9章 イシタ公国編 30話 防衛戦闘・・終息と犠牲がもたらすもの
アクセスありがとうございます
「・・・・・・」
突然現れ、勇者の強大な魔法を防ぎ去って行った魔王ジェドニスがいなくなり、静かすぎる状況に初めて気付いた俺は周囲を見渡し唖然とする。
「また全滅じゃねーか!・・・・こんな冒険者の命をゴミのように扱う戦いでいいのか?王国の奴らは!!」
怒りと悲しみをここでぶつける相手が存在しない俺は、空を見上げ想いを叫んだ。もちろん、返ってくる言葉は無い。
「・・・・チクショウ」
片手剣をアイテムボックスにしまい、荒れ果てた丘陵地帯を見渡し歩き生存者を捜索する。街から離れ森の近くを歩き崩壊した街の外壁の前へ戻るけど誰もいない。
僅かな時間を共にしたバズの姿は無い。婚約者の亡骸を捜索しようとした男の姿も無い。もちろん、外壁にもたれかかっていたライルと治癒魔法をかけていた女冒険者達もいない・・・・。
「クッソ・・・・」
こんなに前線で耐えてきた冒険者達の命を、ゴミを吹き飛ばすように魔法で消し去り解決しようとする王国の奴らが憎い・・そう思うとだんだん視界が滲み始める。
この悔しさが心を支配し、全身から湧き出る魔力を制御する気にもなれず、俺はスパイル王国の王城で出現させた月白色の魔力玉を無意識に作り浮遊させていた。
「はぁ・・はぁ・・はぁ、これは・・」
ニヤリと顔が変わっていくことを自覚しながら、勇者が放った魔法が来た方向を見つめる。気配探知スキルが使えない状態でアイツらがいる場所は特定できない・・けど、琴音や美音達が待っている場所は見当が付く。
「・・・・くらえや!クソ勇者共!!」
クソ勇者の純白の長距離魔法が来た方向と仰角を大体合わせ、月白色の魔力玉を全力で放ちあまりにも重い反動に耐えきれず背中から地面へと倒れ込み、なぜか理由も無く両腕を青空に上げガッツポーズをしてしまった。
・・・・・・ドガガァァァァーーーーン!!!!
王都マーカーの南の森で派手にやらかした爆発音を軽く上回る大爆発音が響き渡り、俺がいる場所の空気さえ振動し内臓に響き渡る。
「おぉ・・ここまでの威力か・・」
仰向けのままの姿勢から上半身を起こすと、遠くの方で黒煙や土砂が空高く舞い上がり大きな山のような姿になっていた。
すると、さっきまで脳内にノイズがかかっていたような感覚から解放され頭がクリヤになると、複数の存在と繋がる感覚があった。
『・・ハ・・ハル、聞こえる?』
『・・聞こえるよ、マリア』
『良かった・・ちゃんと繋がった。今どこ?』
『まだ、街の北側にいる』
『わかった。ミオちゃんが、さっきの大爆発にハルの魔力を感じたって大騒ぎなんだけど、そうなの?』
『・・あぁ、俺が放ったよ。また勇者の魔法で冒険者が全滅したんだ・・感情を抑えきれなくてさ・・ゴメン』
『わかってるわ、ハル。今からみんなで迎えに行くから』
『大丈夫だよマリア。俺がみんなのとこまで行くから、そこで野営の準備をしてて』
『でも!・・・・うん。わかった・・待ってるね』
『ありがとう、マリア』
最後にそう伝え、念話スキルを終わらせた俺は立ち上がり、街を通り抜け1つ目の川を目指しマリア達が待っている合流地点へと歩き出したのだった・・・・。




