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私は、あなたの闘姫  作者: まるみふみ
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告白

 起きて付き合うと言って聞かない女王様を、何とか寝かしつけた後、茉莉が巻物を読み終わったのは、もう朝日がはっきりと姿を見せ始めた頃だった。

 すうすうと安心して寝息を立てているクリスティーナを起さないように、そっとテントを抜け出すと、荒野に描かれた魔法陣に立ち、自分に課せられた、役割の重さに、途方に暮れた。

 イェシカについての説明も、リアル妖精さんのいる、この不思議な世界についての説明も、召喚のルールも、なんとなく理解できた。

 別の次元世界の、別の国なのだから、いろいろと今までと違っていたって、仕方の無いことだと思える。

 ただ、茉莉は自分が「闘神」とかいうものになった事に実感が持てなかった。

 父の補足によれば、単に力が強いというだけでなく、本当に「神」に近いような能力も、闘神達は持っているらしい。

 そんな力は、今の所全く感じられない。

 その事自体は、茉莉にとって何の支障もないが、クリスティーナを落胆させてしまうだろう。

「やっぱり、大輔が来るはずだったんじゃないのかな…」

 双子の兄は、あの朝には、この世界に来る心の準備も出来ていたに違いない。

 昨晩、自分とクリスティーナを遠巻きに見ていた人々は、別段喜んでいる風でもなかった。灯りもあまりなかったけれど、笑顔だったかどうか位の識別はできた。もしかすると、自分が何の変哲もない少女だと、見抜かれていたからだろうか?

 クリスティーナが自分のせいで、面目を失うのは、想像しただけで、胸が塞がる。


「マリ様、おはようございます」

「うひゃ、お、おはようござります」

 突然心に描いていた人が現れて、驚きのあまり、茉莉は妙な挨拶をしてしまった。

 ほらね、クリスティーナがこんなに近くに来るまで、気付けないんだから、昨日の昼間、旅館の大浴場への扉を開けた時と全く変わらない、ごく普通の人間なのだ。

「朝食、オニギリを用意させましたよ」 

「おにぎり!?」

 驚く茉莉をテントで待っていたのは、ほっかほかの立派な白いおにぎりだった。

 食べてみると、ちょっとお米とは違うが、限りなくそれに近い穀物で、具はないけれど、塩が効いていて、とても美味しい。

「すごーい。本当におにぎりだよ!お米だよ!美味しいよ!」

 先程までの気持ちがおにぎりのお陰で少し上向く。

「よかった。城の料理人達が、アキラ様のお好きな食べ物を研究して、穀物の品種改良から手がけたんですよ」

「うう、ごめんね、あの人そんな迷惑かけてたの?」

 『俺、コメ食べないと、メシ食った気がしねー』とでも我侭を言ったに違いない。

「いいえ、皆アキラ様を敬愛していましたから、喜んでいただけて、さぞ嬉しかったろうと思います」

「そうなんだ…」

「私達が闘神様にしてあげられる事は、そんなにありませんから。いつだって、感謝の気持ちを表したくて仕方ないのです」 

 そんなに愛される闘神様が、ニセモノだったらどうなるのだろう…。食べ物で回復した気持ちは、同じ食べ物で再び下降に転じた。


 朝は、ゆったり過ごし、テントをたたんで、王都とやらに向かって、大所帯が出発したのは昼過ぎだった。

 茉莉は立派な馬車に乗せられ、人目にさらされずに移動する事ができて、ひとまずほっとた。

 本当は逃げ出してしまいたかったけれど、どこに行くというあてもないのだ。

 ここはひとつ、正直に話して傷の浅いうちに、大輔と自分をチェンジしてもらう方がいいのではないだろうか。

 茉莉は荒野からあまり離れない内にと、女王様に打ち明けてみた。

「クリスティーナ、あのね、父さんの巻物読んでて思ったんだけど、私って多分『闘神』じゃないと思うの」

「どうしてですか?マリ様は私の魔法陣に呼ばれたのです。この国の闘神様に。間違いありません!」

 若き女王様は自信満々の様子で、茉莉の告白を一蹴した。

「私、これに書いてあるみたいな力はないの。今からでも、儀式ってやり直せないかな?私と大輔交換できない?」

 ふむ、とクリスティーナは考える素振りを見せたが、その考えは茉莉の希望とは違った。

「もしも、お力がないとしても、貴女は私のただひとりの闘神です。この国に、他の闘神様が必要なら、呼び寄せるのは私の仕事ではありません」それに、とクリスティーナはいつ摘んだのか、黄色い5枚の花弁を持つ、可憐な小花を茉莉に手渡して言った「私はマリ様を信じています。闘神の力の源をアキラ様は、そのスクロールにお書きになっていませんでしたか?」と

「あったような…なんだっけ王様との心のつながり?なんの事かわかりにくくて…」

「私が、マリ様を信じる心です」

 次の言葉を続ける前にクリスティーナ頬がほんのり赤くなった。

「そして、マリ様が私を思ってくださる心です」 

 クリスティーナの言葉は、父親の書いた文章より、茉莉の心に響く気がした。

 しかも、今の発言は、茉莉の顔も上気させる効果があった。

 

「マリ様がご自分が闘神ではないのではないかと思われたように、私は昨夜まで、自分がこの国の女王である事に不安がありました」

「そんな風に見えなかったけど…」

「それは、マリ様が魔法陣から現れてくださったからです」

 茉莉の手にある黄色い花を見つめながら、クリスティーナは長くなりますが、と前置きをした。

「どうして私が女王になったか、そして、マリ様を呼ぶ事になったのか、お話します」

ベロニカマーズを見て白人高校生世代の容姿はあれか!と愕然としています。クリスティーナの年齢設定が揺らぐ今日この頃です。


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