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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第二話    『無償の罪に、この手は穢れ』    その百七十四


 果汁あふれる桃に喰らいついていったよ。中海を見つめながら、ジューシーな桃の果肉を噛むのは幸せな時間だった。照りつく暑さと、この桃は相性が良い。


 それに、良い報告も聞けたよ。


「ゾロ島のキケは、無事だったか」


「寡黙な方ですが、元気で気の利く方ですね。荒くれた漁師たちをまとめ上げるだけの器量を感じさせてくれます。漁船の修理も、完了したようですよ」


「素早い仕事だ」


「『ショーレ』の派遣してくれた船に、腕の良い船大工が乗っていたです。怪我の功名と言うべきか。『懲罰部隊』が船体に攻撃を仕掛ける戦術を採っていましたから。その対策が、結果的にこうなった。幸運は、こちらにあるようですわ」


 運も実力のうちだった。それは厳しさのある言葉なんだよ。不運なあまり実力が発揮できなかったとしても、しょうがない、と割り切るほかにないという意味でもある。世の中というものは、実に厳しく、残酷だった。


「良い風が吹いてくれているうちに、事を済ませたいところだな」


 多くを助けたい。


 死傷者をより少なくして。


 そして、戦いを続けるのだ。勝利の山を築くために。それだけが、我々の望む『未来』につながる唯一の道だから。空を見る。神々に祈ることはないが、先祖たちには祈りたい。死んで歌と星になったオレの一族に、祈る。


 幸運が、欲しいと願う。


 終わることなく続くこの戦いに、加護を一つでもと……。


 甘い果肉を呑み込みながら、祈りを空に投げつけた。偶然なのか、それとも祝福なのか。それを鑑別する方法はオレにはないものの、良い風を手に入れられる。ゼファーは喜び、翼に風を受け止めると、高さと速さを得た。


 ……南東へと一直線の飛行は、乾いた荒野を抜けて、木々と斜面が目立つ地形へと到達させる。


「すぐに到着しそうだね。偵察も、しておこうか?」


「そうだな。『オルテガ』から、帝国兵どもが出発しているかもしれない」


「敵戦力どもが合流する前に、ドワーフたちを解放すれば……楽になりそうだけど」


「状況次第だな。それがやれるか、それとも一工夫要るのかを、確かめに行こう」


 鉄靴の内側を使い、ゼファーに命じた。


 ゼファーが右の翼を高みへと伸ばす。飛行の角度は急変し、しばらくその傾斜を維持したあとで、再び水平飛行へと戻った。


「バッチリな角度だ」


「いい仕事だよ、ゼファー!」


『えへへ。ぼく、じょうず!』


 ミアに首の付け根を撫でられるゼファーは、ニンマリとした笑顔だった。それから、十数分の飛行が続き、視界の果てに進軍する敵影が現れていた。


『みつけたね……っ!』


「高度を取ってくれ。鳥の影に、化けるぞ」


『らじゃー!』


 高く高く、地上から離れて青空と太陽を背にする。帝国兵どもも警戒はしているだろうが、これをすれば気づかれる確率はかなり低くなった。空の高みを見上げる者は、それほどいない。夏の太陽も、避けるものだ。


 地上を進む影は、かなりの速度の行進を続けている。全体的に乱れの少ない動きで、かなりの訓練量と、それを運用し尽くす統率の力を感じられた。


「距離関係から見て、こいつらは『ルファード』での戦闘よりも先に『オルテガ』を出発していたようだな」


「では、リヒトホーフェンの悪行を耳に入れていないのですね」


「だから、士気を維持してもいるのだろう。『オルテガ』にいる軍事訓練の教官は、中の上の兵隊を作れる」


 上級とは、言い難いところもあるが、十分な練度の兵士を作っている。


「こちらの方が、質が高く見えますわね」


「リヒトホーフェンの『本命』かもしれんからな。あの男は、どこまでも『寄生虫』の力を求めているのか……軍人としては、狂っている」


「そ、それで。どうしましょう?……か、『火薬樽』の出番でしょうか?」


「いきなり、使ってしまうの?でも、悪くはないか。進軍を妨害するには、適しているし」


「リングマスター、どうなさいます?」


「……あいつらを爆撃する前に、傭兵どもの動きも確認しておきたい」


「南から、傭兵が100人、呼ばれている……だったわね」


「山と森が深い。こいつらは、主要な街道を選ぶだろう。同一の傭兵団であれば、一致して動く……帝国軍よりも、打撃に怯むのは事実だ。練度を感じさせる1000の敵歩兵を爆撃で刺激することで、連中は進軍速度を速めるかもしれん」


「な、なるほど。では、よ、傭兵に、使った方が、いいかもしれませんねっ!さ、さっそく、臭いでも探します……っ」


『……ぼくの『まがん』のほうが、さきにみつけるもんね!』


 競争が始まってくれる。こういう前向きな競争は好きだよ。訓練にもなるしな。さらに南へと進路を変えたゼファーは数分後、敵影を見つけたが―――ジャンと同時であった。


「い、います!」


『みつけた!』


「同時だね。二人とも、すごい!」


「ええ。見事ですわ」


「あ、ありがとうございます……っ」


「よく見つけられるものだわ。でも……うん……近づいてくると、少し、見えてきたわ」


「空から見下ろせば、一目瞭然な点がある」


「うん。練度が低い。ひと固まりにはなっているけれど……隊列もバラバラで、遅いね」


「襲うならば、こいつらの方だ。ゼファー、狩りを始めるぞ!」




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