ソルジェとゼファーが、上空を気にしていることにも気づいている。

ミアのもとに、一刻も早く向かいたがっていた……。




「ストラウス卿、フリジアは大丈夫だから。私が見ている。みんなもね。だから。ミアの援護に行ってちょうだい」

「ああ。フリジアがこれ以上、無理しないように見張っていてくれ」

「ええ。本当に、みんなムチャばかりする……貴方も、ムチャしないように」

「女神退治だ。楽しくやるよ」




―――ニヤリと笑うソルジェと、『ドージェ』を真似するゼファーがいた。

ふたりは素早く、空へと戻って行く。

乗せて欲しがる戦士たちを、待つ気はない。

欲しいのは、戦力よりも時間だったから……。




―――ガンダラや、ルチア・クローナーやギムリたちも見送るだけ。

まあ、彼らにも果たすべき仕事は多くある。

女神イースとの戦闘で生じた被害と混乱を、収拾しなくてはならない。

『もうひとつのオルテガ』のおかげで、多少は体力と魔力が回復しているものの……。




「この被害は、無視できるものではありませんからな」




―――ソルジェのそばで、戦うだけが戦争じゃない。

役割分担を誰もがこなし、最善を尽くす必要がみんなにあった。

親友にひざまくらをしてもらいながら、空を見上げるフリジアの役目もある。

祈ることにした、ミアたちの無事を……。




「……女神イースよ。ミアと、ソルジェ・ストラウスと竜を守りたまえ」

「その女神と、戦うんだけど」

「同じでは、ない。あれは……『カール・メアー』の創った女神だ」

「そうね。『本物の女神イース』なら、この戦いにどんな意味を与えたの?」




「……平等に、見守るかもしれない」

「なるほど。こっちも見守ってくれるんだ」

「あっちには最初から肩入れするだろう。だから、私も祈るんだ。そうすれば、平等になる」

「あとは、力勝負……猟兵たちの、得意分野ね」




「……ああ。勝って戻るだろう。ミアは……朝ごはんを食べているだろうか」

「戻ってきたら、たくさん食べさせればいい」

「うむ。私も……」

「ええ。みんなで、食事にしたいところよね」




―――空の果てに昇る、黒い竜の姿を見守りながら。

少女たちは、戦の最中らしく幸せな記憶を頼った。

破壊し尽くされた街並みのなかでも、その願望はとても正しい。

日常を求めて、これほどの非日常を生き抜いていくのだからね……。




―――フリジアは、口には出さないものの。

心のなかで、レナス・アップルについても祈った。

『彼』の亡くなった家族についても、祈った。

この戦いの果てに、より世界が良い方向に変わっていくことを祈る……。




―――定義はそれぞれあるけれど、誰もが『正義』に必死だった。

『自由同盟』も『カール・メアー』も、『オルテガ』の保守派も『ルファード』も。

それぞれの『正義』に、誰もが必死だ。

こういう想いのぶつかり合いの果てに、より良い世の中になれば幸いだ……。




―――物事は、それほどシンプルではないけれど。

誰もが必死で生き抜こうとして起きた衝突に、意味を持たせたくなる。

青い空を引き裂く、黒い軌跡を追いかけながら。

フリジアは、心のなかで可能な限り多くの人々を思い出そうと試みる……。




―――たくさんの、本当にたくさんの祈りを捧げたくなっていた。

かつて、親にも捨てられた少女には。

大切な者が、ずいぶんと多く出来ていたのさ。

敵と味方の境目さえも越えて、祈れるフリジアは本当に大したものだよ……。




―――『ゴルメゾア』と『彼』も、祈りをもらっていた。

『もうひとつのオルテガ』に侵入し、女神イースを見つける。

ルルーシロアの荒ぶる『炎』を回避しながら、女神イースは自在に飛び回っていた。

消極的な守りをしつつ、待っていたのさ……。




『来たか、『ゴルメゾア』。レナス・アップル』




―――名前を呼ばれるだけで、『彼』と『ゴルメゾア』を構成する孤児たちは歓喜した。

魂の残滓にすぎなくても、彼らの女神イースは軽んじることはない。

女王が騎士に与えるような、期待と敬意を込めた態度の声だった。

彼らの魂には、大きな大きな祝福にもなる……。




『我々は……ッ。偉大なる……母のために……女神イースのために、戦うのだ。より苦しみのない世界のために……なんて、うれしいことだろう』




―――『正義』は、いつもながらに噛み合わないものだ。

互いを弾き合うように、衝突していく。

それでも、違った『正義』同士にも共感は得られるものさ。

何せ、戦場にいる誰もが必死に何かを追い求めているのだからね……。




「おもしろく、なってきたね。ルルー!」

『ああ!ざこどもが、ふえた!!どちらも、ちまつりだッッッ!!!』




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