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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第三話    『愛する者に不滅の薔薇を』    その十八


 性格も、物の考え方には応用すべきだよ。攻撃的なオレの性格ではね、誰かの立場になって想像力を使うことは明らかに苦手だ。


 推測したりして、相手の心を読み取るような考え方をしちまうんだよ。それはね、相手の心を、それほど尊重している行為とは思えない。


 やさしくないから、そういう覗くような考えをする。ストラウス家の竜騎士らしい考え方だとも思うよ。オレも兄貴どもも、親父もお袋も、そして……間違いなく姉貴であるマーリア・アンジューも、こんな性格と思考パターンを持っているんだよ。


 貴族は、性格が悪くなりやすいのかもしれん。


 少なくとも、傲慢だし、己の力を証明することが一番にありもする。


 復讐を成し遂げるためだけに、周りの者を犠牲にした。『死神』と呼ばれるような行為に突っ走るのは、貴族的……いや、ストラウス家の気質だ。


 だが、やさしい者は、それとは違う考え方をするんだよ。


「こ、この丸太とか、よ、良さそうです。つ、使い込まれていて、表面が、つ、つるつるなので手も、痛くないと思います!」


 押しやすいかどうかで、選ぶかもしれないのがストラウス家だったがね。ジャンは違うんだよ。こういう視点を、備え付けるためには、オレも苦労した。しかし、ジャンはそれを自然とやれる。


 いい力だ。


 この性格のまま、伸び続けて行けば―――オレが到達することは不可能な領域に行くのだろう。そうすれば、オレは、オレにとって未知の力を有するジャンと、より完璧な群れを組めるということだ。


 最高だな。


 ああ、本当に。オレは、やっぱりどこか利己的なのだろう。ジャンの笑顔を見ながら、自分のことも考えているのだ。世界と同じように、いつだって誰しもが不完全であるよ。


 だからこそ、異なる性質が協力し合えば、より良い群れと成れるのだ。


「採用しよう。丸太を、四本、破城槌の下に噛ませておこう」


「は、はい!」


 ゼファーが手伝うまでもなく、ジャンは破城槌本体を軽々と持ち上げてしまうのだから。笑みが止まらんぜ。どんどん、成長して欲しい。ジャン・レッドウッドにしか到達することが出来ん、ジャン固有の『最強』の道を磨いてほしいのだ。


 そのために。


 ミアを加えての破城槌製作作業タイムのあいだ、授業もしておく。想像力が及ばないときは、知識に頼れば早いからな。他人のアイデアをいかに上手く使いこなせるのかも、戦場の霊長である猟兵に必要な力だ。


「破城槌は、これ以外にも釣鐘型のモノもある」


「つ、釣鐘型ですか?」


「見たことある!ロープでね、丸太を釣るんだよ。鐘を衝くときみたいにね、丸太を大きく振って、どーん!って、ぶつけるんだ!」


「な、なるほど。ほ、本当に釣鐘型、ですね……っ」


「シンプルだが有効だ。加工のための日数を用意できるのであれば、そちらを選択するのも良いだろう。あとは、これのように車輪だけでなく、屋根を付けるものもある」


「城塞から矢を撃たれちゃうもんね!」


「そ、そっか。屋根があれば、矢を防げる」


「だが、屋根付きには弱点もある。フック付きのロープを掛けられやすい。重量次第ではあるが、軽量なものは城塞の敵兵から引きずり倒される危険もある。重たければ、当然、戦場での移動速度が遅くなる。油をかけられて焼かれるかもしれんな。釣鐘型も、丸太を吊るロープを矢で射られたらお終いだ」


「じゃ、弱点って、何にでもあるんですね」


「そうだ。状況に応じた最適があったとしても、対処がない戦術などない。多くを知っておくことだぜ」


「は、はい!がんばって、学びますっ!!」


 知識や教訓は、多くを与えてくれた。


 それらを知ることは有益である。我々は、全ての失敗をやれるほど、長生きでもなければ、余裕もないのだ。


 ベリウス陛下に誓ったように、オレは人生における今後、全ての戦いを勝利せねばならんのだからな。


 ジャンにも強くなってもらわなくては、困るのだ。オレとは違う『最強』で、オレの群れを補ってもらうためにね。


 ……そんな授業もしながら、手は動く。簡易なものではあるが、十分な威力を持った破城槌を完成させられたよ。


「完成だー!!」


『かんせいだー!!』


「で、出来ましたねっ。破城槌……っ」


「時間に余裕があれば、複数、作っておきたくもあったが……それほどの余裕もない。移動させねばならんしな」


「で、ですよね。じゃ、じゃあ、ボク、『狼』に化けて、は、運びます。どれくらい、運んでおくといいでしょうか?」


「十キロ程度、北に運んでいればいい。あまり早く北上し過ぎても、敵の偵察に発見されるリスクも増えるからな」


「わ、分かりました!で、では、ゼファーで先導してください!ロープで、引っ張って行きますのでっ!!』


 いつもの、ぽひゅん!という音を立てて、ジャンは『巨狼』に姿を変えた。破城槌と連結しているロープを加えると、実に快調な速度で動き始める。


「いいカンジだね。揺れて、壊れたりもしそうにない!」


「ジャンの『狼男』の力で固定しているからな。耐久性も、かなりのもんさ」


 そんなジャンの加速を妨げないように、ゼファーに乗って誘導を始めるとしようじゃないか。あの速度ならば、十分も要らんかもしれん。




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