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MMO dead World  作者: 岡田播磨
第一章 MMO ”dogma”  World
1/12

1 起動

ドラゴンズドグマのポーンシステムや、ドラクエ10のルイーダの酒場のようなオンラインプレイ補助システムをVRMMOで実現させたらどのようになるかをシミュレートする感じで考えてみました。結果、少しダークな感じになりそうです。それでもよろしければ、御一読いただけると幸いです。

 ログインしないと一週間でデータが削除されるなんて随分乱暴な設定だ。

 使用料を払わなかったとしても1ヶ月ぐらいはデータ保存しておくのが普通じゃないのか?

 『継続的に利用されているクローンは維持されます』っていう注意書きも、レベルの低いキャラはそんな利用されることもないだろうし、廃人のクローンじゃなきゃ意味ない気がする。

 完全な人格コピーを売りにしているゲームだけあって、ユーザーデータの容量がでかいのはわかる。

 んでも、少しはライトユーザーや金のない学生のことをもう少し考えてもらいたいもんだ。

 俺は、専用のヘッドセットを冠りながら、ブツブツともんくを垂れていた。


 MMORPG〈D-world〉。

 VRを持ちいた体感型MMORPGだ。

 無料のMMORPGが乱立し、ユーザー数が頭打ちとなっている現在のゲーム市場で、有料でありながら着実にユーザー数を増やしている稀有なゲームだ。

 人格をコピーするという大胆なゲームシステムを打ち上げ、様々な団体から良からぬ噂をたくさん流されたが、今も継続運営中だ。

 年代設定はされていないが、中世ヨーロッパを思わせる舞台作りのファンタジー色強いゲームである。

 剣と魔法の世界という何ら目新しい要素のない世界観でありながらユーザーが離れないのは、クローンと呼ばれる人工知能の有能さが理由に上がる。

 実際にプレイしたことのない俺にはさっぱりわからないが、クローンの性能について学者までもが本を出しているとか。

 中学生の俺にはとりあえず愉しめればいい、重要なのはその一点だけだった。 


 ゲーム開始前の初期注意事項は、永遠と長い。

 VRMMOが珍しくなくなった現代で、いちいち項目ごとに別ウィンドウが開いて注意を促されるの非常にうざかった。

 注意事項をどんどんと飛ばして行き、やっとキャクターウイザードが現れた。

『MMORPG〈D-world〉へ、ようこそ。私は、案内役を務めますドミニオンと申します。以後、お見知りおきを』

 翼の生えた黒猫が、画面端で丁寧におじぎをする。

『はじめにキャラクターエディットを行います。この世界でのあなた=化身アバターを決めてください』

 俺のアバターがすでに画面上に表示されていた。

 事前にベンチマークを兼ねたキャラエディソフトで俺はキャラを完成させていた。

 細身でイケメン、銀髪で片目が少し隠れている俺のアバターは、存分に俺自身の厨二心を満足させてくれる出来だった。

 身長は、実際の体型と変えすぎると操作しにくくなるので、あまり変えることが出来なかったが、それでもかっこ良くできていると自信を持って言える。

「ふっ・・・俺はこのキャラでいくぜ」

『音声認証が確認できませんでした。画面操作により決定いただくか、[はい]か[いいえ]を含む文章でお応えください』

「えっ? あ、はい。このままでお願いします・・・」

 空気の読めない黒猫が、俺のアバターを引っ張っていき画面を切り替える。

 新たに黒猫が引っ張ってきたキャラクターは先ほどのアバターがベースにあるものの、心なしかリアルの俺に似ていた。

『クローンを作成します。クローンを作成するとゲームを有利に進めることができます。クローンを作成してもよろしいですか?』

 あれ、こいつのキャラエディはないのか?

 疑問を感じながらも、俺はゲームを有利にできるのならと了解する。

 今度は「はい」と素直に答えた。

 すると突然、目の前のディスプレイから色とりどりの波紋が飛び出してきた。

「おはぁ!」

 驚いて体をのけぞらせると――ビビィーと不快な警告音が俺の耳をつんざく。

『エラーが発生しました。もう一度やり直してください』

 のけぞった瞬間、ヘッドセットが少し浮いた。

 この専用のヘッドセットは従兄弟いとこのお下がりだから、バンドがすこしゆるいのだ。

 画面に従いもう一度コピーをやり直す。

 またあの不快な波紋がディスプレイ全体を覆う。

 気持ち悪くなってきて、すこし体を揺らすとビビィーとまた警告音。

 もう一度やり直すがまた同じようなところでビビィー。

 ビビィー――――――――――――――

 ――――――――ビビィー――――――

 ―――――――――――――――ビビィー

 だんだんと酔ってくる。

 げんなりしてきて、ほんとにこれでゲームをやらせる気あるのかと疑問に思ってくる。


 このゲームは非常に高価だ。

 ヘッドセットの規格が統一化に向かっている今の流れに逆らい、このゲームは専用のヘッドセットを必要としている。

 俺だって従兄弟からお下がりを貰わなかったら、やらなかったと思う。

 もう、やる訳にはいかないから――と年上の従兄弟から俺は譲り受けた。

 大学受験を控えているからそいつは、もうやれないと言っていた。

 中学生の俺に10万を超えるこのヘッドセットをプレゼントしたのだ。

 正月だからといって正直デカすぎるお年玉だと思った。

 もらった当初親も返すべきじゃないかと話していたが、従兄弟は自分の金で買ったものだからの一点張りで、結局向こうの両親も納得していたので貰い受けた。

 せっかく貰ったのに普通のVRMMOをやるのもなんなので、中二の夏、俺は初めて〈D-World〉をプレイすることにした。

 まさか、こんなに面倒なゲームだとは知らなかったが・・・。


 くっそー、こうなったらヤケだ。

 ヘッドセットを付け直し、ぐっとこらえてディスプレイを注視する。

 頭の中をかき混ぜられるような感覚に襲われながら、俺は一生懸命耐えた。

 耐え続けた。

 次第に波紋はひとつの色に集約していき、混ざり合って形を成していく。

 先ほどの俺のクローンの黒色バージョンになったと思うと、頭っからドロドロと溶けていき、水たまりになる。

 そして、水たまりからあの黒猫が飛び出してきた。

『コピーが完了しました。ゲームを開始します。楽な姿勢をとり、ディスプレイに注視してください』

 ついに始まる。

 俺の人生初のVRMMO体験。

『あなたを示すアバター、あなたの相棒であるバディ、そしてもうひとつのあなたであるクローン、この世界の名は、〈D-world〉。是非、あなただけの(****)を見つけてください』

 画面が歪み、俺は倒れるように〈D-world〉に落ちていった。

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