12章 王国離脱編 幕間⑥ ミリアは誓う
アクセスありがとうございます。
13章の前に幕間を入れさせてください。
ミリア Side
妹のマリアが意気揚々と冒険者ギルドへと入って行きます。その小さな背中が、とても大きく見えたのは気のせいでしょうか・・。
過去にイシタ公国へ冒険者を派遣させる為にこのギルドに来たことはありますが、王女として公務で来るのと冒険者になるために来るのとでは、気分が全然違います。
(どうしましょう・・この胸の高鳴りを・・)
マリアは受付窓口へと足を進め、それに私はついて行きます。周囲の男冒険者の視線が気になってしまい止まっていたマリアの背中にぶつかってしまいます。
「きゃっ」
「姉さん、落ち着いてください」
「は・・はい」
(何このイケメン・・私の妹なのに、この優しい仕草に胸がドキッてしたじゃない)
「浮ついていると、フラグが立つってハルが言ってたの・・だから目立たないで」
「・・はい」
マリアは窓口へと向き直り受付嬢と話しをしているのを黙って待ちます。
「私のギルドカード更新と後ろの彼女達の新規登録をお願い」
「わかりました。まずは、あなたのカードをカウンターに置いてください・・・・て、帝国冒険者?」
「・・ふぇ?・・あ、あぁそうよ。私は帝国冒険者なの、何か問題でも?」
変な声を出したようなマリアでしたが、受付嬢さんは何も言いません。そんなことより、マリアが帝国冒険者だった事を初めて知りました。姉として、あとで追求しないと・・。
それから更新の手続きが済んだようで、私達の順番になります。
「あの・・新規登録でよろしいのですよね?」
窓口に立つ私達は、素顔がバレないようフードを深く被っているので不審者にしか見えないのでしょう。下から顔を覗き込もうと受付嬢と静かな攻防が続いています。
「あの新規登録まだですか?」
「あっ・・すいません。この登録用紙に印がある欄は必ず記入してください。その他の欄は任意です」
3人分の登録用紙を受け取り、窓口横のカウンターに3人並んで記入します。
名前と年齢と魔法属性・・スキルや武器は任意のようです。
私は自分が何の魔法属性を持っているのかわからず悩んでいると、アイナとリンは書き終わったようです。
「・・ミリアさぁ・・ミリアさん、どうしましたか?」
「あのね・・私の魔法属性って何?」
「・・・・わからなければ、不明でいいってここに書いてありますよ」
「あっ・・ホントだわ」
それから登録用紙を持って受付嬢に手渡します。
「・・・・ミリアさんにアイナさん、それにリンさんですね・・身分は、家名が無いので平民冒険者扱いね」
私たちが平民冒険者となるようなので、受付嬢の態度あからさまに変貌します。
「今からカード発行するから、この魔法具に右手を置いて・・・・えっと・・ミリアって子が最初ね」
「・・はい」
受付嬢の指示に従い手続きを進めると、ようやくギルドカードの登録が終わりました。初めて手にするギルドカードにアイナとリンの3人で手を繋ぎ喜んでいるところで、背後から受付嬢が告げます。
「発行手数料で銀貨3枚ね」
「「「 ??? 」」」
「はい、どうぞ」
何も驚くことのないマリアが銀貨3枚を受付嬢に支払っています。その光景に驚いていると、マリアが私と視線を重ね口を開きます。
「早くギルドから出ますよ・・」
私の手を握り、マリアが外へと引っ張ります。
「マリア・・どうしたの急に?」
「いいから、早く」
すると、窓から陽の光が入っていたはずなのに、急に薄暗くなります。
先を歩くマリアが足を止めたため、私も足を止めて同じ過ちを犯さないようにしました。
「恥ずかしがり屋のお嬢さん達、俺らとパーティー組んで森へ行かないか?無料で魔物討伐を1から10 以上教えてやるからさ〜」
「・・・・お断りします。今は急いでますので」
顔バレを恐れている私は、顔を上げて声をかけた男冒険者の顔を見ることができません。マリアは左へと移動し男冒険者から逃げようとしますが、仲間の男達に退路を絶たれてしまったようです。
「どこへ急ぐんだい?今なら優しい俺らが手伝ってやるよ。謝礼の金品はいらない代わりに、お嬢ちゃん達の身体で支払ってくれたらいいから」
「「「 ぐぇっへっへっへ 」」」
汚らしい笑い方をする男冒険者達に嫌悪感を抱いていると、私の右手を握っていたマリアの手がスルッと離れます。
「そう・・それで、あなた達のランクは?」
驚いたことに、マリアが男達の話に乗ったのです。
「やっと俺らの良さに気付いてくれたのか?俺らは、Bランクパーティーのファーキンガイズだ。そのパーティーリーダーの俺がデッドンだ・・」
「Bランクパーティーなのね・・・・」
「おうよ・・だから、新人冒険者のお嬢さん達がゴブリンやオークの慰み者にならないよう高位ランク冒険者の俺達が守ってあげるのさ」
あのゴブリン達より先に、あの男冒険者達の慰み者になるのが目に見えています。さすがに、あの男達から無傷で逃げられる力は、今の私にはありません。
周囲にいる冒険者達は止める仕草もなく、ただ静観し冷たい言葉を小さな声で呟いています。
あぁ・・デッドンのパーティーに目をつけられたなら、始まる前に終わったなあの子達・・可哀想に。
Bランクパーティーには歯向かえないさ・・このまま関わらずいよう・・・・。
ねぇ、ギルドは助けないの?・・無駄さ。殺傷がなければ徹底的に不干渉なのがギルド方針なのさ。
「まぁ、とりあえず俺らが通う飯屋で昼飯でも食いながら話しの続きをしような・・」
「・・・・いいわ。とりあえず、場所を変えて話しをしましょう」
「いいね〜。まぁ、俺らについて来てくれ」
2人の男冒険者が私の横を通り後ろへ移動します。
「みんな、一緒にいきましょう。デッドンさんが途中まで案内してくれるそうです」
今は、マリアのお言葉に従いついて行くことにします。この先何があっても、ハルはこの汚された身体を愛してくれるでしょうか・・初めてはハルにと思っていましたが、どうやら叶わないようです。
同情されているような視線を浴びながらギルドを出ます。外の通りは、いつもと何も変わらない街並みのはずですが何も感じません。
そして、前後を男冒険者に挟まれるような形で大通りを歩きます。
デッドンという男は、マリアと何か会話をしながら歩いています。後ろにいる男が私に声をかけて来ますが、私はひたすら無視をして歩くのです。
しばらく大通りを歩いていると急に立ち止まります。もう店に着いたのかと思うと、どうやら違うようです。
「このまま表通りを歩いても時間がかかるから、この先の裏通りを歩いて近道だ・・」
そう告げたパーティーリーダーの男は、躊躇いも無く裏通りへと足を踏み入れます・・そして、マリアも同じように。
まだ昼前辺りのはずなのに、薄暗く感じます。たった1つ道を外れただけなのに。
止まることなくどんどん奥へと歩いて行きます。
家屋の壁にもたれて寝ている人やただ座っている老人。そして、獲物を狙うような鋭い目つきで僅かに開いたドアの隙間から視線を向ける子供達・・。
そして、3つ目の角を右に曲り数歩歩いてすぐに門を左に曲がるとマリアと前を歩いていた男冒険者2人の姿を見失いました。
「マリア!?・・マリア何処にいるの?」
私の叫び声にマリアが反応しません・・まさかあの男達に拐われたのでしょうか。
そして、後ろを歩いているアリナとリンに助けを求めるため、歩いて来た道の角を曲がるとアイナとリンそして男達の姿もありませんでした。
「・・そ、そんな・・・・」
突然1人取り残された私は、パニックになり何をどうしたらいいのかわからなくなります。
ただただ、恐怖の中で涙を流し声を殺していると左の方から物音がします。
ガランッ・・ガン・・ガン・・
一気に胸の鼓動が早くなり、呼吸が強制的に早まり息苦しくなります。
「アゥッ・・ア・・」
低くく掠れた声と共に、デッドンが物陰から姿を見せ手を伸ばし足を引き摺りながら私にゆっくり近づいて来ます。
恐怖の余り足が震え、そのままへたり込んだ私は逃げることさえできなくなります。
「お・・おねがい・・こないで・・」
私が必死になって絞り出した声は、とても小さく弱い・・決してあの男の耳に届かないはずなのに突然姿を消します。
「・・ふぇ?・・消えた?」
・・・・・・
「ごめんね、お姉ちゃん」
「・・マ、マリア?」
男が目の前で、忽然と姿を消すという理解できない状況の中で、今度は目の前にマリアが姿を現します。
「「 ミリア様、申し訳ございません 」」
今度は、マリアの隣りにアイナとリンが姿を現します。
「・・・・」
現実が理解できない私は、言葉を失っているとアイナとリンが抱き起こしてくれます。
「お姉ちゃん、とりあえずここから離れようね」
そのマリアの言葉を聞いてから、このお店に来るまでの記憶がありません。気が付いたら、椅子に座りお店の中に私がいました。
「マリア?? 何があったの?」
「お姉ちゃん、とりあえず果実水を飲んでから落ち着いて聞いてね」
「・・わかったわ」
マリアに促されテーブルに置かれたコップを手に取り一口飲みます。
甘い果実水が全身に行き渡り、混乱していた頭がなんだかスッキリして行くような気分になります。まるで、甘い飲み物を欲していたかのように。
「ふぅ・・落ち着いたわ、マリア。教えて頂戴」
「うん。いつものお姉ちゃんだね〜」
「「 はい、いつものミリア様です 」」
「もう、いいから早く教えなさい」
そしてマリアは真剣な表情をしつつも、何処か幸せそうな表情をして教えてくれました。
まず初めに、帝国冒険者だったのはあの帝国へ行って行方不明になった時にハルに賊の襲撃から助けてもらい、王都へ帰る途中の帝国領の都市で冒険者登録したためと。
次に、あの冒険者ギルドで絡んできた男冒険者達は、マリア達3人で処分したというのです。
「どうして3人が同じことを?だって、そんな会話をしていなかったわよ?」
「お姉ちゃん、わたし達3人には念話スキルを習得しているからね」
「なんですって?」
いつのまにマリア達は、念話スキルを習得していたのでしょうか・・そして、それよりももっと気になる事があります。
「それと、いきなり姿が消えたり現れたりしたのはなんなの?このコートのちから?」
「違うよお姉ちゃん。これは、隠密っていうスキルなの」
「隠密?」
「そうです、ミリア様」
「アイナ?・・あなたも使えるの?」
「はい、もちろんリンも使えます」
その言葉に私は、物凄く焦りを感じます。
「ねぇ、どうして貴方達がそんなスキルを急に使えるようになったのよ?」
「お姉ちゃん、それはね・・」
マリア達3人が、物凄く笑顔になります。
「「「 ハルが教えてくれたから 」」」
その言葉から幸せオーラを込めて告げられた私は、心に誓いました。
絶対にハルに逢いたい。そして、彼女達のように強くなりたいと・・。




