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私は、あなたの闘姫  作者: まるみふみ
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スクロール

 スクロールですと、クリスティーナがテントの奥から引っ張り出してきたのは、時代劇で見たことがあるような、巻物だった。

 一枚の紙では長さが足らず、糊で継ぎ足し継ぎ足しされたそれは、けっこうな太さがあった。

 父が実際に、この世界にいた証拠の品に、これを見ればいよいよ逃げられなくなる予感に不安を覚えつつ、茉莉は硬く結ばれた紐を解いた。

 

『俺の息子へー』

 一行目の文字を見て、父を感じて胸が熱くなると同時に、「息子ちゃうわー!」とツッコミを入れてしまう。

 縦書きに書かれた文字は、紛れもない日本語で、筆跡は慣れ親しんだ父のものだ。しかも作文よろしく二行目の下に、中村亮と署名されている。

『俺はお前に、小さい頃から、ずっとこの世界の事を話してきたはずだ』

 いいえ全く伺っておりませんよ、おとーさま。

『だから、今更詳しく書くこともない』

 おいおい、書けよ!

『と、思うが、あちらで俺と親父に何かあれば、お前が何も知らずにここに来てしまう事もあるだろうし、最初のうちは心細いだろうから、時々これでも読んでくれ』

 ナイス危機管理っすよ!つかそんな用心深さがあるなら、私にも言っといてよ。

 巻物の序盤から、突っ込み所満載である。

『これを読んでいるということは、無事にこの世界に着いて、イェシカの新しい王、シーグルと今一緒にいると思う』

 はて?誰ですかそれは。

 茉莉は目の前にいる少女が、イェシカの女王だと聞かされている。

「あの、シーグルさんって誰?」

「私の兄です…亡くなりました…1月前に」

 それまで、巻物を読む茉莉をニコニコと眺めていたクリスティーナが、花が萎れるようにみるみる表情から精彩を欠いてしまう。

「本当でしたら、兄が新しい闘神様を呼ぶはずでした。私と3つしか違いませんでしたが、父様の後を継いで、立派な王になると、誰もが、私も思っていました」

 兄を思い出してか、どこか遠くを見るような目をしている。まだ王女だった頃の思い出に心が吸い寄せられているようだ。

 そして我に返って思い知る。兄を、そのわずか前にも父を失ってしまった事を。

 

 茉莉はこんな時にかける言葉を16年の人生の中で、まだ学んでいなかったので、もどかしさに身もだえしそうだった。

 たった1ヶ月前に、親しい家族を亡くした人にかけるには、手持ちの言葉は何もかも軽いような気がした。

 けれど、彼女にこんな、寂しい、寄る辺ない者のような顔をさせ続けるわけにはいかない。

 何故なら、なぜなら…、えーと何でかな?と思いつつ、自分知っている精一杯の経験を投入して、茉莉はクリスティーナを抱きしめた。

「ご、後愁傷様です」


 言葉は、もののわかった大人同士なら、確かに適切なのだろうが、今は間抜けだった。

 でも、行動は茉莉が言葉にできない思いをクリスティーナにちゃんと伝えた。

 クリスティーナは自分の闘神の柔らかい、暖かい腕に抱かれて、1月ぶりに与えられる慰めと労わりに、心ぬくもり、何かが溶けるように泣いてしまった。

 茉莉は自分の白いワンピースが濡れるのを感じながらも、先程までの焦燥感から開放され、満足さえしていた。

 クリスティーナは泣いてもいい。

 自分が側にいて、こうやって、抱いていてあげられるなら。いくらでも…。

 んん?いや泣いたら可哀想じゃ?でも、こうやってクリスティーナに優しくするは、ものすごく気持ちいいような…。なんだっこれ! 

「ありがとうございます。急に泣いてしまって、ごめんなさい」

 茉莉がほんわか悩んでいるうちに、泣いて幾分すっきりしてしまったらしいクリスティーナは、あっさりと身を話すとずぴずぴはなをすすりなからも、巻物を読み進めるように促した。

「アキラ様がこちらを去られてから2ヶ月の間に、いろいろとありましたので、こちらの事情もいろいろ変わっております。何でも疑問に思うことはお聞き下さい」

「う、うん」

 何故か名残惜しい気持ちになってしまった茉莉も、クリスティーナの生気の戻った表情を見て、やはりほっとした。


『お前は、シーグルの闘神として、こちらに来た』

 お父さん、違うみたいよ。

『シーグルとイェシカを闘神として護れば、シーグルが元の世界へ還る扉を開いてくれる』

 だからシーグルさんはお亡くなりになったてば。

『だから頑張れ』

 何をじゃ!


『この世界は3つの大陸と、その他大小の島々からなっており、これまた国力も面積も様々な国が100位あるらしい。

 元の世界と違うところは、その国全部に王様がいること。つまり全世界王制。

 そして、その王様になる人、1人につき1人(?)闘神と呼ばれる異世界からの召喚者を呼ぶことができる。

 前王の死後2月の内に、召喚の儀式をしても、新王の元に召喚者が現れない場合、闘神を呼べない王族は、行いが天に背いていたとされ、新しい血筋の王を迎える、もしくは解体されて、近隣の国に吸収される。

 というのが天の理。何しろ天の決めることなので、人々はこれに疑問を特に持っていない様子』

 ふむふむ。私は疑問大有りですよ。


『そして闘神とは…』

 とは??

『人知を超えた神様みたいな力を持った異世界人』

 ……びっくりするほど、ピンと来ないよお父さん…。

 


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