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MMO dead World  作者: 岡田播磨
第一章 MMO ”dogma”  World
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「来週のサーバーメンテナンスは、知ってる?」

「知ってますよ。定期メンテじゃなくて、特別メンテなんっすよね」

「そうよ。だから、いつなら半日もかからないメンテナンスが木曜の夕方16時から金曜の朝7時まで掛かるの。クマくんは木曜日のいつ頃来れるかな?」

 簡単なクエストを切り上げ、俺たちはフィールドをぶらついていた。

 このゲームは、箱庭型のフィールドゲームだ。

 フィールドは街の転送装置でつながっており、クエストごとに移動する舞台が変わる。

 特徴的なのはすべてのフィールドが浮島であること。

 空に浮かぶ浮島は、端っこに行けば奈落になっており、落ちればロストする。

 浮島同士がスレスレを通っている場合は、隣の浮島に飛び乗って別のフィールドに乱入することができる。

 似たレベルのフィールドが隣り合っているが、たまに高レベルフィールドが紛れている。

 誤って飛び乗った場合は、モンスターの洗礼が待っている。

 メーカー側はフィールドを歩いているうちに自動で発生する遭遇クエストに良いアイテムを配布するなどをして、プレイの幅を広げているつもりでいる。

 ギャンブル性が高いが、それを楽しみにプレイしている輩もいるようだ。

「今は夏休みっすから、午前中とかお昼過ぎにはログイン出きると思うっすよ」

「それならよかった」

 シェリーさんは、とても満足した様子だった。

 連日、俺はシェリーさんとクエストをこなしていた。

 夏休みに特別な予定もない俺には、このゲームとの約束が最優先事項だった。

 シェリーさんに頼まれれば何日でもログインする。

 すでに連続ログイン日数は20日超。

 宿題なんて手を付けず、毎日充実した日々を過ごしていた。

「クローンプレイヤーは、メンテナンス中なにしてるんですか?」

「特に何も。なんて言うか――時間が切り取られたような感じね」

「切り取られた?」

「メンテ開始のアナウンスは流れた後、フッと視界がずれた感じがしたと思うと終わってるの。でもね、自分の立ち位置は変わっていないけど、どことなく周りの雰囲気は変わってるわ」

「なにが変わるんです?」

「大きいのは人数。定期メンテナンスではあまりないけど、こういった特別メンテナンスの場合、サーバー収容数の調整を兼ねているらしいの。プレイヤーとあまり関わりを持っていないクローンだったり、新規に登録して間もないプレイヤーなんかを新サーバーに移して、プレイ環境の安定化を図るらしいわ」

「そんな! それじゃあ、俺も移されてしまうってことですか!?」

 シェリーさんを問い詰めても仕方ないのに、俺はつい声を荒げてしまった。

 俺も新規参入プレイヤーだ。移行対象に当てはまっていることになる。

 シェリーさんは、俺の反応に対して可笑しそうに表情をコロコロ変えて答えた。

「大丈夫よ。登録して間もないって言ったでしょ。あなたは十分他のプレイヤーとも関わりを強く持ってるし、日数も少なくない。それに相棒(バディ)登録している者同士は、グループ単位で移動するから、もしサーバーが変わるとしても一緒なはずよ」

「なんだ、そっか。よかった・・・」

 シェリーさんは、微笑む。

 こちらの気持ちに薄々は気づいているのだろう。だけど、シェリーさんは何も言わない。

 俺が表情を隠すように俯いていると、シェリーさんは背を向けて歩き出した。

 年上の余裕なのか、それとも別の理由があるのか、シェリーさんに翻弄されっぱなしだった。

「そういえば、メンテに関して妙な噂を聞いたことがあるわ」

「なんすか、それ」

 取り繕うように、シェリーさんの話題に飛びついた。

「メンテナンス中にも動ける特殊なプレイヤーがいるらしいって噂。私達クローンプレイヤーが止まっている世界で、そのプレイヤーだけは、自由なんですって。一体何をしてるんでしょうね」

 なぜかこの前出会った猫女の顔を思い出した。

 気味の悪いプレイヤー。

 キャラクターの規格からはみ出したあいつであれば、それぐらいのことをやっているのではないか。

 そう思えてならなかった。

 俺が黙って歩いていると、前で歩くシェリーさんが丘の上で立ち止まった。

「あれ~珍し~」

 シェリーさんに追いつくと、俺の視界にポップアップウインドウが開く。

【遭遇クエスト:遺された秘剣を手に入れよ】

「珍しいですね。別の浮島に移動したわけじゃないのに。バグかな?」

「試しにやってみる?」

「もちろん」

 いたずらの共犯を得たふたりは、転がるように丘を駆けていった。



「素敵な剣がもらえたわね」

「うぐっ・・・」

 酒場のNPCから報酬として受け取った剣の名前は[ダブルファング]だった。

 可変式特殊双剣――通常は双剣として片手に一本ずつ持つが、重ねることでひとつの両手剣になる。

 装備した気持ちはないこともないがジョブランクが足りないため、今の俺では装備できない。

 初期レベルの時から、ダブルファング、ダブルファング叫んでいた俺は、よっぽど欲しがっている人に見えたのだろう。

 あの遭遇クエストもそんな俺に対してGMゲームマスターからのささやかなプレゼントだったのかもしれない。

「今の俺じゃあ、ジョブランクが足りないっすから。これを装備できるようになるのはまだまだ先ですし・・・」

「えー、売っちゃうつもり?」

「そのほうが、これからのプレイに役立つんじゃないっすか?」

 シェリーさんは納得いっていない様子だ。

 この武器が装備できるようには、今のシェリーさんのレベルを超えなくてはいけない。

 このままシェリーさんとクエストをこなして行くつもりである俺にとっては無用であり、現金化して互いの装備を強化したほうが、有意義なように思えるのだが。

「ある意味、君の代名詞みたいな武器なんだから、売るなんてもったいないよ」

「でもですねぇ・・・」

「残しておこうよ。――じゃあさ、半分ずつ持つってのはどう?」

「どういうことっすか?」

「このゲーム自由度高いから、出来ないことはないはずよ。双剣だし、互いに一本ずつ持つの。所有権はあなたが持ってて。片割れの剣だからお互い装備はできないけど、ふたりだけの特殊なアクセサリとして持ち歩けばいい。クエストクリアは二人でしたんだから、あたしにだって決定する権利あるでしょ?」

 それはむしろ、めちゃくちゃ嬉しい提案だった。

 俺のアイテムを――俺達だけのアイテムを二人で共有する。

 マジで、そんな提案をシェリーさんの方からしてくれるとは思っていなかった。

 俺は何も言えず、真っ赤になって口をパクパクと開けているのがわかった。

 VRのヘッドセットがどこまでそれを再現できているのかわからないが、恐ろしく滑稽な表情をしていたことだろう。

 シェリーさんの笑顔が眩しかった。

 後光がさしているとすら感じた。

 俺の手に片方の剣を強く握らせ、両手で包み込んでくる。

 俺はその後、どのようにしてログアウトしたのかよく覚えていない・・・。

さて、フラグが立ちました。

章ごとにオムニバス形式のストリートしていくつもりなので、ドグマくんの物語はここで折り返し地点です。

察しの良い方は、このあとの展開がだいたい予想できるのではないでしょうか?

それでもできるだけ、楽しんでいただけるよう頑張りたいと思います。

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