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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二十三


「本当なのね。そうか、全滅する気で……ッ」


 ルチアはガマン出来なくなっていた。


 別にしなくてもいいことだからな。ゼファーの背から飛び降りると、戦士に詰め寄っていく。


「そんな戦い方で、勝ったと言えるの!?」


「勇ましく死んで、そのあとでも戦う。『ゴーレム』に宿るのだ。それが、悪しき行いだとでも言うのか?尊い犠牲だ」


「何よ、それ!!全滅して、生贄になるとか……ッ。『ギルガレア』さまは、やさしい方だった!!そういう戦い方を、認めるはずがない!!」


「神罰を受けたとしても、構わん!」


「な……っ」


「我々にも『聖餐』の力が伝わっているのだ。罰を受けることになったとしても、故郷を守れるのならば、戦士としての誉れに他ならん!!」


「違う!!リーダーなら、仲間の命を最後まで守ろうとしなさい!!土地を、奪われたとしても……仲間が生きているのならば、もう一度集まり、戦えばいいんだ!!」


 心に刺さる。


 ガルーナ人が、9年前にやれなかったことがあってね。全員で徹底する。故郷を捨てて?なかなかに難しい戦術ではある。


 少なくとも、あのときのガルーナ人にはやれなかった。


「逃げたところで、戻れるとは限らん!!敵が、この森を焼き払うかもしれない!!そうすれば、我々は家を建てることも、薪を作って火を扱うことも出来なくなる!!」


「だとしても!!」


「それに!!逃げれば、魂が失われる!!」


「……っ!!」


「戦士では、いられなくなる。誇りを失ったとき、それがエルフだと呼べるのか!?エルフの勇敢な戦士で、いられなくなる……っ。それは、死ぬよりも大きな屈辱なのだ!!」


 どこの国でも戦士はガンコでね。


 共感は抱けた。


 抱けたが……。


 オレも9年前のガルーナ人のままではない。あのときより、ずっと柔軟な生き物になっているのだよ。


 混じって。融け合って。


 それでもなお、オレはガルーナ人である。


「―――いいか、ボケナス。戦士にとって、死ぬことなど容易いのだよ」


「な、何だと!?」


「死ぬことは名誉ではある。そいつは認めてやるよ。だが、勝利を得られなければ、何にもならん」


「勝利は……敵を、巻き込めばいい」


「敵を巻き込み、全滅するのか?」


「それは……ッ」


「そもそも、『ゴーレム』で勝てる見込みがあるとでも言うのか?あちらは四百以上だ。体内には『蟲の教団』の『寄生虫』がいる。戦闘能力だけなら、生身の戦士の数倍と見積もった方がいい」


「……っ!?」


「簡単な算数の時間だな。勝てるか?」


「『ブランガ』が有効なのだろう?」


「その通り。しかし、『ゴーレム』は『ブランガ』を放てない。夜戦でも矢を射れる、目と耳の良い若いエルフの射手は、ここにどれだけ残っている?」


「……それは…………」


「口ごもるか。それでは、ハナシにならんぞ。戦術として、あまりにもリスキーだ」


 にらみつけられる。


 だとしても、こちらは表情一つ変えることはない。戦士の覚悟そのものは、嫌いではないがね。だが、彼らはガルーナ人でもやらなかったことをしようとしている。


「聞け。オレは、9年前に戦で故郷を滅ぼされた。帝国の裏切りのせいで、逃がすはずであった『家族』も、女子供も年寄りたちも、全員が殺されてしまった」


「……悲しいことだな」


「そうだ。悲しいことではあるが、そいつは結果論だ。オレたちは、逃そうとした。だが、お前たちは……女子供にも呪いをかけている。守るべき者を、戦闘に巻き込むものじゃない」


「うるさい!……これは、我々にとっても苦渋の決断なのだ!!」


「認めたられんな、この戦術を。この方法では、戦士が守るべき者が失われてしまう。敗北と等しい。いいか?戦士にとって、最も罪深いことは、敗北なのだ。敗北とは、守るべき者を死なせることだ」


「……死して、誇りを貫くことが、無価値だとでも!?」


「子供たちは『未来』だ。それが失われれば、何も残らん」


「……それは……ッ」


「分かっているのなら、動くべきだぞ。行動することでしか、救えん。お前には、やれないか?やれないのならば、オレが代わりに動いてやるぞ」


「どうすると!?」


「この呪いを執行する者を止めてやる」


「長老たち……そうね。それが、手っ取り早い。こいつらは、長老たちの命令には盲目的に従うんだから」


「彼らを敬え、ルチア・クローナー!!我らの伝統そのものを継いでおられる!!」


「ふざけるな!!継ぐべき者は、子供たちでしょ!?」


「……っ」


「子供たちを呪いの生贄にする!?そんなの、私が、認めるわけがない!!忘れてない!!貴方たちは、伯母さんを責めて、孤独にして、ビビアナを苦しめた!!死ななくても良かったはずの伯母さんたちを、死なせた!!あの子から、両親を奪ったんだ!!」


「彼女は、禁忌に触れたからだ!!」


「黙れ!!そんな掟のせいで、長老たちの命令のせいで、また子供たちが不幸になるというのなら!!……私が、変えてみせるわよ!!変えなくちゃ、救えないのなら!!他の誰でもない、私が、変えてやる!!もう失うことに耐えてばかりいる、無力なガキじゃないんだ!!」




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