11章 王都逆襲編 18話 ギルドでイザコザ
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村を出発して数時間・・特にすることが無い俺は寝たり景色を眺めたりを繰り返し時間を浪費する。俺の両隣で旅の連れは一度も起きることなくずっと寝ている。
「この2人は、本当によく寝るな・・」
そう呟きながら、ワンピースから力なく出ている銀色と金色の綺麗な毛並みを持つ長い尻尾を撫でていると御者の男から声が聞こえた。
「そろそろ王都に着きます。準備をしてください」
「・・わかりました〜」
返事してから僅かな時間の後に、小刻みに揺れていた馬車が止まる。
「お疲れ様でした、ここでお降りください」
荷台の後ろから顔を覗かせる御者が、踏み台を準備している。その間に寝ているリルとクウコを抱き上げ荷台から降りる。
「ありがとうございました」
「お疲れ様でした・・」
御者台に乗り再び馬車を走らせ、王都南門へと入って行く馬車を見送りながら外壁沿いに伸びる人の列の最後尾へと歩く。
歩き揺れるリズムで2人はモゾモゾと動き始め目を覚ますと、大きく口を開けて欠伸をしながら俺を見つめる。
「おはよう。リル、クウコ・・もう少しで王都に入るから隠密スキル使ってね」
コクっと頷く2人は、周囲を見渡してスッと姿を消していく。2人を抱いている感触が腕で感じているため存在を認識できるけど、一度離れたら探すのは困難だなと思いつつ列に並び順番を待つ。
順番が来た頃には陽もかなり沈み門前に光魔法ライトが使われ、南門周辺が明るく照らされる。
「次の人、身分を証明する者を・・」
門兵の指示に従って、帝国の冒険者ギルドカードを提示する。
「どうぞ・・」
「・・帝国の冒険者か?」
「はい、ソロで活動しています」
「ソロか・・その髪の色は生まれつきか?」
「いえ、この髪は染料で染めています・・」
「生まれつきなら、召喚者様だからな・・驚かせるなよ」
「すいません。つい出来心で・・」
「よし、通っていいぞ。帝国冒険者は、王国冒険者ギルドで活動登録料を支払えばいいからな」
「そうなんですね・・わかりました」
提示したギルドカードをしまいながら宿屋の場所を聞く。
「あの、宿屋街はどちらに?」
「あぁ、入って右の通りを真っ直ぐ行くとあるぞ」
「わかりました」
「ギルドに行くのも忘れるなよ」
「・・はい」
門兵に聞いた通りに右に伸びる通りをしばらく歩くと、数件の宿屋が見えて来る。その前に家屋の影に身を隠しリルとクウコにスキルを解除させ、フードを被り直させてから表の通りへと戻り宿屋へと向かった。
適当に宿屋に入り飽き部屋を探すけど、どの宿屋も満室だった。そして、4件目の宿屋でも受付の女性に満室だと断られてしまった・・。
「ごめんなさい・・せっかく来てもらったのですが、本日は満室になっています」
「・・そうですか。あの、他の宿屋も満室なんですが王都で何かあるのですか?」
「はい。最近まで国は戦争状態でして・・いえ、別に他国との戦争では無いのですよ。ただですね、この街も戦場になりまして復興のために各地から職人や冒険者が集まっているので宿の利用者が増えているのですよ」
「それで、街の通りを歩く人が多いのですね」
「はい、ここ連日は満室なのです」
4件目も満室だったため、中心から離れて行く方向を歩き外壁に近い宿屋へと辿り着いた。
「ここが、最後かな・・」
中に入ると、宿屋をやっているのか疑いたくなるぐらいボロボロな状態だった。受付だと思う場所は不在で、小さなテーブル4卓置かれたスペースへと移動すると、長椅子に横たわる獣人族を見つける。
「すいません・・宿の人ですか?」
「ん?・・客か?」
低い声を出し体を起こし俺達を見つめる。
「人族か・・珍しい。泊まるのか?」
「・・はい。3人1部屋でお願いします」
「部屋なら2階の5番だ・・料金は、銀貨3枚だ」
獣人族の男は、手を伸ばしてくる。その手に銀貨3枚を置くと出していた手を引っ込ませ、また横になってから告げる。
「飯は作ってないから、外で食べてくれ・・すまんな」
「素泊まりの宿か・・」
「あぁ、それと階段は入り口横にあるから、そこから部屋に行ってくれ」
それから狭い階段を上がり、5と書かれたドアを開けると予想外に部屋は掃除の手が行き届いていて不快感はなかった・・。
「意外に綺麗にしてる部屋だな・・」
「獣人は、寝床だけは綺麗好きなんだよね〜」
「そうなの?」
クウコの言葉に驚きつつ2人をベッドに座らせる。
「まだ夕飯には早い時間だけど、ご飯食べに行く?」
「「 いらない 」」
「食べたく無いの?」
「「 うん 」」
珍しく、2人は夕食をいらないらしい・・それならば、このまま冒険者ギルドへ1人で行こうかと考える。
「それなら、冒険者ギルドに行って来ていい?」
「いいよ、リル達は待ってるね」
「それじゃ、留守番よろしくな」
「「 うん、待ってる 」」
2人を寝間着に着替えさせてから、果実水の入った瓶を2つ置いて部屋から出て王都の冒険者ギルドへと向かう。
空が暗くなるも街の大通りは明るく歩きやすい。その分、裏通りは暗く沈み昼間とは違って単独で歩くには危険な道へと姿を変えていく。
途中の酒場や飯屋からは楽しそうな会話や店先で話し込む冒険者達がよく目につく。その人間達に絡まれてしまわぬよう視線を落とし足早にギルドへと急いだ。
そして何事もなくギルド前に辿り着き、出入りする冒険者の動きの流れに合わせて中へと入ると、まだ夜になったばかりの時間帯のせいか、それなりの数の冒険者パーティーが残っていた。
(ソロで動いているのは、俺だけみたいだな・・)
周囲に俺のようなソロ冒険者は皆無で、いろんな組み合わせのパーティーがいる。その中で、唯一女性だけのパーティーで獣人と人族の混合パーティを中心に男冒険者が囲んでいる。
(よく見えないけど、すごい人集りだね・・あんまり見ないようにしないと)
俺は、目立たぬようギルド内を歩き受付窓口へと向かい、唯一対応している窓口の列の最後尾に並び順番を静かに待つ。
ここのギルドは、酒場兼食堂を併設しているようで酒盛りをしながら討伐やら街のことやらを話し盛り上がっているのを耳にしながら順番を待つ。
そして、前の冒険者の男が受付が終わり前からいなくなると受付嬢が俺を呼ぶ。
「はい、次の最後の方どうぞ〜貴方で、今日の受付は終わりで〜す」
フードを深めに被っている俺は、ギルドカードをカウンターに置いて用件を小さく短く伝える。
「帝国から来たソロ冒険者です。活動登録に来ました」
「・・はい?活動登録でよろしかったですか?」
「はい、それでお願いします」
受付嬢は、俺のギルドカードを手に取り魔法具に乗せて確認作業をしながら業務を続ける。
「登録手数料は、街の通行手数料も含まれますので銀貨5枚です」
俺は無言のまま銀貨5枚をカウンターに置くと、受付嬢が両手で優しく包むかのように俺の手にのせた。
「・・どうしました?」
「今まで、どこに行ってたんですか?」
急に涙声に変わる受付嬢に驚きながらゆっくりと顔を上げて、受付嬢と初めて視線が重なる。
「・・・・」
「やっぱり、貴方だったのですね。ずっと、待っていたんですよ」
「アメリア・・」
「ハル、会いたかった・・・・」
カラの後輩受付嬢のアメリアが、窓口越しに俺の手を離さないよう握っている。
「久しぶりだね・・もう俺のことは忘れてると思ってた」
「そんなことない・・ずっと想っていたから」
「そっか・・ありがとう」
アメリアの手がギュッと力が入り俺の手を握る。
「また、どこかに行くの?」
「まぁね・・近いうちに帝国に行こうかなと・・」
「私も行く・・良いよね?」
「でも、この仕事は?」
「もう辞める予定だったから、明日付けで辞めるわ」
「アメリア・・・・本気?」
「うん、本気よ。だって・・もう同じ過ちを犯したくないから」
「わかったよ。仕事は、いつ終わるの?」
「これから今日の業務日誌を整理してからだから、もう少しだけ」
「それなら待ってるよ」
「ありがとう・・それと、彼女達にも早く会ってあげて」
「彼女達?」
アメリアは、俺から視線を外し盛り上がる冒険者パーティー達の方を見る。
「行ったらわかるよ・・久しぶりに王都に戻って来て今夜は普段よりお酒飲んでいるせいなのか、ハルに気付いてないみたいだし」
「でも、周囲にたくさん男冒険者がいるから行きづらいな・・」
「お願い・・顔を見せれば絶対に喜ぶから」
「・・・・そこまで言うなら」
誰にも絡まれることなく、リルとクウコが待つ宿屋に戻る予定だったけどダメみたいだ。仕方なく、取り囲んでいる男達の後ろに立つ前に酒場のマスターにエールが入ったジョッキを受け取ってから近づいた。
「だからさぁ、そろそろ俺らの冒険者パーティに入ってくれないか?」
「そうだぜ・・高待遇を約束するからさ」
「もちろん、悪いことはしないさ・・嫌になったら抜けてくれても良いから頼むよ」
どうやら人集りの中心にいる子達は、周囲の冒険者パーティーから勧誘されているようだけど、彼女達の答えは拒否だった。
どうやら、彼女達が結成しているパーティーリーダーの不在が理由で断っている。確かにこの場にいない存在に責任を押し付ければ、彼女達が責められることはないだろう。
それに、かなり酒を飲んでいるような感じで取り囲む冒険者たちも熱を帯びている。
「いい加減帰ってくれないかの?ここにいる4人の答えが変わることはないのじゃ」
俺はグイッとエールを飲み、冗談交じりにパーティー加入を誘ってみることにした。
「なぁ、俺んとこのパーティーに入らないか?肉串なら毎日食べれるぞ?」
「なんだ?てめぇ・・いきなり訳のわからないこと言いやがって!」
(あ〜やっぱり、こうなるよね・・するんじゃなかったな)
俺の目の前に立っていた大男が、俺の胸ぐらを掴み脅してくる。
全くの脅威ではないけど、このまま言い返せない男を演じていると、俺の胸ぐらを掴んでいた男が膝から崩れ落ちていき俺は解放されるとともに押し倒されてしまった。
ドンッ!!
目の前には、顔を赤くしたオッドアイの瞳と茶色の瞳を持つ2人に覆い被されている。
「ちょっ・・飲み過ぎだって・・」
「「 ご主人さま!! 」」
「「 ハルッ!! 」」
猫人族のミオとミリナが俺の存在に気付き、強烈な頬ずりの嵐をしてくる。それに遅れて、腰まで黒髪を伸ばしたアルシアと銀髪のシェルが飛び込んできた。
周囲にいる冒険者の視線なんか気にすることなく、強く抱き付いているため身動きが取れない。
「みなさん、そこまでにしないとハルが大変なことになってしまいますよ」
ギルド受付嬢のアメリアからの言葉で、4人が俺から離れてくれた。
「・・たすかった〜」
ゆっくりと立ち上がり、後ろにいるアメリアに礼を伝えようと振り向こうとした瞬間に、不意に背中に衝撃を受けて窓口横の壁まで吹き飛ばされてしまった・・・・。




