13章 帝国活動編 6話 戦闘メイド3人の育て方
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宿屋を訪れた公爵家令嬢の不意打ちをされた日から2日が経ち、俺の体調は万全となったことでこの街から出て次の街へ行きことに決まった。
リルとクウコから公爵家令嬢の命を狩るとの話しが出たけど、俺は拒否してこのまま街を出ることにするよう落ち着かせた。
ギルドで関係を持っていることを複数の冒険者とギルド職員に認知されているため、彼女の消息が不明になると俺に嫌疑がかけられ追われる身となると、不自由な生活になってしまうからだ。
いつものように支度を整えて、ラニアとアメリアそしてシェルとアルシアが馬車を引き取りに行くため先に宿屋を出る。
しばらく部屋で待っていると、アメリアからの念話でもう少しで宿屋の前に馬車が着くと伝えられ、全員で部屋を出て下に降りる。
あの殺傷事件?を知らない宿主は、いつも通り受付から俺達を笑顔で見送ってくれる。あと1日だけ宿泊予定だけど、今日この街を出ることを彼は知らない。
「お気をつけて〜」
軽く手を振り宿を出たところで、ラニアが御者をする馬車がゆっくりと止まった。
「お待たせしました。どうぞ乗ってください」
荷台に全員が乗り最後に俺が乗ったところでラニアが馬車をゆっくりと走らせ大通りを進んでいると、俺達が泊まっていた宿屋に駆け込む3人の姿が目に止まった。
(・・ただの客じゃなさそうだけど、俺には関係ないか)
そのまま視線を外し揺れる荷台の中で俺は、ふと帝国の他の街の冒険者ギルドで出会ったエルナのことを思い出す。
(アイツ・・元気にしているかな・・)
「なんじゃ?そんな顔をして?」
不意にシェルが隣に座り話しかけてくる。
「ん?変な顔してた?・・・ちょっと、エルナのことを思い出してね・・」
「エルフの娘か・・そういえば、ハルにベタ惚れだったからの〜じゃが、さすがに同種の男と番いになっているのではないか?」
「・・かもな。それはそれでエルナが幸せなら、俺は何も言わないよ・・・・」
「ちと、意地悪だったか・・」
そんなシェルの言葉を聞いていると、門の前についたようで馬車が止まり門兵達の声が聞こえたため俺は口を開くことなく黙ったままにする。
そんな俺の反応に不安だったのか、シェルがジッと俺を見つめているもチラッと視線を合わせただけで俺はそのまま荷台を確認する門兵にギルドカードを見せ点検が終わると腕を組んで俯き目を閉じたのだった。
街道を馬車が走る。次に街を目指して・・。
「ハルさ〜ん!」
馬車の速度が落ちるとアメリアが俺を呼ぶため、閉じていた目を開けて御者台の真後ろへと移動する。
「何かあった?」
「この先に分岐路がありますけど、どちらに行きますか?」
アメリアの隣りには、街で買っであろう地図を広げ睨めっこしている。
「そうだね・・・・2人に任せるよ」
「「 えっ?? 」」
アメリアとラニアが驚いた表情に変わる。
「どっちの道に進んでも、次の街に向かうんだろ?ラニア」
「・・あっはい。確かに地図を見ると、2つの道は先で合流するようになっていますけど・・」
「それなら問題無いね・・っということで、後はよろしくぅ〜」
俺はそう言い残し荷台の後ろへと下がり再び目を瞑り腕を組んでもう一眠りをする。
馬車を止めることなくアメリアとラニアは話し合いを分岐路の手前直前までしていて、俺は右の川沿いを進むと予想していたのに反して深い森の中を突き抜ける道を選択したようだ。
道に残る馬車の車輪の跡を確認しゅるも、どうやら最近馬車が通って無いのか他の馬車が通った痕跡が無いことに気付く。
もう引き返すこともできないため、このまま森の中へと入っていくとしばらくして何かの探知魔法に触れた感触が全身に伝わる。
その俺の反応と同時に獣人シスターズも気付いたようで、ケモ耳をピコピコと動かして周囲を確かめ4人が同じ方向に視線を向けて、リルだけが俺を見つめる。
「どうした?」
「見られてる」
「山賊か魔物か?」
「違うよ、人族でも魔物でも無い気配がたくさん・・」
「仕掛けてきそう?」
「ん〜その心配は無い見たい・・ただ隠れてジッと見ているだけ・・ハル、消しちゃう?」
「いや・・害意がなければ、そのまま干渉しないでいよう」
「うん、わかったよハル」
少し離れて警戒していたクウコが右側に身体を寄せて座り、リルとクウコに挟まれ守られるような格好になっていると、ミオとミリナはクルッとジャンプして荷台の幌の上へと姿を消して行った。
そんな獣人シスターズの動きに感づいたカラ達は、気配探知スキルを発動して自分達を監視している存在に気付いたようで慣れていないカラやラニア達は視線を向けて必死に見つけようとしていた・・。
(・・あ〜まだスキル譲渡だけで、対人戦闘とか教えてなかったんだよな・・これじゃ、こっちが監視に気付いたのがモロバレだ・・けど、まぁいっか)
相手から攻撃を仕掛けてこない限りは俺達から仕掛ける気は無いため、このまま監視されている状況が続くも大きな変化は無く、このまま森を抜けて丘陵地帯へと出ることができた。
(森から出て追ってくることはないんだ・・)
自身の気配探知スキルで森から少し奥の場所から監視者達は動くことはなく、それなりに離れた距離まで走ると複数の監視者から監視を外れるも、たった1つだけずっと俺達に監視を向ける気配がなかなか消えないことが気になってしまうもその監視も途切れ、しばらく経ってから俺はその懸念さえも忘れていた。
小高い丘をいくつも超えて行く途中に街道脇に見上げるほどの大木が立っているのを見つけ、今日の野営場所に決める。
馬車が止まるとリル達4人の獣人シスターズは、この大きな木を登り上の方でキャッキャッ遊び始めた。
「ミオ〜!ミリナ〜!・・そん上まで行って、1人で降りれなくなったとか言うなよー!?」
「もう!ミオは、ネコじゃな〜い!ちゃんと1人で降りれますよー!」
「ミリナもだよー!」
「そんなこと言って、降りれなくなっても助けないからなー!」
猫っぽい2人を茶化しながら野営の準備をアルシアとシェルの3人で終わらせ、まだ夕食の準備には早い時間だったから俺はカラとラニアそしてアメリアの戦闘メイドらしい対人戦闘スキルアップの鍛練をすることに決めた。
「カラ、ラニア、アメリア・・ちょっと良いかな?」
夕食のための野外調理器具の準備を終えた頃に3人に声をかけ呼び寄せる。
「・・まだ、飯を作る時間にはまだ早いから戦闘スキルのアップの時間にしようね・・順番は、ラニアとカラそしてアメリアで」
3人は、俺が何も言わなくてもマジックポーチに収納している武器を手に取り俺を見つめ言葉を待っている。
「3人のステータスを見た限り、ラニアは前衛でカラは中衛の前衛寄りで、アメリアは後衛の役割的な感じで連携してもらおうと思うけど・・どうかな?」
「私は、それで良いわよ」
「ありがとう、カラ」
「「 私もです 」」
「りょーかい」
彼女達に持たせる模擬戦用の木剣など持っていないため、今持っている短剣で俺と鍛錬をすることにする。最初は、俺は反撃をせず攻撃を受け止めて身体の使いこなしを教えていく・・。
「はぁ・・はぁ・・」
「・・頑張れラニア。疲労で視野が狭くなっているよ?」
「・・はい!」
正面から始まり右へ左へと俺はラニアの斬撃や突きを躱しながら動き体力を奪っていく。だんだん息が荒くなったところで、少し移動速度を上げてラニアの背後を奪い手刀を首筋に当てて終わりにした。
「はい、ここまでだよラニア」
「・・・・参りました」
「お疲れ様・・次は、カラだよ〜」
「・・いくわよ」
カラは、ギルド受付嬢の前は冒険者だったから身体の身のこなしはラニアより出来ているけど、ブランクが長かったせいで動きにキレが無い。
「ふぅ・・思い通りに身体が動かないわ」
「しばらく事務職だったからね・・動かしていたら、身体が思い出すよ・・」
「だと・・良いけど・・ね!」
「ぅわぉ・・」
ラニアには無かった足蹴りも組み合わせてきたことに驚きの声を思わず漏らしてしまうと、カラが少し笑っているように見えた。
少しづつカラの動きも早くなり、それに合わせるように俺も身体の反応速度を1つ上げて対処していく。
「さすが、元冒険者だね・・」
「はぁ・・まだまだよ!・・せりゃ!」
腰元から俺の喉元へと突き上げる動作か隙だらけのら背中を見せたかと思いきや、綺麗な回し蹴りで俺の顳顬を的確に狙ってきた。
俺にとっては蹴り上げる速度が遅いため、そのままカラの右足首を掴んで勢いを殺さず地面へと投げ落とす・・直前に抱き抱え、背中から地面へと強打させるのを防ぎ止める。
「はい・・ここまでだよ、カラ。お疲れさま」
「・・もう、昔より比べ物にならないくらい強いのねハルは・・」
「まぁ、一回死んだけどな」
「ばかっ・・そんなこと言わないで」
「・・ごめん」
カラを立たせ乱れたメイド服を直させると、入れ替わりでアメリアが緊張した表情で俺を見つめている。
「・・えっと、アメリアはずっと受付嬢だったんだよね?」
「はい。護身術は習っていましたが、実戦経験はありません」
「りょ〜かい。それなら、2人とは違うやり方にするか・・」
俺はアメリアのステータスを思い出しながら、後衛としての鍛錬を考える。
「あの・・難しければ・・」
「オッケー決まったよ、アメリア。とりあえず、俺は丸腰で襲いかかるから習った護身術で遠慮なく対処してみて」
「わ、わかりました」
持っていた解体用ナイフをアイテムボックスに収納し、俺はアメリアの正面から近づき胸元へと手を伸ばし対処を見極めることにした。
「おろ?」
アメリアのメイド服を掴んだと思っていた瞬間には、彼女の顔をが上にあり俺は地面に倒されていたのだった・・。
「・・・・マジ?」
「すいません、思った以上に動きがゆっくりだったので・・」
アメリアに立たされた俺は、一度間合いを取ってから、もう一度襲いかかる。
あと少しでメイド服を掴める距離のところで、アメリアの姿が消えて俺の懐へと潜り込んで身体の重心を崩すかのように足払いと上半身を引き込まれ俺の身体が宙に浮き始める。
(これは、なかなかの素質だ)
俺は浮いた右足を動かし、アメリアの重心となる左足の膝裏を痛め付けない程度の力で蹴飛ばしガクッとアメリアの左足が強制的に曲がり姿勢が崩れたところで、あえて間合いを取った。
「・・・・どうして、間合いをとったのですか?」
「ん〜このまま終わらせるのも、勿体無いと思ってね・・」
「そう・・ですか」
「アメリアは、魔法使える?」
「ステータスの魔法は、それなりにですが、詠唱が苦手なので・・」
「なるほどね・・今日の鍛錬は、これで終わりにしよう」
「そ、そんな!・・私は、まだ出来ます」
鍛錬の終わりを告げると、アメリアの表情が強張ってしまい俺は勘違いさせてしまったことに気付き慌てて言葉を続ける。
「そうじゃないから安心して、アメリア。苦手な詠唱を破棄させて、無詠唱で魔法を行使できるよう俺と鍛錬しような?もちろん、武器を使った鍛錬もするからカラとラニアより厳しい鍛錬になるかもだけど・・」
「はい!わたし、頑張ります!」
消えかけていたアメリアの瞳に光が戻り、俺は彼女の意志を復帰させることが出来て安堵していると、カラが羨ましそうな声を出す。
「良いな〜アメリアちゃん・・私も無詠唱して見たいなぁ〜・・ハル?」
野外イスに座るカラは、俺をジッと見ている。
「・・・・カラは、無詠唱を覚える前に中衛としての役割でもある前衛の動きを先に習熟してもらわないとな・・そしたら無詠唱を教えてあげるから」
「ホントにぃ〜?」
「ホントだって・・もちろん、ラニアも覚えてもらうからね?」
「・・無詠唱を、私もですか?」
「当然だよ、ラニア。それが、俺が求めている戦闘メイドの真の姿だからね?」
俺の言葉に3人は、少し引いているような表情をしているも俺は負けないと心に誓ったのだ・・・・そして薄暗くなった頃に頭上から助けを求める声が聞こえる。
「「 ご主人さまぁ〜〜〜〜降りれなくなりました〜〜!!!! 」」
ミオとミリナの助けを呼ぶ声が聞こえ、見上げると太い枝に座り幹に抱き付いている2人の残念な姿が目に入った・・・・。
「・・だから言ったのに」
「だよね・・ハルの言う事聞かないから」
「ん?・・クウコか」
上げていた視線を足元に落とすと、金色の瞳で見上げるクウコと視線が重なる。
「クウコとリルが降りれなくなることは、ありえないか・・」
「そうだよ・・クウコとリルは、猫じゃないから」
「だな・・・・ちょっくら首根っこ捕まえて助けに行ってくるよ」
生活魔法ライトで野営地とミオとミリナが座るところを明るく照らしながら、俺は木を登り1人づつ抱き抱えて下へと降りたのだった・・。
「でもさ・・お前ら獣人族だから、たいした高さじゃなかっただろ?」
「・・てへ」
ミオは、バレちゃったか・・みたいな顔をして視線を俺から逸らし離れて行く・・・・。
「まぁいっか・・」
そう呟きながら、焚き火を中心に野外イスを並び直してラニア達3人が作る夕食が出来上がるのを座って待つことにしたのだった・・・・。




