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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『不帰の砂漠イルカルラ』

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第四話    『ザシュガン砦の攻防』    その二十


 『メイガーロフ・ドワーフ』の長老は、その白くて大きなヒゲを揉みながら言ったのだ。心あたりがあるのだと。


「……どこの組織だ?」


「東の果てにいる連中だ。遠くにいるが脚は速い。交渉次第では、すぐに駆けつけて来るだろうな」


「……なるほど。ケットシーの山賊たちか」


「うむ。そうだ。連中は、最も『メイガーロフ』に興味のない『メイガーロフ人』じゃろうな。定住もせんと、『カナット山脈』の東部で遊牧と略奪に夢中となっている……」


「かなり性格が悪そうな連中でありますな」


「そうじゃな。ワシらよりは凶暴じゃろうし……郷土愛など端から持ち合わせてはおらんよ。『イルカルラ血盟団』やバルガス将軍のためには、間違っても動かんが……」


「……利益を供与すれば、雇えるのか?……まるで、傭兵のように?」


「もちろんじゃ。連中が満足するだけの条件を用意することが出来れば……1000か2000の若い衆を寄越してくれるだろう。もちろん、対価次第ではあるがな……ストラウス殿は銀貨を山のように用意することは出来るか?」


「バカを言え。そんな金はない。オレにはな」


「……ふむ。つまり、ストラウス殿の雇い主には、それがある」


「ルード王国は商業の国だ。それなりに金はあるさ。ケットシーの山賊たちが、どれだけの金額で動くのかは分からないが……帝国軍との戦いに貢献した者には、『自由同盟』は金は出す。少尉以上の階級を持つ帝国軍人に、貴族や騎士の捕虜なら、それぞれに銀貨どころか金貨を出すさ」


「なるほど。金貨か……小物ばかりを漁る日々が続いておるじゃろうからな。ケットシーどもも、大物狙いをしたくなるかもしれん」


「……連絡は取れるのか?」


「鳥を使ってな。ケットシーが奪った鋼を、ワシらは買い取るようにしている。よく躾けられたハトが、ワシらとヤツらをつなげているんじゃよ」


 山賊同士、表立っては手を組んではいないものの、裏ではそれなりに繋がっているというわけだな。器用なケットシーの戦士たちか、『メイガーロフ』の荒れた土地に強そうだということは、大きな期待が出来る戦力ではあるな……。


「ケットシーの戦士は、どうしても軽装歩兵が多くなるモンじゃ。ワシら、強くて逞しい筋肉を持つドワーフと比べて、連中の骨格はあまりにも貧弱ではある……しかし、敵も『メイガーロフ』の砂漠や暑さには慣れておらんようすだ」


 長老の老いた瞳は、そこら中に転がる『ラクタパクシャ』の襲撃者の死体を睨みつけていた。たしかに、ヤツらは軽装だった。


 武器として振り回している鋼こそ、大型のものが目立ちはしたものの、その防具と言えば、薄い鉄の胴当てと、ウールのマントを羽織った程度のものだった。


「コイツらの練度なら、もっと頑丈な鎧だって身につけられただろうにな」


「ワシもそう思う。コイツらは戦上手だ。山賊行為ばかりを働いておったせいで、戦の仕方が下手になってしまっていたワシらとは比べものにならんほどに、コイツらは戦争屋じゃったよ」


「戦士としては認めてやりたくはないほどに、残酷な連中ではあったがな……」


 だが、腕は立つ。ドワーフの大穴集落を、数時間で攻め滅ぼせるほどに有能だった。もしも、オレたちがこの集落を訪れることがなかったら?……この大穴集落のドワーフたちは、間違いなく全滅させられていた。


 相手に逃げることも許さずに、皆殺しにする……そういう行動を実践するためには、悪魔のように残酷な心だけでなく、たしかな戦略性に裏打ちされた練度というものが必要となってくるのだ。


 戦闘に対する能力だけなら、十分以上に持っていた。もしも、オレたち『パンジャール猟兵団』の情報が前もってヤツらに伝わっていとすれば、オレたちはもっと苦戦しただろうし、より多くのドワーフたちが命を落としていたことだろう。


 ……まあ、敵は確かに強くはあるのだが、もしも、ドワーフたちが軍事訓練を怠っていなければ、ここまで容易く大穴集落を陥落させられることはなかったように思えるよ。オレたちが流れを変えただけで、彼らはその本領を発揮し始めた。実力が出せていないのさ。


「……いい指揮官を育てていなかったな。山賊は自由だが……やはり、組織戦の訓練を怠ると……こんな有り様になるというわけじゃな」


「イエス。ですが、この戦いを生き残った者たちには経験が残るであります。老兵たちの戦術講座についても、必死に理解しようとするようになったはずでありますな」


 無表情なる美少女フェイスで、キュレネイ・ザトーはドワーフの長老を励ますような言葉を使う。その言葉によって実際に励まされたのかどうかは、分からない。教訓に満ちた言葉ってのは、どうにも苦々しさを伴うものだからな。


しかし、キュレネイの指摘は正しいのだ。


「……うむ。若い衆も、ワシらの作戦を聞くようになるじゃろう。血の気があり過ぎて、無意味に前に突出する者がどうなるかも……そして、臆病な賢さに体を委ねすぎる者が、どれだけの者を守れるかという問いも……どちらの答えも、若い衆らは学んだ」


「老兵の経験値を頼るになることは、若手にはいいことさ。未熟さは、一朝一夕の経験ではどうにもならん。ベテランに率いられてこそ、頑強な軍隊になれる」


「ああ。どうにもこうにも、痛すぎる授業料を支払ったが……その成果を、用兵に反映させてやるとしよう。戦の連続に、なりそうじゃからな……」


「そうだな……」


 今夜の『イルカルラ血盟だ』による特攻もそうだし、その後に起こりえそうな帝国の増援の北上―――そして、『自由同盟』側の戦力の南下も加わると……連戦に次ぐ連戦となりそうだ。


 こんな戦いに必要なのは?


 決まっている。地の利の確保だ。しっかりとした拠点を作ることが出来れば、少数で多勢を止めることだって不可能ではなくなるのだ。


「ドワーフの工兵としての能力……そいつも、今後の戦いを左右する要素になるはずだ」


「なるほどな。ワシらの名誉を回復する機会ってのも、遠からずありそうなわけだ……」


「ああ。だが、かなりのハードワークになるだろう。苦労は目に見えてはいるのだがな」


「ワシらドワーフは働き者じゃよ。問題はないさ、ストラウス殿……さてと。それでは動くとしよう」


「イエス。東にいるケットシーの山賊たちに、救援の要請を」


「うむ。任せておけ。連中も金貨のためなら、喜んで命を張るだろう。そういう連中がそろっている。欲深い猫耳どもがな」


「頼りになる戦力なら、一人だって多い方がいい。アルノア伯爵は、メイウェイの後釜を狙っている……ヤツは、亜人種族に対して、憎悪と殺意をもって応じることになるだろう。メイウェイの時代のような、やさしさを持つことはない」


「分かっておるよ。ワシらの、この大穴集落の惨状を見ればな……」


「……オレたちは、今夜……アルノア伯爵の『アルノア査察団』を襲撃する。そこにアルノアがいれば、御の字ではあるが……そうなるとは、限らん。さすがに、アルノアをマークする時間がないしな」


 ……それに、『ラクタパクシャ』を操っていたようなヤツだ。『ラクタパクシャ』と同じように、その足跡を隠すことも長けているかもしれない……もっと早くに、ヤツの存在と野心に気がつけていたら、楽だったんだがな―――。


 ―――だが、嘆いていてもしょうがない。


「休息に入るぞ、キュレネイ……そして、夜に備える。戦い過ぎてしまっている」


「イエス。体力の回復も、仕事の内であります」




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