118話
試合で壊れてしまった靴を買ったり、壊れてしまったサイディッシュを宿に置いてくるなどして時間は過ぎ、夕方になった。そして俺たちは学院近くの食堂にいる。
そこは魔法科の学生たちによって貸切となっていた。
「ハハハ! この俺にたてついたことを後悔するが良いわ!」
「くそう!」「くやしいのぅ、くやしいのぅ!」「この恨みはらさでおくべきか!」
俺は椅子に悠々と座り、一気にボトルのジュースを煽る。その周りでは、魔法科のノリの良い男子たちが、四つん這いになって地面を叩いていた。
「今日はお前らの奢りだ。パーッとやるぞ!」
「事実だけど、なんか違う! その言葉はそのタイミングで使うもんじゃない!」
「知ったことか! 俺が勝者、貴様らが敗者じゃ!」
そんな風にごく一部で激しく盛り上がる中、落ち着いた集団ももちろんある。
俺が呼んだメンバー、フィーナの友達のシホとチーナ、フランの友達のカミナとその両親である。
彼女たちは1つのテーブルを独占して、テーブルの料理をつまみながら自由におしゃべりしている。自己紹介でもしているのだろう。ちなみに俺とフィーナがカミナの両親と会った時は、なんとも保護者会な風景が繰り広げられた。
「それにしてもフィーナさんの彼氏凄かったわね」
「まったくよね。まさか常闇のルリ-を倒しちゃうなんて」
「当然ですよ。トーカですから」
「ぱぱは強い」
シホとチーナの言葉に、フィーナがフンと胸を張り、フランがこくこくと頷く。それを見ながら、カミナと両親が笑いあう穏やかな空間が出来上がっていた。
と、そこに魔法科の生徒たちがシホやチーナに声をかけて来る。フィーナは元々トーカが自分の彼氏だと言っており、その姿も魔法科の生徒たちは見ている為、特に軟派まがいの事をされることは無いが、シホやチーナは別だ。さすがに親の前でカミナに声を掛ける勇者もいない。
「ねぇ。君たちどこの科の子?」
「私たちは家庭技能科よ。フィーナさんと同じ体験入学」
「へー、じゃあ別の国から?」
「そう。デイゴから来ているの」
シホやチーナも、男子生徒たちに気前よく答えていく。当初の目的が家庭技能の習得といい男を見つけることだっただけに、魔法科の生徒たちはシホとチーナには恰好の的なのだ。
にこやかに話すシホとチーナを見ながら、フィーナはカミナの両親と話す。内容はやはりと言うか子育てのことだ。
「カミナはいつも畑仕事を手伝ってくれましてね。小さな家庭菜園なんですけど、そこの水やりをしてくれるんです」
「良いですね、家庭菜園。私も家に戻ったらやってみたいです。なにかアドバイスとかありますか? 家はユズリハにあるんですけど」
「ユズリハなら気候的には特徴のある作物以外は大丈夫そうね。初めてやるなら育てやすいティミリアなんかいいと思うわ。食べごろも実が真っ赤になるから分かりやすいの」
カミナの母は、少し考えた後、ティミリアという野菜を進めてきた。この野菜は、育てるのが非常に簡単で、初心者が良く試に育てることが多いのだ。手入れも簡単なため、庭に土のある家だと植えている所も多い。
「そうなんですか。私もフランちゃんと育ててみたいですね」
フィーナは、フランと一緒に水をやる風景を思い浮かべニコニコとする。
「カミナなんて野菜の幹が身長を超えたなんて言って大はしゃぎするのよ。子供の成長も分かるから、やっていて楽しいわ」
「うらやましいです。小さな鉢植えなら移動しながらでも大丈夫でしょうかね?」
話を聞いているうちに、我慢できなくなったフィーナは、鉢植えで育てられそうな植物も聞いてみることにした。
その問いに、カミナの母はノータイムで答える。
「鉢植えならもちろんルスールよ。ハーブだから食べることは出来ないけど、お料理の上に載せておくだけで、これは私が育てたのよって自慢できるの。いろんなお肉でもお魚でも合うハーブだから、用途は沢山あるし、葉っぱを摘んでもすぐに生えて来るから枯れる心配も無いわ」
「ありがとうございます。さっそく明日探してみますね」
穏やかに会話が進む中、カミナの父が1人置いてきぼりにされ、外でタバコをふかしていたのは、誰にも気づかれなかった。
「漆トーカ! 来てあげたわよ!」
「お邪魔します」
その2人がパーティーに参加したのは、パーティーの開始から1時間ほどした時だった。
店の扉を蹴破りそうな勢いで入って来た頭に包帯を巻いたピンク色の少女と、少女の行動に一片の動揺も無く優雅にお辞儀をするカラン騎士。その組み合わせに店内は騒然とする。
「おう、来たか。こっちだ」
「この私が来てあげたことに感謝することね! そして私を奢れることに感動の涙を流すと良いわ!」
「今日は招待していただきありがとうございます」
ルリーはいつもの馬鹿なルリーだった。
会場となった食堂の隅々で、あいつ誰だと言う声が上がる。さすがに、今の状態のルリーを常闇のルリ-と気付く強者はいないらしい。
「とりあえず駆けつけ1杯だ。2人とも酒は行けるよな?」
「任せなさい! この私に不可能はないのよ!」
「それが礼儀ですね。というより、そうしないとこの子のノリに付いて行けそうにありません」
2人は俺から渡されたジョッキを一気に煽る。
その中には、さほどアルコールの強くないお酒。現代で言うところのビールのような物だ。ちなみに製法は俺は知らない。
「ぷはっ! これよ、これ! これの為に仕事してるってもんだわ」
先に飲み干したのはルリーだ。ジョッキを机に叩きつけるように置き、お代わりを要求する。
「ふぅ……疲れが吹き飛びますね」
静かに、だがしっかりと一気飲みしたミラノは、落ち着いた表情で息を吐いた。
「ほら、トーカも飲みなさい!」
「良いだろう。俺の飲みっぷりに恐れ慄くがいい!」
以前も言ったが、この世界に禁酒年齢は存在しない。子供のころから飲み始めることも可能だし、ずっと飲まないという選択肢も可能だ。
俺の場合は、フィーナやリリウムが飲まなかったので、何となく飲んでいなかったのだが、勧められた以上飲まなければなるまい!
店員が新たに持ってきた酒のなみなみと注がれたジョッキを持ち上げ、俺は一気に煽る。
ゴクゴクと喉を通る炭酸と、アルコール独特の風味が、俺の体を刺激する。
そしてジョッキの中を全て空にしたところで、ルリー同様ガツンとジョッキをテーブルに置く。
「ドヤッ!」
「良いじゃない! 私も負けてられないわね!」
「なんか知らんが、俺も飲むぞ!」
ルリーが再びジョッキを煽ったところで、突然現れたルリーたちを警戒していた生徒たちから声が上がる。ルリーのノリの良さに乗せられたようだ。
「お酒なら私を忘れてもらっちゃ困るわ」
そこに1人の魔法科女子生徒が名乗りを上げた。
「出た、酒豪のヒメリア! 酒屋の娘にして、赤ん坊の時から酒を飲み、もはや水と酒の区別がつかなくなったと言われるその肝臓は、普通では考えられないほど鍛え上げられているとか! 去年の忘年会で、樽から酒を飲み、見事一気で飲み干したと言われるその実力、今日はとくと見せてもらうぞ!」
「A+冒険者だろうと、私の2つ名には誰も勝てないのよ!」
自信満々のヒメリア。しかしそこに待ったをかける生徒が現れた。
「その称号も今日までだ! 今日こそこの俺、ヤケ酒のドーマが魔法科最強の酒飲みの称号をいただく!」
「ヤケ酒のドーマが出たぞ! あいつは彼女に振られる度に酒を飲んでいるうちに、無駄に酒が強くなった経歴を持つ、悲恋の男だ! その量は振られる度に増え、最近では1回振られるごとに、店の酒が無くなると言う噂も聞く! 一体どこからそれだけの金が出てきているのか不明なのがこの男のミステリアスなところだ! ちなみに、クラス内モテランキングは堂々の最下位!」
ルリーの飲みっぷりを見た俺が影響されて、さらにジョッキを煽る。
ルリーもそれに負けじと、ジョッキを煽り、それに影響されたクラスメイト達が次々に酒を飲みこんでいく。
いつの間にかそこは、耐久レースの様相が出来上がっていた。
ルリーたちの到着から2時間後、パーティーの開始から3時間経過したところで、フランとカミナに限界が来た。と言っても、酒による限界ではなく、子供の体力的な限界だ。
さすがにずっと騒がしい中にいて、唯一の子供と言うことで女子生徒たちから盛大に可愛がられた2人は、心身共に限界に達していた。
部屋の隅で2人寄り添うように眠る姿を見て、フィーナとカミナの母はクスリと笑い頷き合う。
カミナの母はそのままカミナの元へ、そしてフィーナは一端トーカの元へと向かう。
そこで見た光景は、まさしく地獄絵図だった。
ぐったりと口元から酒をこぼして地面に横たわる生徒たち、その中には、ルリーとトーカの姿もある。
そして、その中でただ1人、ミラノが席に座って淡々とピッチャーを煽っていた。
「あの……ミラノさん? これはどう言った状況なのでしょう?」
トーカ達の動向を気にしていなかったフィーナは、いったい何があったのか理解できずに唯一起きているミラノに尋ねる。しかしそれは失敗だった。
「おや、フィーナはんではふぁいですか。ご一緒にどうでふか?」
若干おぼつかない言語は、日常とまったく変わらぬ表情のミラノから発せられる。
しかしよく見ればうっすらと頬が赤くなっていた。
そして漂ってきた息の臭いで、フィーナはこの場がどういう状況になっているのかを悟る。
そしてすぐさま逃げることを選択した。
「いえ、私はフランちゃんを寝かせてあげないといけないので、宿に戻ります」
「おふぁ、もうそんな時間ですか」
ミラノは、驚く動作をしながら外を伺う。
学院の近くと言うこともあって、外はすでに人気が殆どなくなっていた。
「トーカが起きたら宿に戻るように伝えてくれますか?」
「おまかふぇください。カラン騎士の名誉に賭けてその依頼を遂行いたしまふぉう」
どこまで信じられるか分からないが、とりあえずミラノにこの場の事を頼み、フィーナはフランを抱き上げてそそくさと食堂を出る。そこにはカミナの母がカミナを抱いたまま待っていた。
「お待たせしました」
「いえいえ、大変そうですね」
若干苦笑するカミナの母。フィーナもそれにつられて苦笑する。
「まあ、たまにはいいかもしれませんがね。毎日やられると怒りますけど」
「それぐらいが良いですよ。女は家で男の帰りを待つものですもの」
そう言うカミナの母だが、カミナの父は途中で退場し、すでに家に帰っていた。
「フィーナさんは、明日からどうするご予定で?」
「トーカの体調にもよりますが、この島からは離れる予定です。たぶん冒険者ギルド本部のあるピクティムに行くかと」
トーカが依頼を受けると言っていたことを思い出しながらそう告げる。
七島の第6島ピクティムは特に特徴の無い商業島だ。その代りに、カラン冒険者ギルドの本部が設置されている島でもある。
その為比較的に冒険者が多く、交通の便も他の町より良い。と、言うより自由船が他の島より多いのだ。
もちろん自分の船を持たない冒険者目当てだ。
「そうですか。ではカミナとフランちゃんはここでお別れになってしまいますね」
「ちょっと残念ですけど、元々私たちは体験入学だけですからね。他の子は来年から学院に通うことになると思いますけど」
フランの入った体験入学は、来年から学院に通う子たちが集まる場所だった。そのため普通ならば来年また再会することが出来るのだが、トーカもフィーナも冒険者であり、カランの住人では無い。
その為、来年からの学校に行くことは無いのだ。
「そうだ、住所を教えてください。私も実家の住所をお伝えしますので」
会えなくとも、手紙のやり取りは出来る。それはこの世界でも同じだ。そこでフィーナは、フランとカミナに文通をさせることを思いついた。
冒険者であるフィーナ達だが、実家からギルドを通して手紙の内容を聞くことは可能だ。これならば、どこにいてもフランとカミナは文通を行うことが出来る。
その意見に、カミナの母もすぐに賛同した。
「それは良いですね。字の勉強にもなりそうですし」
そしてお互いの住所を交換する。
「ではまたいずれどこかで」
「はい、お元気で」
2人は、それぞれの子供を抱きかかえながら、それぞれの家に戻って行った。
頭痛で目を覚ます。
まず自分がどういった体勢なのかが分からなかった。
「んぁ……」
ボーっとしながら、目を開ければそこには人の顔。俺はその顔に見覚えがある。昨日学院の校庭で戦ったルリーだ。
あの時は真っ黒だった髪は、今は以前の銀色に戻っており、化粧もしていない様子で少し子供っぽさがうかがえる。
「ふふ……この私がルリー様なのうぇ……」
俺の目の前で眠るルリーは、酒の臭いを漂わせながら、寝言を言ってえずく。
「おわ!? あぶねぇ……」
とっさに体を起こし、ルリーから逆流してきた液体の回避に成功する。しかし突然動いたせいか、酷い頭痛がした。
そこで、昨日のことをようやく思い出してくる。
これが二日酔いと言うやつなのだろう。酒を飲んだことが無かったので分からなかったが、地味に辛いな。
「起きたか坊主」
カウンターから食堂の主人が声を掛けてきた。その声は呆れがふんだんに混ざっている。
「おう、なんとかな」
「ほれ、水飲め」
カウンターから出てきた主人に水を貰い、俺はグラスの水を一気に飲み干す。それでやっと意識がしっかりしてきた。
そして俺の周りを見渡せば、屍のように眠るクラスメイト達。どこからともなく酸っぱい匂いがしているのは、吐いている連中が何人かいたからだろう。
「ずいぶん立ち直りが早いな。もうちょっとぶっ倒れてるかと思ったんだが」
「今何時だ?」
「朝5時だ。お前らのどんちゃん騒ぎのおかげで、今日は休業だよ」
「悪いな」
「いいさ、その分しっかり代金はもらってある」
払うのが俺じゃなくて本当によかった。
「フィーナってお嬢ちゃんから言づてだ。娘と宿に戻ってるから、起きたら戻ってこいだとさ。朝帰りだな」
「この年で朝帰りを経験するとは思わなかったわ」
店の外を見れば、空が白み始めている。宿に戻るころにはしっかり明るくなっちまってるだろうな。
けどその前にやらなきゃならないことがある。
「こいつら起こさないとな」
「頼むぞ。俺はお前らが飲んで食った分を調べて、発注しないといかんからな」
今日休業にしても痛くないほど飲んで食ったのだ。その量はハンパじゃない。その内訳は主に酒だろうけどな。
結局昨日の勝負は、俺とルリーがほぼ同時にぶっ倒れたんだっけ? それまでに何人もぶっ倒れてたけど、俺も酔って変なテンションになってたからよく分からん。
まあ物に当たってぶっ壊さなかっただけマシか。
「とりあえず誰から起こすか」
死屍累々となっている食堂を眺めながら、誰から起こすか考える。真面目に一番手伝えそうな奴から起こさないと面倒見るのが大変そうだしな。
そう考えると、やっぱりミラノかね? 俺達がぶっ倒れるまで顔色一つ変えずに飲み続けてたし。
そのミラノを探せば、テーブルに自分の腕を枕にして眠っていた。
「ミラノ、朝だ。起きろ」
肩をゆすると、ミラノはすぐに目を覚ました。
「おはようございます」
「おう、おはよう。大丈夫か?」
「問題ありません。私は普通です」
言葉ではそう言っているが、正直大丈夫そうには見えなかった。なんせミラノは、目を開けただけで、それ以外を全く動かさないのだ。いつものミラノなら体ぐらいすぐに起こすだろうし、これはもしかして酔いが残ってるのか?
「とりあえず水飲め」
俺は主人からもらっていた水の入った大量のグラスの1つをミラノに差し出す。するとようやくミラノがゆっくりと体を起こした。
「ありがとうございます。トーカ様はなんともないんですね。倒れるまで飲んでおられましたが」
「いや、大分頭痛い。完璧な二日酔いにはなってる」
「そうでしたか。では私と同じようですね。動くだけで頭がずきずきします。と、いうより自分の脈が打つたびに頭が痛みます」
「だから動かなかったわけか」
それにミラノは小さくうなずいて水を飲み干す。
「ふぅ。もうしばらくはじっとしていたいところですが、これをどうにかしないといけませんね」
ミラノの視線の先には、ぶっ倒れたままのルリーの姿。口から出ている謎の白い液体のせいで顔も髪もひどく汚れているが、それは見ないことにしておいた。
「できれば他の生徒を起こすのも手伝ってほしいんだけど」
「それはもちろんお手伝いします。ただ先にこの子をどかさないと、後が面倒になりそうなので。迎えを呼びますので、少々待っていてください」
「なるほどね」
確かに二日酔い状態でルリーの相手とか面倒くさそうだ。ただでさえ大声が頭に響くのに、ルリーの声なんか聴いた日には死ぬかもしれん。
ミラノは立ち上がると、宿を出て行く。おそらく近くの騎士団詰所にでも行くのだろう。俺はその間にもう少し使えそうな人間を起こすことにした。
他の生徒を起こして、協力してもらいクラスメイトを家へと帰宅させていく。
そしてしばらくしてミラノが戻ってくる。そこには知らない騎士も付いてきた。
騎士はすぐにルリーの存在に気付くと、首をやや横に振って呆れた動作をしながら寝ているルリーを持ち上げる。
その動作は完璧に荷物を肩に担ぐ動作だった。
そして荷物同然に担がれたルリーは、腹を圧迫されえずく。
「おわっ!? 汚ねぇ! この野郎!」
「当たり前でしょう。食べて飲んで倒れた人を担ぎ上げるとか、あなたは馬鹿ですか」
鎧の背中に吐しゃ物を掛けられた騎士は、声を上げるがミラノが呆れながら言う。
ミラノの言葉に、ぐうの音も出ない騎士は、仕方がなくルリーを担いだまま宿を出て行った。
「これで面倒は片付きました。後は一気にやってしまいましょう」
「おう」
そしてミラノを加えた数名で、倒れている生徒を起こしていった。
最後の生徒を起こした時には、日が完全に上ってしまっていた。
「では私も帰ります」
「おう、またどっかで会おうぜ」
「はい、敵にならないと良いですが」
「そうそう俺も暴れないから敵にはならないだろ。試合とかなら別だけどな。国の敵になるつもりはねぇよ」
「それは安心です。試合とは言えルリーが負けていますからね。この国としてはトーカ様は危険人物になってしまいましたから」
「マジで!?」
今なんか嫌な言葉を聞いたぞ。俺が危険人物?
「当然です。我が国の最高戦力を撃破したのですから、国として警戒するのは当然のことです。ただ明確に敵対することは無いでしょうが、もしかしたら監視程度が付く可能性はご了承いただきたく思います」
「あー、まあそれぐらいなら」
ユズリハとかデイゴでも、微妙に監視みたいな視線はあったからな。ユズリハの時はミルファと一緒に行動してたこともあって、当然と思ってたんだけど、デイゴでも監視が付いたときは、俺自身が監視させてるみたいだったし。まあ、それだけのことをやってたし、仕方がないって言えば仕方がないよな。邪神級ぶっとばした後だったし。
ただ今回のはひどくねぇか? 俺完全に巻き込まれただけじゃん。なのに監視付くとか……
俺が微妙に落ち込んでいると、ミラノがポケットから何かを取り出してこちらに出してきた。
「何かあればこれを騎士に見せてください。そうすれば私に連絡が来るようになっています。多少大事にはなってしまいますが、悪い方向には行きませんので」
俺が受け取ったのは、カランの国の紋章と、別にもう1つ紋章が掛かれた鉄の板。大きさは手の平にすっぽりと収まる程度のサイズだ。
「良いのか?」
「ええ、トーカ様ならある程度は信用できると判断できます。素の状態のルリーにあれだけ付き合っていただきましたから、せめてものお礼です。後程トーカ様の口座には試合料金が振り込まれると思いますが、それとは別の、私個人からのお礼です」
「そっか。ならありがたく受け取っとく」
貰ったプレートを俺は自分のポケットに突っ込んだ。
「では私はこれで失礼します」
「おう、ルリーにもよろしく言っといてくれ」
「はい」
そうしてミラノが去り、俺も宿へと戻った。
もちろん、朝帰りでフィーナとフランにしっかりと怒られたのは言うまでもない。




