12章 王国離脱編 幕間④ アイナ王都帰還
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アイナSide
身体が誰かに触れられたことによる揺れで意識が覚醒し、反射的に全身を丸める。
「アイナさん、すいません驚かせて・・おはようございます」
「・・・・おは・・よう。リン」
「そろそろ出発の支度をお願いします」
目元にクマを作ったリンの疲れた顔を見ながら、身体を起こし無言のまま支度を整え心を整理しようと意識し、深く溜息をついてから気持ちを切り替え外へ出て朝陽を浴びることにした。
「おはようございます、アイナ中隊長。お食事をお持ちしました」
「おはよう、リリア。ありがたくもらうよ」
リリアからパンとスープを受け取り、立ったまま朝食を摂りながら周囲を見渡し野営地の状況を確認していると、騎士団の天幕設営地から少し離れた場所で、帝国騎士が天幕の片付けをしていた。
「そうか、彼らもいたんだったな・・」
そう呟いていると、背筋がゾッとする視線を感じ視線を向けると、黒髪少年と視線が重なり右手が反射的に剣を握ると少年は視線を外し馬車へと向かって行った。
「やはり、昨夜の犯人は・・・・」
それから出発の準備が整い野営地を出発し最終日の移動には魔物の襲撃はなく、昼過ぎには無事に王都へたどり着いたのだった。
王都の西門から入りそのまま大通りを抜けて王城へと向かう。途中にまだ先の戦闘で壊された建物が少し残っているものの住民の顔には、かつての活気が戻っている。
「それでは、ここから先は国王との謁見するための準備部屋となります。持っている武器は、我々に見えるように手に持っていてください。隠し持っていた場合は発見次第没収となります」
騎士団長ハイドが並ぶ帝国騎士に伝え、その指示を帝国勇者達は素直に従ってくれている。だが、その様子に気を抜くことなく警戒するのが、王国騎士としての務めだと表面上では示す。
今の私の心情は、いかに早くハルの元へ行くかと考えている。でも、まだ解決しなければと思う事案もあり悩ませられる。
そして王族直属である近衛兵に帝国勇者達の身柄を預け、謁見の間へ行くのを見送った後に念話スキルで第3王女マリア様と連絡をとった。
『マリア様・・今からお会いできないでしょうか?』
『・・アイナどうしたの?今なら、3階のあの部屋で待ち合わせましょう』
『ありがとうございます。リンを連れて参ります』
ハイド騎士団長は、近衛兵とともに奥の部屋へと行ったため、この場の指揮官は自動的に私になる。
「各人、長旅ご苦労であった。現時刻をもって任を解く。各小隊長の指示に従い、次の命令があるまで休養し備えてくれ」
整然とした動きで解散する姿を見送り、私とリンの2人だけとなった廊下で小さな声でリンに告げた。
「今から、マリア様に会いに行く。一緒に来てくれるか?」
「もちろんです」
「ありがとう」
廊下を歩き目的の部屋へと向かう。途中でメイド達とすれ違うもの会釈されるだけで、呼び止める者はいない。
コンコン・・・・
気配探知スキルに反応もなく部屋の中から声はしないため、無人とわかりドアを開けるとソファに座るマリア様がニッコリと笑っていた。
「マ、マリア様・・いらしゃったのですね」
敬礼をして下を向くと、マリア様は慌てた様子で敬礼動作を止めるよう告げる。
「ア、アイナ・・そんな公式の場じゃないから、いつも通りで・・ね?」
「しかし・・」
「リンちゃんも・・ね?」
「「 はっ 」」
「もう・・全然戻ってないじゃない。立ってないで座りましょう」
リンと2人でソファに座ると、マリア様が準備していたであろう紅茶をカップに注がれ手渡される。
・・・・・・
しばらく無言の時間がこの部屋を支配し、マリア様がそれを壊してくれた。
「ふぅ・・それで、急に会いたいって何かあったの?」
「・・はい。本日、帝国で召喚された勇者一行が王城に来ていることを?」
「えぇ、知っているわ。今は、お父様とミリアお姉さまが会っているはずだから」
「実は、その・・昨夜のことなんですが、野営中に帝国勇者一行の男の1人に寝込みを襲われまして・・」
「なんですって!」
マリア様は勢いよく立ち上がる。
「み、未遂です・・未遂でしたので・・リンが助けてくれたので、落ち着いてください」
「ホントに未遂で終わったの?・・隠してない?」
「その・・多少は胸を・・・・」
「アイナ・・ごめんなさい」
「だ、大丈夫です・・今はもう。それと、もう1つご報告が」
「また帝国勇者が?」
「いえ・・ハルと地方都市ニシバルの近くで会いました」
「ハルと出逢えたの?」
「はい・・でも、想いを伝えましたが拒絶されました」
「そう・・そうよね・・」
マリア様は落胆した表情と変わってしまう。
「その翌日に、カラさんとラニアがニシバルの騎士団施設に泊まる私の部屋に忍び込んできまして」
「え?警備がいるあの施設に?」
「はい・・。そして、ハルは帝国へ移住することを教えられました」
「て、帝国に?・・なぜ?アイナが密かに守ってきた、丘の上の家があるじゃない!?」
私は、マリア様の言葉で、カラさんから聞いた言葉を思い出し胸がギュッと痛くなり右手で押さえ涙が溢れる。
「ひぐっ・・行き違いがありました・・。ハルは、リルちゃんとクウコちゃんを連れて家に寄ったそうです。でも、私が普段の管理を任せていた使用人がハルに対して、この家は貴族所有の家だと言い放ち突き返したようです」
「なんですって・・・・でも、あなたの家名をハルが知らないはずでは・・」
「ハルに家名を伝えたのは、あの失踪事件より前の1回きりなので・・記憶に残ってないと思われます」
「そんな・・・・」
再び長い沈黙が訪れる。
コンコン・・
「マー・・いる?」
不意に部屋のドアがノックされ女性の声がする。
「お姉様・・開いてますわ」
ガチャ・・
ドアが開くと白色のワンピースを着た第1ミリア様が入って来たことに驚く。
「あぁっ・・」
「しぃ〜」
「お姉様、来るのなら隠密スキルを使ってから来てください」
「無理よ・・貴方達3人と違って、生娘の私はハルと1度も交わってないもの・・ずるいわ」
「それにしても、ハルが帝国へ移住するって本当なの?」
「お、お姉様!?」
「マリア・・静かに。で、どうなのアイナ?」
「はい・・カラさんから聞いたので間違いないと思います。それに、帝国へと続く街道を移動していましたので」
「そう・・変ね・・貴方達が住んでいた家の村で何年も売れなかった土地が最近になって買い手がついたのよ・・それが、ハルの名前だった・・」
「「「 えっ??? 」」」
「その村の代表の男が代行で商人ギルドで正式に手続きをしたわ。それに、その土地を深く調べたら過去に国に没収された土地であって、その前の持ち主はハルだったの」
ミリア様の言葉に、私の中の遠い記憶が掘り返される。
まだ騎士団副団長だった頃に何回かハルと出会った記憶と、騎士団長が突然冒険者を自宅から連行して来て地下牢に投獄したと。
・・・・それがハルだった。
それから、国家反逆罪という罪になり家を強制的に取り壊し土地を国が接収し放置していた。
こんな足元に、愛する人の物があったことに気付くことができなかった私が許せない・・。
「それよりも、これからどうするの?」
ミリア様の言葉に、ハッと我に帰り顔を上げてミリア様を見つめる。
「わたしは・・・・」
「お姉様!私は、ハルの元へ・・帝国へ行きます。この国のことをよろしくお願いします」
「ま・・待ちなさい!マリア、言ってることの重大さを理解しているの?」
「もちろんです。ミリアお姉様!私は第3王女です。政治的に使われて終わる人生より、愛した男に捧ぐことを望みます。もちろん、私がハルを傷つけた行為が許されないとわかっていてもです!」
「貴方って・・そこまでハルのことを・・・・ふざけないで!」
「お、お姉様?」
「ミリア王女様、落ち着いてください」
「ミリア様!」
私とリンでマリア様に掴み掛かろうとするミリア様を必死に抑えようとするも、思った以上に力が強く手間取ってしまう。
「マリア!貴方達はね・・本当に許せないんだからね!」
「「「 落ち着いて!お姉様(くださいミリア様) 」」」
「私も行くわ!ハルを追って帝国に!!」
「「「 えっ??? 」」」
第1王女ミリア様から発せられた言葉にマリア様と私達は固まってしまったのでした・・・・。




