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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第四話    『ザシュガン砦の攻防』    その三十七


 長老の屋敷から出ると、ゼファーが屋敷の前に鎮座していた。ゼファーもまた腹ごしらえは済ませている。『ラクタパクシャ』の襲撃者どもを何人か喰らっていたからな。


 大穴集落のドワーフの戦士たちが、何人もこの場所に集まってくれている。ゼファーとオレたちの旅立ちを見送ってくれるつもりらしい。あるいは……警戒心の深い者は見張りをしているのかもしれんな。


 ……誰もが人間族に助けられたことを、素直に受け入れやしないさ。あのガディンのように襲いかかって来るほどの向こう見ずさはないだろうし、オレたちが敵ではないことを共に肩を並べて『ラクタパクシャ』と戦った彼らは、理解しているだろうがな。


 それでも、何人かのドワーフはオレを見ると表情を歪めるようにして顔を背けていたよ。人間族に襲撃された、その事実を彼らの心は忘れ去ることなど出来ん。ヒトは、そんなに器用な心をしちゃいないのさ。


 状況を理解したとしても、それに納得する?……そこまでやれるかは分からないものだ。


 理性などで悲しみや怒りの重みを、どこまで軽減することが可能なのか?……血の気の盛んなガルーナの野蛮人や、ドワーフの戦士みたいな連中には、そういう行為は難解な行いであるのさ。


 ……だが、長老の言った通りなのだ。


 彼らの心に宿った怒りは、鋼を研ぎ澄ませることになるだろう。


 体力が回復し、傷から流れる血が止まれば?……あと十数時間も休息を取れば、彼らは再び一流の戦士に戻る。復讐者の貌になってな……人間族に、帝国人に対する復讐心は彼らを短躯の鬼へと変えることになるだろうよ。


『……『どーじぇ』、いくの?』


 愛らしい声を襲撃者どもの血に濡れた口から告げるのさ、オレの愛しい仔竜が。微笑みながら、そろえた指先で目の前にやって来た巨大な鼻を撫でてやる。


「ああ。オレたちの腹ごしらえも終わった。長老とも作戦を確認した……見張りは、どうだった?」


『おいしかったよ!』


 金色の瞳を輝かせながら、無邪気な声がそう告げて来た。オレは、思わず口もとを緩ませちまう。


「ククク!……そうか、そいつは良かったな、ゼファー」


『うん。さんにん、いたよ!だから、おなか、いっぱい!』


「よくやったぞ。ヤツらはどこにいた?」


『うまにのって、おかのうらがわに、かくれていたんだ。きっと……もしも、このしゅうらくのしゅうげきがしっぱいしたとき、なかまへほうこくしにいくつもりだったんだよ』


「……ああ。そうだろうな。長老には教えてやったな?」


『うん!』


「ならばいい。『ラクタパクシャ』の連中は、この大穴集落を襲うために、ほとんどの戦力を費やしていただろう……少なくとも、この土地に投入することが可能な戦力は全てな」


『どうして、そういいきれるの、『どーじぇ』?』


「そうでなければ、大穴集落を陥落させることは出来ないからだ。『ラクタパクシャ』は、この大穴集落を研究し、戦術をデザインしていた……戦力を無意味に分散させるつもりはない。ヤツらの馬は、かなり遠くまで連絡をしに行くつもりだったんだろう。馬は何頭だ?」


『きゅうとういたよ!』


「……決定的だな。早馬を乗り替えながら、砂漠を駆け抜ける……50キロ以上は離れているだろう」


『なるほど……きたのさばくのなかに、ちいさくて、くずれかけたたてものがあるんだ。もしかしたら、そこに、『らくたぱくしゃ』がいるかもしれないね』


「偉い子だぞ、オレのゼファー」


 ナデナデしてやりたくて、たまらない気持ちになる。だから、ドージェは撫でるんだ。竜の黒いウロコに覆われた、大きな鼻先をな。


『えへへ……ほめられてるっ。ぼく、しごとができるこ!』


「まったくだな……キュレネイ、その場所をどう思う?」


「『ラクタパクシャ』の拠点の一つだと思うであります。本拠地かどうかは判断しづらいですが……拠点の一つ……無人でありましたか、ゼファー?」


『うん。だれもいなかったよ』


「本拠地ではないのかもしれないでありますな。連絡要員を残していたということは、連絡を受け取る相手がいるということであります」


 ゼファーが食っちまった見張りの連中は、『ラクタパクシャ』が窮地に追い詰められた時、自分たちの拠点に逃げ込む係だ。


 救援を呼ぶ?……いや、間に合う距離に仲間はいない。自分たちの作戦が失敗したと告げるだけの係だ。そういうヤツを排除したことは、大きい。


 少なくとも、『ラクタパクシャ』の残存戦力が、この大穴集落を再び襲撃するまでに時間は稼げるさ。襲撃の傷を癒やし、体力を回復させるための時間が、大穴集落のドワーフ戦士たちには必要な現状だからな……。


 ……『ラクタパクシャ』の本隊や……あるいは、残りの部隊の居場所は、長老たちが捕虜にしたヤツらを拷問にかけることで吐かせてくれるだろう……手練れの傭兵なら粘るかもしれないし、時間をかけて何度も尋問することで、嘘をついていないかを確かめる必要もある。


 時間がかかる作業だから、ここのドワーフたちに任せよう。人間族を……しかも、大穴集落の襲撃者であるヤツらを拷問にかけるのであれば、楽しくてしかたがないだろうよ。邪魔をしなくてもいい。また、ここに戻って来た時に聞けばいいさ。


「……よし、皆、ゼファーの背に乗れ!」


「イエス」


「はい!」


「分かりましたわ、リング・マスター」


「……アルノア査察団が拠点にしている、『ラーシャール』の西に12キロの施設へと向かうぞ」


「リング・マスター、リエルたちはどうするのです?」


「襲撃時間までは、まだ時間がある。オレたちは、先に査察団の拠点に向かい、下調べをしておくぞ」


「なるほど。そのあいだに、ゼファーが『ガッシャーラブル』に舞い戻り、リエルやガンダラたちを連れて来る……」


「そうだ。あちらで特別な動きがない限り、全員でことにあたりたい……フクロウが来ないことを見れば、まだ『アルトーレ』からクラリス陛下の軍が南下して来るタイミングではないのだろう」


 ……来たところで、『イルカルラ血盟団』の『ザシュガン砦』攻めには間に合わない。


「……戦況を読んで、戦力のデザインはガンダラがするさ」


「イエス。フクロウで、大穴集落の状況はガンダラに伝えているでありますから、私たちは先に査察団の根城に向かえばいいであります」


「ガンダラさん、信頼されていますね……私も、そんな風になれるように、頑張らないといけません!」


 決意に満ちた瞳を北に向けながら、ククル・ストレガは言葉を風に残した。


「では、行くであります、ククル?」


「え?あ、は、はい!」


 『パンジャール猟兵団』の猟兵たちが竜の背に乗るのさ。ゼファーは嬉しそうに、長い尻尾をぶおんとゆっくりと振り回した。


 ドワーフの戦士たちが、その動きに半ば驚き、半ば感動を示す―――巨大なものが動くことだけで、ヒトの心もまた動かされるものだ。オレはドワーフの戦士たちに告げる。


「それではな、我が友たちよ!!……帝国の襲撃に備えておくのだ!!オレたちが再び肩を並べて戦う時はすぐに来るだろう!!オレは、君たちと共に戦う!!『メイガーロフ』の自由のために!!我が故郷の復讐のために!!君らと共に、鋼で敵を裂くッ!!」


 ドワーフの戦士が応えてくれた。


 それぞれの鋼を天に向けて掲げる。


「サー・ストラウス!!ガルーナから来た、竜騎士よ!!我らは、そなたの帰還を待とう!!鋼を揃え、再び侵略者の軍勢と戦うために、我らは竜騎士の帰還を待つ!!必ずや、戻るがいい!!砂漠の砂に、呑まれることなく、再び、この土地で肩を並べて戦おう!!」




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