10章 王都奇襲編 幕間④・・パーティー前の出来事
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猫人族のミオとミリナが王都から姿を消した日の夜に、王城内にパーティー用に建設された屋敷の大ホールで予定通りパーティーが始まっていた。
大ホールには、招待された貴族達が国王と王妃に挨拶をしているところで、その貴族達が連れて来た令嬢達は別室で楽しそうに会話をしていると、部屋のドアが開きドレスを纏う3姉妹を見て空気が変わる。
「みなさん、そんなに畏まらなくて良いのよ。今夜の主役は、勇者様ですから」
3姉妹の長女である弟1王女ミリアがそう告げながら部屋で待っている貴族令嬢達に優しい口調で告げて、部屋の奥に設置してあるソファへと座る。
ミリアとマリアがソファに座ると、部屋の隅で待機していたメイド達が2人に飲み物が入ったグラスを手渡す。ただ次女のイリアは、途中で学友である公爵家長女のダリア=バンレットの手を握り親しく会話を始めていた。
イリアの元へ貴族令嬢達が集まり、彼女から聞く勇者沖田の武勇伝に耳をすませ盛り上がっている光景をミリアとマリアが優しい表情で見つめる。
勇者沖田の武勇伝を熱く語りだし、マリアの耳に入るとマリアは不機嫌な表情へと変わりソファから立ち上がり溜め息をついた。
「はぁ・・・・」
「マリア、皆さんがいる前で溜め息をつくのは失礼よ」
ミリアもソファから立ち上がり、マリアが漏らした溜め息を指摘する。
「ミリアお姉様・・ハルがいない世界に私は・・私は何ひとつ未練はありません」
マリアは持っていたグラスを両手でギュッと握りしめている。
「・・・・ねぇ、マリア。いつになったら、ハルとの話を私に聞かせてくれるの?」
「お話し致しません。私とハルとの大切な思い出ですから」
ふふっと悪戯な笑みを姉のミリアに見せるマ妹のマリアは、少し離れた場所の果物を置いてあるテーブルへと移動する。
「もう、待ってよマリア。そんなの酷いわ」
隣から離れて行くマリアを追いかけるようにミリアはマリアの背中を追う。
しばらく2人で果物を手にとり食べていると、金髪と赤髪の少年2人が近づき金髪少年が片膝を床に着き見上げながら口を開く。
「おぉ・・相変わらずお美しいですね。ミリア様、マリア様」
「「 ありがとう 」」
ミリアが当たり障りも無い口調で笑顔を少年に向け礼を伝えた。それをチャンスだと思ったのか、赤髪少年がうれすそうな顔をしながら距離を詰め口を開いた。
「ミリア様・・私は、レヴィンレッド公爵家長男のターナー=レヴィンレッドです。どうぞ、ターナーとお呼びください」
「第1王女のミリア=マーカーですわ・・ターナー」
その隣で金髪少年がマリアに挨拶をする。
「マリア様。リグルス伯爵家長男のジーク=リグルスです。どうぞお見知りおきを」
「・・・・第3王女のマリア=マーカーです」
一通りの挨拶を済ませた後に、ターナーは学友だったミリアへ話しを初め、ジークもまたマリアと話し始めるのだった。
「ジーク、今は公式の場じゃ無いから普段通りで良いわよ」
「ありがとう、マリア。堅苦しいのは疲れるからね、それにしても、学園を卒業した以来だよねこういう催しに姿を見せるのは。さすがに勇者様がいるからかな?」
「そうね・・しばらく公式行事は辞退していたから。別に、勇者様がいるからって理由でも無いけどね」
「そうなんだ・・とても心配したよマリア。あの出来事ふがあったからね。でも、こうやって綺麗で元気な姿が見れて安心したよ」
「・・あっ・・心配してくれてありがとう」
ジークは、突然マリアの左手を取り持ち上げ手の甲にキスをする。
「えっ・・・・」
不意を突かれたマリアは、ジークの突然起こした行動に驚きの声を漏らし顔を紅く染めていく。
自分の行為にマリアが小さく声を漏らし顔を紅く染めていく表情を見て、自分にその気があると思い込んだジークは一気に気分が高揚し今まで秘めていた想いを口にしてしまった。
「マリア、僕はマリアを愛している。このパーティーが終わったら、僕の屋敷へ招待したい。もちろん、このことは両親に伝え了承してもらっ・・・・」
ガシャン!・・バタッ
ジークはマリアへ自分の想いを伝えている途中に左手に持っていたグラスを力なく落としながら膝から崩れるように前に倒れ意識を手放していた。
「きゃっ!ジッ・・ジーク?どうしたの?大丈夫?ねぇ?ジーク!」
突然目の前で倒れたジークを心配するマリアは、待機していた使用人達を呼びジークを客間へ運ぶようにと手際良く指示を出す。
「おい!ジークどうしたんだ?酒も飲んで無いのに・・このままじゃ・・・・」
当然ながらジークが倒れたことにより、ミリアとの会話を強制的に終わらされたターナーは苛立ちを纏いながらも親友として使用人に運び出されていくジークに付き添うため部屋から出て行く。
グラスが割れる音の後にマリアのジークを呼びかける声に驚き会話を止め視線を向けていたイリアや貴族令嬢達は、使用人達と共に部屋から出ていくターナーを見送った後は何もなかったかのように会話を再開していた。
そのジークが運び出され、再び2人きりになった時にミリアはマリアの耳元で小さく問い質す。
「ねぇ、さっきの・・マリアが何かしたの?」
「ふふっ・・」
笑みを浮かべながら誤魔化すマリアに、ミリアはマリアの左耳の耳たぶをつまんで聞く。
「答えなさい。金髪の子に何かしたの?」
「・・・・私の身体に触れて良い男は、1人だけなの・・」
「良いから答えなさい、マリア」
「んっ・・お姉様ぁ・・・・首トンよ・・ハル直伝の首トンよ」
「・・ハル直伝の首トン?」
マリアは、理解できていないミリアに対し右手を顔の高さまで上げ手刀を作り軽く首に振り下ろす動作を見せながら自慢げに呟く。
「そうよ。私は、チートプリンセス・アサシンのマリアなんだから」
「・・な、何よ!その恐ろしい称号・・」
つまんでいた耳たぶから手を離したミリアは、鳥肌が立つ両腕をさする。
「別に恐ろしい称号じゃなんかないわ。ハルがくれた大切な称号なんだから」
「ハ、ハルからもらったの?・・なんて羨ましい・・じゃなくて、どうして称号にアサシンの暗部の名が含まれているのよ?私たちプリンセスに必要ないでしょ?チートプリンセスっての気になるけど」
ミリアから言われたマリアは、話しに夢中になっている周囲の貴族令嬢達に見られぬようテーブル横の椅子に右足を乗せて、ドレスのスカートをゆっくり捲り色白の太ももに隠れている存在をミリアに見せた。
「コレがあるから、どんな時でも私はアサシンなの」
マリアの太ももに視線を向けるミリアが目にしたのは、革製のナイフホルダーに漆黒のスローイングナイフが数本納められているのを見て言葉を失う。
「ミリアお姉様・・武器だけじゃありませんわ。戦うスキルも、ハルから習得したのです。だから、お姉様には私の動きが見えないのは当然です」
「な、何よそれ・・マリア、ハルと過ごしている間に何があったのよ・・・・」
「それに真衣さん達4人も当然ですが、騎士団の新編部隊の中隊長職に強引に就けさせられたアイナさんとリンさんもハルに鍛え上げられていますから、この国で対抗できる人は存在しませんわ」
「ちょっ・・それってホントなの?」
「ウソと思うなら戦ってみれば、その身をもってわかりますわ」
「・・・・・・」
(ハル・・・・私の可愛い妹を返してよ!今のこの子は、本当にアサシンになってしまうじゃない・・)
ミリアが心の中でハルに文句を言っていると、部屋のドアが開かれ騎士団長ハイドが一礼して告げた。
「お待たせしました。近衛兵長に代わり騎士団長の私が、皆様をパーティー会場へと案内させていただきます。ミリア様、イリア様、マリア様は先に会場へどうぞ」
王女3姉妹は、持っていたグラスをテーブルに置いて部屋から出て行き、少し時間を置いてから招待された貴族の令嬢達が部屋を出てパーティー会場へと向かったのだった・・・・。
またそのうち投稿します。
読んでくれている方が増えていたら、調子に乗って投稿させてもらいます。




