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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第四話    『ザシュガン砦の攻防』    その七十一


 一つの弾丸と三つの矢が次々に放たれる。それらは敵兵を次々に仕留めていた。人手不足気味の東の見張りを仕留め終えたガンダラ・チームは、さらなる殺戮を実行する。孤立して行動している兵士に対して、城塞の上から矢を放ち、射殺していくのだ。


 敵兵の数が減っていく。


 敵の死体が見つかるまでは、この静かなる暗殺を行うことが可能だな。アルノア騎士団たちはシャトーの外に意識が集中しすぎているし、火災に見舞われた厩舎も大いに気にしている。


 敵の間近でも、上手く振る舞えば身を隠すことは出来るという事実を、オレたちは実践することで証明しているな。


 ……さてと、オレも戦いを始めなければならんようだぞ。


 索敵用の『風』に、敵の気配がぶつかる音がしている。階段を上がり、この最上階のフロアにやって来ているようだ……先ほどのメイドが見つかって、警戒されるよりも先に、斬り捨ててやることにしよう。


 今夜の戦いは、まだ本番が待ち受けているからな。戦術に頼り、体力を可能な限り使わないようにする必要がある。


 オレはアルノア伯爵の部屋から出ると、そのまま廊下を走り、階段の近くへと向かう。敵は急ぎ足のようだな。武装はしているよ、鋼の音がガチャガチャとなる。それが二組。騎士だろうな。オレは背中を壁にあてながら、階段を登ってくる気配に備えた。


「……伯爵の心配が当たったか」


「まさか、『イルカルラ血盟団』に攻められるとはな。亜人種の連中も、勘がいい。伯爵の悪事に気がついたか」


「……発言には気をつけるべきだぞ」


「ああ、そうだな。すまん。まだ酒が入っているようだ。主君の悪口を言うつもりはないんだよ。聞かなかったことにしてくれるか?」


「もちろんだ。滅多なことを言うべきじゃない。伯爵は、この件に関しては、ナーバスになっているんだからな。我々を、街に繰り出させない理由は、隠蔽するためだ」


 悪くない慎重さかもしれんな。


 酒が入れば、男の口はいつもよりも、ずっと軽くなってしまうものだ。そして、上司の悪口ってのも、よく言うもんだよな。


 『ラクタパクシャ』は、アルノア伯爵が仕込んだ傭兵たちだ……そんな事実が出回ることを、アルノアは恐れたらしい。ここの騎士どもも、『ラクタパクシャ』という存在を作り上げることを、気に入ってはいないのかもしれんな。


 それはリスクではあるし、帝国人の理性にも反することだろう。市民や商人を襲う山賊を、貴族であるアルノアが組織するなんてことはな……そんな主に対して、盲目的に仕える者は、真の騎士とは言えないことぐらい、騎士なら知っているさ。


 騎士道とは、そういうものではない。主に対しての盲目的な忠誠など、騎士の本懐からは遠く離れているものだ。


 彼らがすべきことは、アルノアを止めることだった。それを出来なかった時点で、彼らの騎士道は腐って壊れてしまっている。行動を伴わない葛藤などでは、誰も救うことは出来ん。どの道であれ、行動しなければ、その尊さを発揮することはない。


「……とにかく、命令通り、書類を破棄するぞ」


「……こんな任務ばかりだな。オレたちは、間違った大人になっていないだろうか」


「亜人種どもを狩り滅ぼし、皇帝陛下の理想とした世界を創るための、必要悪だろう。少しは政治も使わないと、世を正すための力は得られん」


「大義があれば、手段には目をつぶれる……か……オレは…………いや、すまない。仕事をしよう。敵兵も近づいているのかもしれない」


「そうだ。この仕事をさっさと済ませて、仲間たちの救援に行こう。前線で亜人種どもと斬り結べば、変な苦悩も忘れられる」


「敵の血で、罪深い記憶を消すってわけか……いいね。剣を振るう者らしい発想だよ」


「そういうことだ――――」


 ―――納得したところで悪いが、死んでもらうことにする。オレはその二人の騎士の目の前に踊り出ると同時に、竜太刀の横薙ぎ払いを使って攻撃を仕掛けた。向かって右側にいた騎士の首を刎ねたよ、一瞬のうちにな。


 断末魔を残す余裕さえ与えることもなく、一人の男の命に終わりを与えた。オレは薙ぎ払いの動作に連動させて、左手に握らせていた逆手持ちのナイフを投げつける。子供の頃から得意なナイフ投げは、3メートルの距離を飛んで目標としていた場所へと突き刺さった。


 左側にいた騎士の喉に、そのナイフは刺さっていたよ。声帯が潰れて、内出血が気道に注いでいく。肺はそのうちに出血で一杯になって溺れ死ぬか……それよりも先に、失血死で死ねるのか。


 ……いいや、違うよ。


 オレはそんな残酷を好まない。


 目を白黒させながら、オレを困り果てた貌で見つめて来る男は、逃げることも出来ないし、言葉を遺すことも叶わない。そうだ。残念ながら、戦場で遭遇する死というものは、こんなものだ。


 何とも呆気なく、無価値な存在であったかのように命は壊れてしまう。その無情さというものを感じながら、多くの戦士は死ぬことになる。それはさみしく辛いことであり、ヒトの魂の価値を疑わせることでもあるが……。


 時には、ゼロよりも重たい価値を証明させてやることも可能だ。刎ねられた首から吹き上がる赤い雨に打たれながら、オレは声を失い、やがて命を失う騎士に語りかけてやる。


「剣を抜け。我が名は、ソルジェ・ストラウス。ガルーナの竜騎士にして、『自由同盟』の傭兵……やがて、お前たちの皇帝を、復讐の炎で焼き殺す男だ。騎士よ、名前は聞けぬが、剣を構えて、我に挑む権利を与えよう」


「……っ」


 死に行く騎士は鋼を抜いた。


 ふらつき、朦朧としていく意識に抗いながら、騎士としての職務を果たすために、剣を構えた。己が信ずる『正義』のために鋼を振るって戦い、死ぬことこそが騎士の本懐の一つだろう。


 彼らが人間族以外の種族の滅びを夢見るのなら、オレはそれを阻む『悪』なのだ。


「いざ、尋常に……勝負」


「……ッ!!」


 剣が振り抜かれる。彼の剣は、あまりにも遅かったが……それでも柄に絡められた指には力を感じた。死の間際でさえも鍛錬は、ヒトを戦士にしてくれるものだ。彼は剣を振るう者の意地をオレに証明してみせながら―――頭に竜太刀の斬撃を浴びて絶命していた。


 指に命が壊れる感触を得ながら。命を帯びた赤い雨を浴びる……。


 返り血にまみれつつも、オレは階段を降りることにした。酔いがヒドい騎士どもの気配は、この下のフロアにある。卑劣な行いかもしれないが、そいつらを斬り殺して回るとするよ。


 外を見張っているヤツらを、内側から殺して行くわけだ。敵の懐に入り込める、これこそ、オレたちの理想。少数精鋭ならではの戦術ってものだ。


 本領を発揮している『パンジャール猟兵団』の力を見せつけている。まだ、この攻撃がバレちゃいないがな……そろそろ、バレてしまうだろう。かなり、積極的に殺しまくっているからな。


 シャトーの中と外から、大暴れすることにしようじゃないか。オレが騒ぎを起こせば、ガンダラ・チームも派手に殺し始めるだろう。かなり数は間引けているからな。そろそろ殲滅のための攻めを初めてもいい頃合いじゃある。


 オレは、酒臭いフロアに降り立ったよ。酔い潰れ気味の騎士が、水差しを睨みつけている。目の前にいるそいつに歩み寄って、声を掛けた。


「おい、敵だぞ?」


「え?な、なに!?」


 竜太刀の斬撃を放っていた。騎士の頭が斬り裂かれて、即死する。悲鳴を上げさせることはしなかった。そこまでお人良しじゃない。酔っ払っていようが、わざわざ敵だと名乗ってみせた。それ以上、敵に塩を送ることは、むしろ失礼ってものだ。


 さてと。騎士どもが4人いるな。全員殺すとしよう。

 



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