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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その七十九


 敵の脚の速さに押し込まれながらも、防戦する。ゼファーも『火球』を放ち、敵の動きを抑えにかかるが、それでも限度というものはあった。


 最強の力にも、戦術というものは通じる。押し込まれていけば、こうもなってしまうのだ。


 だが。


 抗うことが、ムダだとは思わん!!


 矢を撃ち、また一人、仕留めた。死体を押しのけるようにして、連中は進みやがる。死者への敬意も忘れ去ったかのように。戦友への情さえも、削ぎ落とされたように。


 それは、やはり冒涜的な行いに他ならんよ。


 噛み潰す。


 怒声を放つヒマもない。呼吸を無意味に狂わせるのならば、それは間違いだ。感情表現などしている時間があれば、敵を射るために注ぎ込むのが正解である。ミアのように猟兵の仕事に徹するのみ。


 戦術に徹する。


 心を、そこに持って行くのだよ。感情は、ときに噛み殺すべきときもあった。プロフェッショナルは、辛いぜ。


「じょ、城塞に……敵が、と、到達しますっ!!で、出ましょうか!?」


「弓隊の射線の邪魔になる。今は、『仲間』を頼るべきときだ!!」


「は、はい!!み、みなさん、が、がんばって!!」


 城塞の上には、弓隊が並んでくれている。ガンダラの姿も、そこに見えた。


 ハルバートを夜に掲げて、我がスキンヘッドの副官が叫ぶ。


「弓隊、一斉に放ちなさいッッッ!!!」


 最適な距離関係だ。確実に当てるには、これぐらいは引き付ける必要がある。弓隊の一斉射が、敵の群れをバタバタと射殺していった。それでも、死者を踏みつけ、屍の乗り越え、止まらぬ進軍を続けるのみ。


「……白兵戦の準備をしろ!!敵が、来るぞおおおおおおおおおおおおお!!!」


 メダルドの叫びに、戦士たちが鋼を同時に抜き放った。剣と槍が煌めき、戦士たちが隊伍を組む。


『ぎぎぎひいいいいいいいいいいいいいいい!!!』


『ぎゃぎぎいいいいいいいいいいいいいいい!!!』


 『蟲混じりの兵士/グロテスク・レギオン』どもが、叫びながら城塞へと噛みついた。手槍と矢を頭上から浴びせられながらも、連中は止まらん。


 戦友の死体を足場にしてまで、城塞によじ登っていくのだ。おぞましい動きである。『寄生虫』との戦いに、戦士たちが慣れていなければ、『ブランガ』の毒が有効だという確信を持っていなければ、心理的に崩されたかもしれん勢いだった。


 頼れる戦術があることは、戦士にとって救いだよ。


「毒を塗れ!!」


「こいつらには、『ブランガ』がやたらと効く!!」


「『風』の魔術が使えるヤツ!!出し惜しみ、するな!!」


 体力も魔力も消耗する時間となった。


 城塞と戦術が、『ルファード』軍を補強する。『蟲混じりの兵士/グロテスク・レギオン』の猛攻に、どうにか対応してくれていた。


 敵軍の強い攻めと、こちらの戦力が、拮抗を作る。


 これならば―――!!?


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


「また、揺れてる!!」


「た、体勢が、崩されちゃいそうですっ。て、敵は、脚の数が、多い……っ!!だ、団長!!ボク、皆さんの加勢に……っ!!」


「ああ!!行ってくれ、ジャン!!」


「イエス・サー・ストラウス!!』


 空へと飛び出したジャンがいた。そのまま地上に目掛けて降りてくれる。


 苦戦する『仲間』たちのサポートをしてくれた。


 オレたちも飛び出したいところだし、いつもならレイチェルもとっくに飛び降りているところだろう。


 だが、備えていた。


 ゼベダイ・ジスが、何かを仕掛けるとすれば、そろそろだ。ここまでは、おそらくヤツのデザイン通りに戦術が動いている。


 嫌なことに、最も多くの死者が出てしまう市街地での戦闘となってしまったのだから。オレたちは、踏ん張りながらも敵へと挑むしかないが、当然、血は流れて行く。


 敵も味方も死ぬ。


 それを、狙っていたのだろう。『究極の聖餐』とやらの成就を目指して。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 再び、迷宮都市が揺れやがる。その揺れる音に紛れて、雄叫びが轟いた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」


 どこかのストラウスさん家の四男坊にも勝るとも劣らない大声だった。こちらの肌に突き刺さるような、強者の咆哮。


 にらみつける。敵は、東にいた。


 城塞の上にそいつがいた。十数体の『蟲混じりの兵士/グロテスク・レギオン』に紛れるようにして、巨大な筋肉のカタマリが威風堂々と城塞に立っていやがる。


「ゼベダイ・ジス!!」


「あいつ、誘っているよ。『風』の魔術も使って、叫び声を大きくしてる。目立ってる。行くべきじゃ、ないかもしれない。でも……」


「仕留めるべきですわ。この地響きと、あの男は連動しています。あちらに釣られてでも、圧倒した方が良い。放置しておけば、『究極の聖餐』を発動させることになる」


 戦術的には、行くべきではない。この場を離れることは、リスクだ。


 しかし、『究極の聖餐』がどこまでの威力を持っているか分からん以上は、進むべきだと判断する。


 『火烏の軍勢』の件もあった。あれが、もしも、この『オルテガ』で起きれば?


 帝国兵の死体だらけだ。街中が、火の海となるかもしれん。


 ゼベダイ・ジスは、かつては有能な軍人だったのだろうが、今では、ただの狂気の信奉者だった。全てを捧げても、失われた愛のために、全力で間違いを選ぶ。




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