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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その二十四


 『カール・メアー』での訓練は、伊達ではなかったな。手際よく縫合で、腎臓にまで達していた傷は縫われていく。包帯も丁寧に巻いていたし、圧のかけ方も理想的なものであった。


 慣れも感じる。


「どこかの医療現場で、負傷兵を診ていたか」


「……『オルテガ』には、負傷兵が多かった。帝国に刃向かう者を鎮圧する任務の果てに、彼らは傷を負った……名誉ある傷だ……『カール・メアー』は、帝国軍と、協力関係に……ある、はず……だったのに……ッ」


「裏切られたか」


「……帝国兵が、いきなり教会を襲ったのだ。一方的な殺戮となった……私も、戦ったのだが……このありさまだ。同胞や、『カール・メアー』に協力してくれていた彼女たちを、守ってやれなかった……ッ」


「奇襲を受ければ、そうなる。守り切れるような状況ではなかった。君が、使命を果たそうとしていたことは、傷だらけのその体で分かる。治療を、してやりたいが……」


「……帝国の敵だ……それに……お前は……『カール・メアー』の敵……治療など、いらない」


「せっかく助けたのに、死なれても困る。ミア、『血止めの秘薬』と『造血の秘薬』を、渡してやれ」


「うん。お姉さんたちも、使うといいよ。リエル特製の傷薬だから。こっちは塗って、こっちは、飲むの」


「……ケットシー……の、子供?」


「オレの妹だ」


「お兄ちゃんの妹、ミア・マルー・ストラウスだよ」


「……亜人種を……妹?」


「君の世界観には合わんだろうが、これが現実だ。オレとミアは真の兄妹さ」


「うんうん。ストラウス兄妹なのだー!」


『なのだー!』


「……意味、分からないわ。でも……死ぬのは、ダメだ。リヒトホーフェン伯爵の暴挙を、お山に報告しなければ……私たちは、皇帝陛下の命令で、庇護されているし……『血狩り』の任務を遂行する、軍への協力者なのに……」


「とにかく、お姉さんたち傷の手当を。あ。お兄ちゃん、ジャン!あっち向いてて!」


「おう」


「は、はいっ!!」


 のぞくつもりはないが、若い尼僧の肌をジロジロと見てしまうことは罪深いことだからね。夏の夜空を見てみる。ゼファーも、紳士な竜だから、一緒に星を見ていたよ。


 ミアは、彼女たちの治療を手伝っていた。


「フリジアの仲間なら、死なせられないもんね」


「……フリジア・ノーベルを、知っていると?」


「うん。友達だよ。元々は、お兄ちゃんが地下で捕まえて来た捕虜だけど」


「……何をしているのか、あの娘は……」


「ドジなところもあるよね」


「……ドジが過ぎる……あまつさえ、敵に、感化されたというのか……?未熟者め」


「そうかな?」


「……そうなのだ。教義は、絶対である」


「でもね、フリジアは前より強いよ。本心と、したいことが一致したんだね」


「……俗世に触れると、こうなるものだ……俗世は、混沌とし過ぎている。帝国軍でさえ、帝国貴族でさえも……ここまで、悪に墜ちる……っ」


「お姉さん、がんばったんだね。敵から仲間を守ろうとして、いっぱい傷つけられた」


「守れなかった……修行不足だ」


「運が悪かっただけ。誰も悪いことじゃないよ。お姉さんは、納得しないかもしれないけれど、がんばっても救えないこともある」


「……知っているさ。思い知らされている」


「あ。あとね。フリジアのこと、悪く言わないでね。フリジアが、私と友だちになってくれたから、お姉さんたちのこと、命懸けで助けようと思えたんだ」


「……ケットシーと……友人になっただと……」


「フリジアの見えている世界はね、きっと、『カール・メアー』より大きくなったんだよ。だから、あなたよりも多く助けられるのかもね」


「……ッ」


「『血狩り』とか、大嫌いだけど。それでも、殺したりしないよ。フリジアの仲間なら。フリジアは、あなたのことを、守ってくれているんだね。はい、手当は終了!」


「…………フリジアに、守られるか……何たる、屈辱か」


 あまり優等生という評価を、我らがフリジア・ノーベルは受けていないのかもしれないな。まあ、何であれ……手当が終わったというのであれば、質問の時間だよ。


「君らは、どうしてリヒトホーフェンに襲われたのか、心当たりがあるか?」


「尋問か」


「いいや、最も友好的なものだよ。質問ってやつだ、君らは捕虜にしない。情報を知りたいだけだし、こちらのリヒトホーフェンにまつわる邪悪な『異教活動』について報告してやることも可能だ」


「……どうして、協力する?」


「リヒトホーフェンを殺したいからだし、勝利したいからだ。リヒトホーフェンの排除については、君らも望むのではないか?……ヤツは、古い邪教の力を我が物にしている」


「……『蟲の教団』か」


「ほう。名前を知っていたか。フリジアは知らなかったようだが……」


「知らんだろう。アホだぞ、あいつは……偵察能力と戦闘能力はあるが、情報を分析することなど、向いてはいない……アホなんだ。少なくとも、我々も『蟲の教団』についての情報を得たのは三日前で、あいつとは共有していない。口をすべらせそうなドジ娘だから」


 散々な言われっぷりだが、フリジアらしい評価だとも納得した。少なくとも、偵察と戦闘についての評価はされているところが、らしかったぜ。その二点においては、そこらの戦士をはるかに超える水準であるのは確かだ。


 この尼僧剣士も、適切な評価をしてはいる。


 そして、情報を多く有しているようだ。


「情報交換をしようぜ。リヒトホーフェンは止めねばならん。暴走著しいのは、君の方が理解しているだろう。ヤツは、世界の多くの者にとって危険でしかない。おそらく、『カール・メアー』にとっても、帝国にとってもな」




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