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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第二話    『無償の罪に、この手は穢れ』    その百九十三


『ぎゃぎぎぎいいいいいいいいいいいいい!!』


『ぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』


 『赤黒い死者兵/レッド・デッド』どもが、次から次に縦穴から這い上がる。帝国兵というか、人間族のサイズもあれば、ドワーフのサイズもいた。皮膚が焼け焦げたかのように落ちてしまっていて、背中からはうねる触手を生やす異形になってはいたが、区別がつく。


「実験台にされた、ドワーフたち……ッ!?」


「ちゃんと、死なせてあげよう」


「……っ!!そうだ、そうだよ!!それも、また……戦士がこの場で果たすべき役目なんだ!!」


 ルチアがその矢を放つ。矢じりの『ブランガ』の毒をたっぷりとつけものであるし、そのうえ『風』の魔力を注いだものでもある。『赤黒い死者兵/レッド・デッド』の腹に、矢が突き立てられた。


『ぎゃがが、がうううう!?』


 『ブランガ』の毒も有効だった。敵の体から血が吹き上がる。『風』の魔力が、毒の循環に拍車をかけているようにも見えたな。


「あの呪毒が帯びていた属性を、選んだわけだ。良いセンスだぞ。正解だったらしい」


「私も、考えてるんだ。ちょっとは、成長しなくちゃね」


 有効な対策が、さらに判明した。『風』の属性にも弱い。つまり、あの呪毒は、ドワーフたちを殺すためだけでなく、体内にいたかもしれない『寄生虫』をも殺して処分する方法だった。


 諸々の理解が深まる、良い選択だったというわけだ。ニヤリと笑う。若者の成長を見せつけられた気になるぜ。元々、良い戦士ではあるが、賢さも判断力も磨かれている。


「若い戦士は、最前線に連れて行くべきだな!!ゼファー、迎撃に向かうぞ!!」


『らじゃー!!ばしゃには、ちかづかせない!!』


 地上チームと連携する。


 次から次にハリートビー廃鉱から『赤黒い死者兵/レッド・デッド』どもが現れているからな、地上での突撃と斬撃、上空からの狙撃で連携を組む必要があった。


「かなりの数だ!!」


「でも、さばけない数じゃない。馬車も、遠ざかりつつあるもん」


「ええ。このまま、壁になっておけば……」


「……しかし、注意も必要だぞ」


「え?」


「敵には、知性がある。戦術を、使おうとしているはずだ。さっきから、同じような場所から、敵を出し過ぎているように思える」


「もしかして、『囮』かもしれないね」


「……そうか、敵は、魔物じゃない。あいつらは、誰かに制御されて、操られている。つまり……」


「マルド・メロ、レイチェルに三枚おろしにされたのに、まだ生きているのかもね」


「さ、三枚おろし?」


 適切ではある言い方だったな。魚で例えるのであれば、まさにその状況であったのだから。それでも、死なんか。セザル・メロの例がある。驚くべきことでもないか。


 ともかく。


「レイチェル!ジャン!『囮』を使われている可能性がある!!ドワーフたちの馬車隊から、離され過ぎないようにしてくれ!!この敵は、性格があまり良くない!!正攻法ばかりを使うような相手には思えんのだ!!」


「了解ですわ、リングマスター!」


『は、はい!!ば、馬車の方に、向かいます……っ!!』


 嫌な予感は、どうせ当たるものだ。性格の悪そうな敵と戦うときは、いつもそうなる。敵の困ることを仕掛けるという行いに、快楽を覚えるヤツは少なからずいるのだから。


「足止めでもいい、追いつけられなければ、問題はない!!」


「ラジャー!足狙いだ!!」


「白状するけど、そんな細かな技巧まではやれそうにないから……私は、全力で撃つ!!」


「十分だ!!」


 射撃で『赤黒い死者兵/レッド・デッド』どもを牽制していく。馬車を守ることに集中した。敵を屠ることよりも、移動だ。ちょっとでも、安全な場所まで、馬車が移動するまでの時間を稼ぎたい。


 一秒一秒、馬車が逃げてくれる。『赤黒い死者兵/レッド・デッド』どもが、廃鉱から『出撃』してくるペースが緩んだ。


 直感が、安堵しそうになる。


 だからこそ、自分を叱りつけていた。


 戦術が、罠が、狙うのは……いつだって、相手の想像力である。


 反射的に、叫んでいたぜ。


「緩むな!!来るぞ!!」


 猟兵たちにも、馬車にいるドワーフたちにもだ。


 やはり、ガルフ・コルテスは戦場の霊長。猟兵の祖だったな。鍛えられた通り、猟兵の勘は機能する。馬車隊の先頭からほど近く、右手に三十メートルほどの地面が、爆裂しながら崩壊していた。


 馬が驚く。


 ドワーフたちも驚いていた。


 だがね。猟兵は驚かなかった。赤い廃鉱の地面を貫いて、空に向けて塔のように巨大な赤黒い触手が突き出したところで……その赤黒い触手の魔塔の表面に、十数体の『赤黒い死者兵/レッド・デッド』どもがまとわりついていたところでな。


 驚くこともなく、備えることがやれたよ。ありがとうな、ガルフ。教えの通り、戦場は露骨なまでの悪意でデザインされていた。


『ぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』


『ぎゃぎぎぎいいいいいいいいいいいいい!!』


 無数の『赤黒い死者兵/レッド・デッド』どもが合唱するように吠えたところで、成すべきことは変わらん。デカブツどもからあの死者どもが解き放たれるよりも先に、魔眼を使うのだ。


 金色の呪印を刻みつける。『ターゲティング』をな。


 威力に頼るのさ。巨大な敵を倒すには、竜の『火球』こそが相応しい。




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