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異世界は赤い星と共に  作者: 凜乃 初
カラン合島国・学院編
118/151

117話

 勢いよくミラノの腕が振り下ろされる。その瞬間、俺はサイディッシュに全力で魔力を流し込み、ルリーに向かって駆け出した。

 俺の予想では、ルリーは後ろに下がりながら毒魔法を発動させると踏んでいた。そのため距離を離されないように前に出たのだ。

 だが、予想は完全に違っていた。

 ルリーも俺と同様、前に飛び出してきたのだ。

 そして短剣を俺に振り下ろしてくる。予想がハズレ、完全にサイディッシュを振るうタイミングを失った俺は、それをサイディッシュの柄で受け止める。


「まさか飛び出してくるとはな」

「驚きましたか? でもまだまだ驚いてもらいますよ!」


 ルリーがグッと手に力を込める。それに対して俺も力を加え弾き返そうと試みた。しかし、思ったようにルリーが引かない。普通ならば俺が確実に弾き返せるだけの力を出しているはずなのに、短剣でしっかりと押さえて来るのだ。


「これは……」


 俺が引き離せないことに、ルリーが笑みを深め、そして詠唱を開始した。


「星の加護にて、停滞の霧を撒け。パラライズミスト!」

「月示せ、激甚の嵐。テンペストストリーム!」


 ルリーの魔法と俺の魔法が同時に発動する。とたん、ルリーの周りから大量の霧が吹きだし、俺の嵐によって校庭の端まで一気に弾き飛ばされていく。


「麻痺毒か。けど効かないぜ」

「やはり魔法の応用力も威力も非常に強いですね。普通の毒使いなら歯が立たないでしょう――ですが!」


 霧を吹き飛ばした嵐が、ルリーに襲いかかろうとした時、ルリーは俺とのつばぜり合いを止め、すぐさま後方に飛び退いた。

 俺もそれを追撃しようと思ったが、目の前に飛来したナイフに意識を取られて失敗する。

 そのナイフは間一髪で避けたものの、髪の毛の数本を持って行かれた。


「チッ、ナイフも使うのか」

「飛び武器は毒だけとは限りませんよ。それに――星の加護にて、減退の刃を生め、ポイズンナイフ」

「毒製のナイフか」


 ルリーの手元に生み出されたのは、紫色をした食器用ナイフ。見た目から非常に毒々しく、それに斬られれば確実に毒が体に回るだろう。

 しかし、当たらなければどうということは無い!

 ルリーが様子見で投げてきた毒のナイフを、首を横に傾げることで簡単に避ける。すると、気付いたときにはルリーの手元のナイフが4本に増えていた。

 指の間に1本ずつ挟み込み、まるで爪のようになっている。


「霧の範囲魔法もダメ、投げ武器も簡単に躱される。そうなると普通毒属性の人たちは苦戦を強いられます。得意な毒が通用しないから当然ですよね」

「だな。図書館の本にもそう書いてあった」

「でも、A+はその程度では収まりません。それをこれからお見せしましょう。おしゃべりができる戦いはここまでです」

「そうだな。んじゃ派手に行こうか。月示せ、炎華の胎動。エクスプロージョン!」


 俺が再開とばかりに炎弾を放つ。ルリーはそれをステップであっさり躱すと、俺に向かって走ってきた。普通は躱せる速度じゃないんだけどな。

 ルリーの身体能力の高さに若干呆れながら、近づいてくるルリーに対して構えを取る。

 接近戦を仕掛けてくるつもりなのだろう。けど、エクスプロージョンは躱しただけじゃ意味が無い。エクスプロージョンは爆発するのだ。

 ドンッと激しい音がして、エクスプロージョンが結界に直撃する。それと同時に激しい爆発が起き、衝撃波がルリーの背後から襲いかかった。

 ルリーはその衝撃を、体で受け止める。しかしただ受け止めるだけではない。衝撃に体を預けて、俺に向かって来る速度を上げた。衝撃の威力が激しすぎるせいで、足を中に浮かせるだけで、飛ばされるのだ。

 飛来したルリーを、俺はサイディッシュの斧側で迎え撃つ。


「星の加護よ、腐敗の刃を生み出せ。ポイズンソード!」


 ルリーが手に持っていた四本の毒のナイフが集まり、新たに長剣を作り出した。そしてサイディッシュに向かって振り下ろす。

 ガチンッと毒で出来た刃とは思えないほど重い音がして、サイディッシュとポイズンソードがぶつかり合う。

 瞬間、サイディッシュの斧がポイズンソードの触れている部分から溶けだした。


「腐敗ってそう言うことか!」


 人間に対する毒ではなく、武器に対する毒。毒属性にはそんな使い方もあるのかよ!

 斧の一部を削り取られながら、俺はサイディッシュをポイズンソードから引き離し、今度はチェーンソー側で切りかかる。

 さすがに回転する刃には無力なのか、ルリーは剣を合わせようとせず、体術だけで躱していく。その体捌きは素晴らしいの一言に尽きた。

 俺がサイディッシュを振れば、ルリーはその軌道を正確に読み取り、最低限の動きで躱していく。足元を狙えば、1歩だけ下がり、体を狙えば柄にポイズンソードをぶつける様にして軌道を逸らそうとして来る。こちらも柄を溶かされてはたまらないため、軌道を逸らすしかない。

 最初は躊躇っていた顔への攻撃も、いつの間にか普通に繰り出してしまっていた。しかしその攻撃すら、顔を逸らすだけで簡単に躱される。

 ここで、俺は気になることが出てきた。

 ルリーの体の動きがよすぎるのだ。校舎の屋上から校庭まで走って来ただけで息を切らせていた人物と同一とは思えないほどに。

 それに恐怖心が無いのかと思うほど、サイディッシュの回転し、火花散る刃を紙一重で躱してくる。

 普通の感覚ならば、刃から散る火花に恐怖して、そんな危険な躱し方は出来るはずがない。

 その疑問を持ちながらも、サイディッシュを振りラッシュを続ける。

 さすがのルリーも、反撃する暇が無いようで、回避に専念していた。しかし、小さな声で反撃のための詠唱もしている。

 俺はその声が聞こえるたびに、顔を狙って詠唱を中断させていたが、ついに完成させてしまった。


「星の加護よ、加速の毒を私に注げ。スピーダー」


 詠唱の完了と同時に、ルリーの速度が1段階早くなる。そして簡単にサイディッシュのラッシュの間合いから逃げ切られてしまった。

 しかしこちらも分かったことがある。ルリーの体力や、体術の理由だ。


「自分の体に毒入れてんのか」

「フフ、気付きましたか? この性格も、この髪の色も、この体も、思考速度も、全て私は自分の毒を使って強化しています。おかげさまで、素の私だとカランの皆さんは私だと気づきませんからね。自由に動かせていただけていますよ」

「あのバカっ子が薬でここまで変わるもんなのかよ!」


 完璧薬中じゃねぇか!

 そう考えながら俺はサイディッシュで再び切り込む。今度はルリーもポイズンソードで対抗してきた。

 刃にポイズンソードがぶつかり、ビチビチと溶けだした刃が飛び散る。そんな中、俺たちは会話を続けていた。


「変わるんですよ、毒の力は凄まじいですからね!」

「そんな毒に浸かって大丈夫なのか?」

「自分の毒ですからね。他人の毒だと危ないかもしれないですが、自分の毒なら依存性もありません。もともと自分の物ですからね。星の加護よ、狂筋の毒を私に注げ。パンツァー!」

「ただのドーピングに、俺が負けっかよ!」


 さらに増したルリーの筋力を受けとめ、こちらも全力でサイディッシュを振り抜く。

 校庭は、サイディッシュとポイズンソードを振るった衝撃で、みるみるうちに窪地となり始めていた。

 最初から同じ場所でずっと切り結んでいるせいだ。

 だが、そろそろ動かせてもらう。


「月示せ、雷の軌道。ライトニングバニッシュ!」


 サイディッシュとポイズンソードが切り結ぶ直前、俺はライトニングバニッシュで高速移動を掛ける。

 俺が突然目の前から消えたために、ルリーはその場でポイズンソードを空振りしてしまう。その隙は非常に大きなものだ。

 俺は背後から、ルリーの腰目掛けて拳を振り下ろす。このタイミングなら、サイディッシュよりも早いからだ。

 しかし、ルリーはその場でとっさに前に倒れ込み、俺の拳を躱した。そして振り返りながらポイズンナイフを投げつけてくる。

 そのナイフは俺の眼前で止まった。俺が受け止めたのだ。


「さすがにそれは無いですよ……どんな反射神経してるんですか」


 魔法も無しに、毒で強化された筋肉で投げられたナイフを、指に挟んで受け止めた俺に、ルリーから呆れ混じりの声が飛ぶ。


「俺は体も普通じゃなくてね! てか雷の速度で動く俺の攻撃躱せるあんたも大概だとおもうけどな!」


 俺が拳を振り上げたタイミングは完璧だった。普通ならば絶対に躱せない。それを躱してみせたのだから、ルリーの速度も人間の限界は超えていることになる。

 掴んだナイフをルリーに投げ返せば、ルリーは倒れ込んだ状態から腕一本でバク転しそれを躱す。

 地面に刺さったナイフは、そのまま宙に溶けて消えていった。


「さて、そろそろ勝負を決めに行きましょうか」

「やっぱりそのドーピング、時間制限があるんだな」


 多少額に汗を浮かべながら言うルリーに、俺は尋ねる。


「ええ、だいたい本気で動けるのは10分と言ったところですね。大抵の魔物なら5分もかからないんですけど」

「俺だからな。そんじゃお望み通り勝負を決めるとしましょうか」


 俺は持っていたサイディッシュを後方に投げ捨て身軽にする。

 やっぱり俺が全力を出すときは、最後には素手になるのだ。まあ、元々サイディッシュも脅し用だしな。

 ルリーが再びポイズンソードを作り出し構える。今の俺は素手で、ポイズンソードを受け止められる武器は無い。

 ポイズンソードの毒も、おそらく武器腐敗から人体に影響があるものに変えられているだろう。

 当たれば俺の負け、躱して攻撃をぶち込めば俺の勝ち。なんとも分かりやすい構図じゃないか。

 来たるべき刹那の為に、ルリーの動きを見る。一挙手一投足、手の震えから、眉の動きまで、見逃すものが無いように、全神経を集中させて、ルリーを射抜く。

 そして左足のふくらはぎが僅かに膨らんだ。その瞬間、俺はルリーに向かってライトニングバニッシュを発動させた。


 光の中で、ルリーの動きを見る。ルリーは俺のタイミングに完璧に合わせてきていた。

 このまま真っ直ぐ突っ込めば、俺は確実に毒の剣の餌食になるだろう。

 だが、俺だって何も考えずにルリーに向けて突っ込んだ訳じゃない。考えがあるからこそ突っ込んだんだ。

 俺はライトニングバニッシュを発動させ、飛び出した直後から、自分の足を地面にこすり付けてブレーキをかけていた。

 普通の人間が、そんなことをすれば確実に足がもげるだろう。自動車を走らせながら、足でブレーキかけるようなものだ。無茶にもほどがある。

 けど、俺の体なら耐えられる。

 すでに靴の裏側は溶け、素足の状態で地面を削っている。しかし、その足は確実に摩擦を生み出し、俺を強引に減速させていた。

 そして振り下ろされるルリーの剣。

 その剣は俺の目の前。眉毛を軽く切って振り降ろされた。

 そしてルリーが剣を躱されたことに目を見開き、俺がその顔を見ながらニヤリと笑みを浮かべる。

 ルリーはすぐに剣を振り上げようとする。しかし、すでに俺は剣の間合いのその内側にいる。俺はルリーの腕をしっかりと押さえつけた。


「これで俺の勝ちだ!」

「ちょっと予想外すぎませんかね!?」


 背を海老反りにする俺に向かって、ルリーが声を上げる。けどもう遅い!

 俺は海老反りから一気に背を前に倒し、己の頭を凶器とし、ルリーの小さいおでこに向かって振り下ろした。

 ガツンと激しい衝撃が俺の脳を揺さぶる。

 だが、ルリーには揺さぶるレベルに収まらなかった。俺のヘッドバッドをもろにくらい、後方に吹き飛ばされる。

 その軌道には、綺麗に赤い線が出来上がっていた。

 そして土煙を巻き上げながら地面を滑り、やがて結界に当たって止まる。


「る、ルリー!?」


 あまりにも衝撃的過ぎる光景に、審判役のミラノが思わず声を上げ、倒れているルリーに駆け寄った。

 俺は、自分も激しく脳が揺さぶられているせいで、上手く歩けない。その場でじっと立っているのがやっとだった。


「ルリー大丈夫!?」


 ルリーを抱え起こし、体を揺さぶるミラノ。その問いに、何とか意識を保っていたルリーは弱い声で答える。


「無理……もう立てないし……魔法も使えません……」

「わ、分かったわ。すぐに決着報告してくるから、ちょっと待ってて!」


 ミラノはゆっくりとルリーを地面に寝かせると、その場で立ち上がり、俺に手を向ける。


「ルリーの降参宣言により、勝者トーカとする!」


 その宣言を聞いて、俺は右手を天に振り上げた。

「うわー」そんな声が観客の誰かから聞こえた気がした。




 試合を終え、俺とルリーはすぐに医療班に拉致された。と、言うより医療設備が置いてある教室に担架で乗せられて連れて行かれた。

 そして今治療を受けている。と言っても、主に治療を受けているのはルリーの方だ。

 ルリーはベッドに横になったまま頭の傷を調べられていた。

 ヘッドバッドの感触的には頭がい骨は割れてないはずだが、罅が入ってたりすると危ないしな。頭を切ったせいで、出血量も以外と多いようで、ベッドの足もとには真っ赤に染まった大量の真綿が落ちている。

 その光景を、俺は窓際に置かれた椅子に座って見ていた。


「トーカ様、お疲れ様でした」


 ミラノが持ってきた、水の入ったコップを受け取る。


「おう、なかなかいい試合が出来たな」

「ルリーにも良い経験にはなったと思います。まさか頭突きをしてくる者がいるとは思っていなかったでしょうから」

「言った通り、お互い成長出来たって奴かな」


 そう言いながらコップを傾けようとした時、突然俺の腕から力が抜け、コップが床に落ちる。


「おわ!?」

「大丈夫ですか?」

「おう、ちょっと手が滑ったみたいだ」


 そう言って拾い上げようとコップを掴む。しかし、その指には力が入らなかった。


「フフ、やっと効いてきたようですね」


 その光景を見て、治療を受けていたルリーが小さく笑う。


「効いて来た? 毒の事か?」

「ええ」


 ルリーは俺の問いに頷く。しかし、それはおかしい。俺はルリーの毒を完全に防いでいたはずだ。毒の霧は全て吹き飛ばしたし、ナイフにも切られてはいない。もちろん剣にもだ。ならいつ俺は毒に感染した?


「いつ感染したか分からないようですね。これは一矢報いましたか」

「くそっ、悔しいけど反論出来ねぇ。いつ俺は毒に犯されたんだ?」

「トーカさんが私のナイフを掴んだ時ですよ」

「掴んだ時?」


 それは俺のパンチをルリーが躱し、反撃に投げて来た毒を目の前でつかみ取った時だ。しかし、あの時も俺は毒のナイフを両サイドから指で挟んで止めている。皮膚は切られていないはずだ。

 そう思って、自分の指の間を見た。すると、驚くことに、指の間が黒く変色していた。


「気付きましたか? 固形化された私の毒は、皮膚に触るだけでも感染するんですよ。普通の人なら、それでもすぐに効果が出るはずなんですけどね」


 そう言って、ルリーは不思議そうな顔をする。


「トーカさんには全く影響が出ていないようでしたので、何か細工をされたのだろうと思っていましたが、どうやら違ったようですね」

「俺は普通の奴らより少し頑丈だからな。毒が効き始めるのにも時間がかかったってことか」

「そのようです。その毒の解毒剤はこれです。これを黒くなっている部分に塗ればすぐに解毒されますよ」


 ルリーは自分の胸元をごそごそと探り、小瓶を取り出した。てかルリーはなんで物を胸元に入れてるんだ? いちいち目のやり場に困るんだが……

 その小瓶をミラノが受け取り、俺の元へ持ってくる。


「トーカ様、どうぞ」

「ありがとさん」


 小瓶を受け取り、蓋を開けると強烈な臭いが漂ってきた。


「うわ、臭!」

「臭い薬ですからね。当然です。これで相手が少しでも嫌な気持ちになれば、大成功と言うものですよ」

「あんた、薬で性格変えても、本性は変わってないな」


 相手の迷惑、嫌がる事が大好きな悪ガキだ。


「褒め言葉として受け取っておきますね。それにしてもまだ頭が痛いですよ」


 ルリーが包帯の巻かれた額をさする。さすがにもう血は止まっているが、この後少し腫れるかもしれないって医者から言われてたな。


「俺の頭突きは世界1だからな。魔物だって殺せるぜ」


 やったことは無いけど、たぶん殺せる。


「むちゃくちゃですね。薬の強化なしでその体は。1度バラしてくまなく調べてみたいぐらいですよ」


 そんな物騒な事を言うルリーに俺は苦笑する。

 そう言えば、ルリーは毒使いってことで、医療技術や、人間の体なんかにかなり詳しいんだったな。

 そんなことを思っていると、ルリーの瞼の閉じている時間がだんだん長くなり始めた。


「そろそろ私の中の毒が切れる時間みたいですね。次目を覚ました時は、昨日会った時の私になっていると思います。その時もよろしくお願いしますね」

「おう、また後でな」

「ルリー様。お疲れ様でした」


 俺とミラノが言うと、ルリーはそのまま目を閉じて規則正しい呼吸をし始める。

 それを見てミラノが小さく微笑んだ。


「今日のルリー様はとても楽しそうでした。トーカ様、ありがとうございます」

「こっちも楽しかったから構わないさ。それに賭けにも勝てたしな」

「賭け――ですか?」


 首を傾げるミラノに、俺はクラスメイトと勝負することになったいきさつを説明する。すると、ミラノはにっこりとほほ笑みこんなことを言い出した。


「では私とルリーも後でその場にお邪魔することにしましょう。そうすれば生徒たちの負担も大きくなるでしょう?」

「良いのかよ、そんな勝手なことして。てか応援してくれた連中裏切る形になるぜ?」

「良いんですよ。そう言うのは盛り上がりと勢いが大切ですから。それに、カランの秘密兵器を勝手に賭けの道具にした罰です」

「ハハ、なるほどね。なら2人追加だな」


 貰った薬を塗れば、俺の指の黒色はすぐに引いて行き、握力ももとに戻ってきた。

 それを確認して、俺は椅子から立ち上がる。


「もう行かれるのですか?」

「おう、こいつが起きるとまた煩そうだからな」


 次起きた時は、昨日のルリーだって言ってたしな。そうなると、また再戦だなんだと言われそうだ。さすがに試合で疲れているのでそれは勘弁してもらいたい。それにそろそろあの2人が来るころだろうしな。

 そう思ったタイミングで、部屋の扉がノックされる。そして中に入って来たのは、フィーナとフランだった。


「トーカ」

「ぱぱ」

「おう、勝って来たぜ」


 ピースをしながら、2人の元へ歩く。


「もう体は大丈夫なんですか?」

「ああ、完全とはいかないけどな。8割方は問題ないな」

「なら大丈夫そうですね」

「おう。フラン、俺の戦いはどうだった?」


 フランを抱き上げながら、俺は尋ねる。


「かっこよかった。男の子たちが凄い驚いてた」

「ハハハ、そりゃよかった」

「この後はどうしますか? 宿に戻って休みます?」

「いや、行く場所がある。2人にも付き合ってもらうぜ」


 ニヤリと笑う俺に、フィーナもフランも首を傾げた。


この物語は主人公最強で出来ています

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