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MMO dead World  作者: 岡田播磨
第二章 MMO ”dread” World
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1 囚人

 兄の葬儀は滞りなく終わった。

 中学の時から引きこもり始めた兄の私物は思った以上に少なく、ほぼパソコンと漫画だけだった。

 兄は何を楽しみに生きていたんだろうか。

 兄は、本当に何も残さずに逝ってしまったのだろうか。

 灰になってしまった彼に今更聞くことは出来ない。

 それにもし彼に出会ったとして私は何をどう尋ねれば良いというのだろう。

 消えてしまった人間のことをむざむざ思い返してみても何一つ生産性は上がらない。

 彼には――私の大好きだったお兄ちゃんには、思い出の中だけでいつまでも輝いていて欲しい。

 そう願っていた。

 あの事実を知るまでは・・・。



よしちゃん、もう学校へ行くの・・・?」

 玄関で靴を履いていると、後ろから母が声をかけてきた。

 まだ声に張りがない。

 兄の死がいまだ母には強いショックを残しているようだ。

 無理もない。

 私と兄を女手ひとつでここまで育ててきてくれたのだ。

 母にとって私は最後の望み。

 これ以上母を苦しめることは出来ない。

 私もまだ完全に立ち直っているとは言い難かったが、それでも私は立ち上がり、精一杯の笑顔で母に向き直った。

「うん。行ってくるよ。授業もあるし。いつまでも休んでいられないから」

「でも・・・」

「大丈夫だよ! 私は心配ないから」

 未だ硬い表情をしている母。

 小さな体は更に小さく見え、震えているようにも見えた。

 プルルッと、不意にリビングの方から電話がなった。

 こんな早い時間から電話をかけてくる相手は一人しかいない。

 恐らく、今母と付き合っている彼からだろう。

「電話だよ、お母さん。きっと横峯さんからじゃない?」

 ヨコミネという名前を聞いて、母の顔が少し明るくなったように見えた。

「そうかしら?」

「きっとそうだよ、早く出て上げて。それじゃあ、私行くから」

 躊躇ちゅうちょする母を残し、私は玄関を足早に出ていった。

 今の母を支えられるのはきっと私ではない。

 そう感じたから。

 


 私が通う中学校では、すでに二学期が始まっている。

 開始早々、兄の死の知らせが入ったため、私は急な法事で数日間学校に行く事ができなかった。

 私は授業の遅れを取り戻すため、早く学校に復帰したかった。

 クラスのみんなには「大丈夫?」と心配されたけど、私には授業のほうが大事だった。

 何かに打ち込んでいた方が気分が紛れてよかったのだ。

「芳ちゃん、無理してるだろ?」

 そんな私を見透かすように、クラスのひとりの男子が声をかけてきた。

「そんなことないよ。へぇ~、熊谷くんも私のこと心配してくれるんだぁ」

 熊谷春樹。

 うちのクラスの中でも少し変わった男の子だ。

 中二病を公言し、クラスのボケ役を買って出る。

 クラスでは人気者だが、少々暴走することも多く、浮いている時もあった。

 あまり周りが見えていない子だと思っていた。

 夏休み中になにか変化があったのだろうか。

 少しずつではあるけど、周りとの人間関係を大事にするようになった。

 私なんかに声をかけるのも、そのいい例だと思う。

「そりゃあ、わかるよ。大切な人がいなくなったら、誰だって辛い。俺にだってそういう経験あるし」

「へぇ~いがーい。熊谷くんも結構まともなこと言うんだ」

「んだよ、それ。人がせっかく心配して上げてんのに。あ~あ、心配して損した」

 熊谷くんは手を頭の後ろで組んで、伸びをするようなポーズを取った。

 不思議と彼はそのまま立ち去らず、私の前で考え事するように首を傾げた。

「芳ちゃんの兄ちゃんて・・・確か結構なゲーマーだったんだよな?」

「えっ・・・うん。まあ、ね・・・」

 兄のことを話題に出され、さすがに私もドッキリとした。

 普段通りに振舞っているけど、兄の話題を振られては少し動揺してしまう。

「よく知ってるじゃん」

「まあな・・・前にちらっと耳にしたんだよ」

「で、それがどうかしたの?」

「うん、まあ・・・その・・・」

 話を振っておきながら、熊谷くんの言葉は歯切れが悪かった。

 少し目線を泳がせたあと、熊谷くんはおずおずと話し始めた。



 兄の遺品の中に確かにあった。

 <D-world>。

 彼が最後にログインしてから、幸いまだ一週間立っていない。

 ギリギリの更新に間に合った彼は、まだその世界に生きていることになる。

 熊谷くんの話では、同じ本体からでは自分のクローンに会うことは出来ないのだという。

 いま、この状態の彼に会うには、もうひとつ高価なヘッドセットが必要だ。

 かなり痛い出費になる。

 中学生の話を母は信用し、こんな高級な物を買うことを許してくれるだろうか?

 いや、お金の問題ではない。

 今の状態の母が、そんな夢物語のような話を聞かされ、正気を保っていけるだろうか?

 これは私だけで解決すべき問題だ。

 お金をなんとかして作り、彼に会わなくては。

 母のためだと言えば、横峯さんからもお金を借りれるかもしれない。

 クローンという存在がどれほどまで個人をコピーしているのかわからない。

 それでも会って話さなければならない。

 彼が死んだ理由を、彼が死んだ真相を。

「囚われ人には気をつけた方がいい」

 熊谷くんの言う囚われ人とはいったい何なのだろう?

 気をつけろと言われても、もう遅い。

 私たちはすでに、兄という存在に囚われているのだから・・・。

有難いことに同時に書いている作品に多くのユーザー様が来ていただける様になったため、こちらに関してはむしろ自由に書かせていただこうと思います。そのためファンタジックなVRMMO作品を好きな方には、物足りない、または期待外れな作品になっていくかもしれません(始めっからファンタジー要素がかなり足りないですが・・・)。自分のモチベーションを保つための苦肉の策であるため、ご理解のほどよろしくお願い致します。

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