10章 王都奇襲編 幕間②・・新たな動き
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あの魔王ジェドニスとの戦いが終わり、数十日の時が流れ王都の復興も折り返し地点までになってきた頃の休日の昼下がりに、王城の正門前広場に多勢の住民達が集まり出し門の近くに設置された壇上に立つ男を見上げ言葉を待っていた。
「・・今日まで、王都の復興に尽力してくれた皆の者に感謝する。そして忘れもしないあの日、未来ある若き騎士達が命を懸けて守ってくれたこの街と勇敢に魔王へ立ち向かい討伐してくれた勇者達に改めて心から感謝する」
国王が民衆に対し感謝の意を述べ、同じ壇上に立ち並ぶ黒髪の少年少女達へ一礼し言葉を続ける。
「皆も1度は目にしたであろう、この王城門前の道は赤く染まり今も色褪せることはない。なぜなら、若き騎士達が流した血であり身体を失っても、ここを守り抜こうとする強い意志が残されているからだ」
国王は、哀しい表情から強い意志を固めた表情へと変えて言葉に力を込めた。
「さぁ、このまま過去を見つめてばかりでは想いを託した者達が悲しみ、残された我々に明るい未来は訪れないであろう。今日を区切りとして立ち止まって我々は、前へ進んで行こうではないか!」
集まっていた住民達を見渡し、一呼吸置いて国王は告げる。
「3日後の昼に、勇者の凱旋パレード開催をここに宣言する!」
集まっていた住民達から歓声が巻き起こり、国王は右手を振りながら壇上を降り近衛兵に護衛されながら王城へと戻る。
その後に続くように王女3人が歩き、しばらく間を置いてから黒髪の少年少女達が王城へと帰って行く姿を住民達は手を振り見送っていたのだった。
・・・・同じ時の少し広場から離れた家屋の影から広場の様子を見る黒髪と茶髪の獣人族の姿があり、勇者達が王城門の中へと姿を消すと2人の姿も家屋の影へと消えていた。
魔王ジェドニスの討伐から帰還した勇者一行はしばらく王城内で過ごしていた日の朝食時に、国王から突然聞かされた演説に参加して欲しいとの願いを受け入れ、多勢の国民の前に姿を見せ終わった日の夕方頃にバルコニーで1人街を眺める勇者沖田の姿があった。
「勇者さま・・勇者様!」
静かな王城内の廊下に勇者を呼ぶ少女の声が響く。
その少し前の時間に自室のベッドの上でゴロゴロしていた沖田は、部屋を出て近くにあるお気に入りの場所であるバルコニーで1人の時間を過ごしていた。
背後から声をかけられた沖田は、小さく溜息をついてからゆっくりと振り向き声をかけてきた少女の名を呼ぶ。
「イリア王女様・・」
普段なら絶対に使わない王族向けの口調で、第2王女イリアの名前を口にする。
第2に王女イリアは、微笑みながらタタタッと小走りで移動し沖田の前に立ち止まり見上げながら口を開く。
「勇者様、わたしことは名前で呼んでくださいってお伝えしたではありませんか?」
「・・そうだったかな?」
そう言いながらも、沖田は自然な手つきでイリアの腰に腕を回し抱き寄せ密着している。
「あっ・・そうですわ。でも、いいんです」
夕陽に染まる顔とは別に頬を紅くしながら視線を逸すイリアだった。
「そっか。でも、どうしてここに俺が居るとわかったの?」
「・・そ、それは、ヒミツですわ・・んっ・・」
沖田は恥ずかしながら話すイリアを抱き上げ口付けをしてから隣に立たせ2人で王都を静かに眺め時間を共有している。
2人の幸せそうな時間をぶち壊す男が悪意も無く近づき背後から声をかけてしまった。
「へいへい〜!夕陽のように眩しい、お2人さんだね〜!」
沖田とイリアが振り向くと、沖田の同級生である真鍋と、ある日から急に真鍋の世話をする金髪エルフのリサが並んで立っていた。
「真鍋・・おまえ、空気読んでくれよな・・それよか、足の調子はどうよ?」
「わりぃわりぃ・・つい冷やかしたくなってな。足の方はもう完璧な程良くなった感じだぜ。たまにふらつく時があるから、コイツをずっと連れ添わせているんだ」
真鍋は、リサの腰に左腕を回し身体を引き寄せている。
「・・色々と元気そうだな、真鍋さんよ」
沖田達と真鍋がバルコニーで話をしていると、廊下から男1人と女2人が近づいてくる気配があった。
「勇者殿、ここにおられましたか」
「あぁ、ハイド団長。それに新編中隊長のお2人さんも」
ハイド騎士団長が付き従えて来た女2人は、元騎士団副団長の職に就いていたアイナとリンだった。彼女達は、大幅に戦力ダウンした騎士団の戦力補強のため、勇者沖田の進言により新編部隊の中隊長として騎士団に強制的に復帰させられてしまった。
2人は激しく抗議したものの、王都の南の村にあるハルの屋敷を接収しない条件を飲んで仕方なく復帰する道を選んだ。
「・・国王様がお呼びです。凱旋パレードに就いての話がしたいとのことですので、謁見の間までお越しください」
「団長、このわたしも同行しても?」
「はい。イリア王女様も御同行をお願いします。先にミリア様とマリア様は、謁見の間でお待ちになっております」
「なら、案内よろしく」
「はっ!」
騎士団長ハイドが先導して歩き、沖田達の後ろを少し離れた位置で歩くようにアイナとリンが歩く。
廊下に騎士の鎧が擦れる特有の音が聞こえる中で、沖田とイリアがイチャラブタイムへ突入し抱き寄せあったりキスしたりと好き放題やっている。
その2人の様子を背後から悔しそうで悲しそうな瞳で見つめるアイナとリンは、ギュッと拳を握り震わせている。
『・・・・アイナさん。私は、私はもう・・』
念話で悔しそうな声でアイナに告げるリンがいた。アイナは、そんな念話をしたリンを見ると彼女の右手が剣の握りを持っていることに気付く。
『リン!ダメです。耐えなさい!』
『イカせてください!もう無理です・・あの2人を見ていると、私の心がもう・・』
『リン。まだ諦めてはいけません。あの日、私は何があっても希望を捨てず耐えたからこそ奇跡の再会を果たしました。だから、まだハルの亡き姿をこの目で見ぬ限り決して自ら諦めてはいけません』
『・・・・アイナさん・・わかり・・ました』
視界を滲ませ潤んだ瞳から涙を溢さぬよう顔を上げて歩くリンの姿を見たアイナも自分の瞳から零れ落ちた涙を悟られぬよう少し顔を逸らし歩き続けた。




