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8章 王国潜伏編 17 話 夜明けの乱入者



 俺は、リンを抱いたまま廊下に出て、気付く。


「さすがに、リンを抱いたまま食堂に入るとマズイか・・」


「はい・・私の人生が16年足らずで終わってしまいます」


「だね・・背負うだけど、リルとクウコのご機嫌ななめだったから」


「はい・・2ケタは死にましたよ・・」


 そう話しながら、リンを立たせる時に偶然を装い頬にキスをした。


「他の子みたいに、リンにしてあげれないから2人だけの秘密だ」


「あぅ・・・・それなら、んっ・・」


 少し屈んでいた俺に唇を重ね、背伸びをして少し押し付けてくる。そのまま腰に腕を回し抱きしめると、リンから熱い吐息が漏れて急激に体温が上昇するのを感じる。


 まるで、密会をしているような世界観を感じ、互いの心臓がドキドキしているのが伝わる。


 少し涙目になったリンをそのまま連れて食堂に入り空いている椅子に座らせると、リンは下を向いたままになっている様子を見ながら俺は席に着く。


「ラニア、いつもありがとう。食事は皆で食べるのが良いから、今日からリンも一緒に食べるからね」


 皆は、俺を見て笑顔で頷く。そう言うと思っていたと言わんばかりの表情で。しかし、そこで待ったが入ってしまう。


「待って、ハル・・」


 声を出したのは、マリアだった。皆が驚きマリアを一斉に見つめる。俺に異論を提議する人物は決まっていて、マリアは初めてだったから。


「どうしたマリア?」


 マリアの隣にはリンが座っている。配置を決めたのは俺だ・・元王女と元副団長という関係が理由で。


「あの・・そんなに見られたら緊張しますわ。皆さん食事を続けてください」


 マリアの言葉に食事を始めて、しばらくした後に琴音が聞いている。


「マリアさん、さっきはどうしたの?」


「あっ・・えっと、リンのことについてハルに聞こうと思ったのですが、この場では控えさせてもらうことにしました」


「そうなんだ・・」



 なんか微妙な空気の中での食事を終わらせ、それぞれに割り振っている部屋で寝る子と別れ、今夜一緒に寝る獣人シスターズとカラとマリアを連れて3階の寝室へと入って行く。


 毎度のことながら、ベッドでポヨンポヨン飛び跳ねて遊ぶリル達が満足するまで、大き目のソファに座りこの光景を眺めている。


「ホント、あいつら飽きないよな・・」


「「 いつもなの?? 」」


 カラとマリアが聞いてくる。


「昼間に遊び疲れてなかったら、いつもこんな感じだね・・」


「「 そうなんだ・・ 」」


 リル達は、一切こちらを気にせず遊んでいる。近いうちにベッドが壊れてしまうだろうなと、悩みつつやめさせられない俺がいる。


 カラが左に座りマリアが右に座らず、俺の膝の上に座り背中を預けている。


「マリア王女・・とても慣れた仕草に見えるのですが・・」


「カラ、私は王女ではないのですよ。名前で呼んでください」


「す、すいませんマリアさん」


「そんな畏る必要はありませんよ・・みんなと同じハルの女ですからね」


「は、はい」


「あっ質問に答えてなかったですね。ハルに帝国領地で賊から救われた後から一緒に旅をしました。その道中にいろんな事を教えてもらうときにこの体勢だったので、コレが1番安心するのですよ」


「マリア、恥ずかしいからやめてくれよ・・」


「今更なにを言ってるの?カラさんもどうですか?」


 マリアが俺から離れカラに勧めている。マリアを見ていたカラは、俺をチラッと見た後にゆっくり動きながら俺の膝の上に座る。


 「カラ・・」


「あっ・・意外に座り心地がいいかも・・」


 カラが姿勢を変えて、一番落ち着く姿勢を探すし、3人で雑談を楽しくしていると一緒に欠伸をしてしまった。


「そろそろ寝ようか?」


「「 うん。 そうだね 」」


 そのまま大きなベッドの好きな場所で眠りにつく。すると、モゾモゾと布団から顔だけ出しケモミミをピコピコして見ていた4人と視線が重なると4人が側に来る。


 「ハル・・」


 か弱く小さな声で名前を呼び近づくリルとハグをすると、満足したのかリルはゴロゴロと周りなが移動し、その後にクウコとミオそしてミリナが同じようにハグをして眠りにつく。


 そして寝静まった深夜に、1人寝室を出て2階の大部屋へ移動し生活魔法クリーンで眠気をスッキリさせた後にソファに座る。


「はぁ・・増えすぎた・・そろそろ自重しないと・・」


 守るべき人が増えた分だけ自分の弱点になる事は理解している。そして、裏切られるかもしれないという怖さを心に常に感じている。


「・・まさか、幼馴染の2人から裏切られてしまうなんてな・・人の繋がりなんて脆いのか?カラはどうなんだろ・・」


「人間全てが、そうじゃないと思うがの・・」


 暗く静かな部屋に1人で居る俺の問いに答えてくれる存在がいた。


「シェル・・起きていたのか」


「・・たまたまじゃ」


「そっか・・隣に座るか?」


 部屋の入り口に立っていたシェルが部屋に入り隣に座る。俺は、そのままシェルに膝枕をしてもらい彼女の顔を見て呟いた。


「綺麗だ・・シェル」


 窓から差し込む月の光がちょうどシェルを照らし、サラサラの銀髪がキラキラと輝いている。同じ銀髪のリルとは、また違う髪質なのか艶やかさを感じた。


「ハル・・」


 そっと俺の名前を呼んだシェルは、ゆっくり顔を近づけ俺に口付けをしている。今夜は彼女のペースに任せている。


「んっ・・今夜は受け身なんじゃな?」


「あぁ、たまには良いだろ?主導権を譲るのシェルが初めてだよ」


 ニっと笑うシェルの頬を撫でながら久しぶりに2人きりで会話を楽しんで、そのまま部屋に戻るのが面倒と言いながらシェルがソファで眠ってしまう。


 俺は、シェルの寝顔を見た後に部屋を出て、廊下を歩き何気なく開いたままのドアの部屋を見ると、そこは誰もいない食堂がありその奥の窓の向こうに月に照らされている王城が視界に入った。


 俺は、王城に引っ張られるかのように食堂を通り抜けバルコニーへ移動し、手摺りに両手を置き眺める。


 月の光に優しく照らされていた王城が、力強い陽の光を浴び始め威厳をとりもどうかのようハッキリその姿を見せ始める。

 

 その変化を見ながらアイテムボックスからイスを出し座り何も考えず頭の中を空っぽにしていると、久しぶりにアイツが声をかけてくる。



『ヒマそうじゃの、ハルよ』


『・・・・・・』


『おーい!起きとるか?』


『・・・・・・』


『起きておるな?・・いきなりシカトか』


『・・・・・・』


『また妾をシカトするのか?』


『・・・・』


『ぐぬぬぬぬ・・・・』


 ナトリアの怒りが頂点になり、そろそろ反応してあげようかと思った瞬間に強烈な殺意を感じ首を強く締め付けられる。


「くはっ・・うぐ・・ぐるっじぃ・・」


 か細い指が俺の首に食い込み、確実に気道を締められ呼吸を止められてしまった。力づくで抵抗すれば逃げ出せるだろうが、ナトリアに打撃技は避けたい。


「がぁ・・なせ・・よ・・バカ・・」


「ふぬぬぬぬぅ」


 呼吸ができないため、意識が朦朧とし始める。


『ばかっ・・マジで殺す気か?・・あっ・・ムリ・・』


 念話でナトリアに呼び掛けながら、視界がブラックアウトしていき意識が途切れそうになっていく途中に、背後にいるナトリアから短い悲鳴が聞こえ首に食い込んでいた手の力が一気に緩む。


「ぅひゃっ!!」


「くかっ・・」


 必死に新鮮な空気を吸い込もうとしても、微量も吸えないため苦しさのあまりイスから落ちてもがいていると、上半身をガッチリ掴まれ固定される。


「ハルッ!!」


「んぐっ」


「ふぅ〜〜」


 マリアに突然顔に覆いかぶされ口を塞がれると、息を吹き込まれる。強過ぎず弱過ぎない息を収縮された気道と肺が膨らみ始め呼吸するきっかけを与えてくれた。


「ぷはっ!はぁ・・はぁ・・助かったよマリア」


「うん・・間に合ってよかったぁ〜」


 マリアが涙目で安堵の表情を見せた後、視線を俺の後ろに向けている。その背後からは、ナトリアの情けない声が聞こえてくる。


「・・うひっ・・待て、待つのじゃ・・わ、妾に敵意は無い・・敵意は微塵も無いぞ・・な?」


「・・待たぬ・・たとえお前でも許さん」


 リルの低い本気モードの声がバルコニーに響き渡る。


「あぅ・・お、おちつくのじゃ・・頼む・・リルよ頼む」


「お前は死ね・・ハルを傷つけた」


「ぬぉ・・ま、魔力を向けないで、ナトリアが召されちゃう・・クウコ、お願いしましゅ・・」


「クウコの前から消えろ・・」


 クウコもリル同様に本気モードになっていて、女神ナトリアが圧倒され号泣しガクブル状態になっている。


 このままだと、駄女神(ポンコツ)が本気で天に召されてしまうため、呼吸が落ち着いた俺は立ち上がり少し掠れた声で2人の名前を呼んだ。



「リル、クウコ・・こっちにおいで」


 俺の声に反応し、リルとクウコが走ってくる。それを両手を広げ迎えると2人が胸に飛び込んで来た。


 2人からの殺気に解放されたナトリアが両膝をつき床に四つん這いになって固まっている。それを見たマリアがナトリアの側に駆け寄り対応するようだ。


「「 ハル・・大丈夫?? 」」


 いつもの声に戻った2人が聞いてくる。


「あぁ、もう大丈夫だよ。ありがとな・・もう、ナトリアを威嚇しなくていいからな」


「でも、アイツは、ん・・」


 リルの口を強制的に口付けで塞ぐと大人しくなったが、クウコが口を開く。


「ハルを傷つけたもん。だから最期まで、んっ」


  リルの次にクウコの口を強制的に口付けしてから離す。


「あんな奴だけど、命を救ってくれた貸しがあるからな・・」


「ハルが、そういうなら・・」


 2人は不承不承ながらも頷いてくれた。それから俺は、ナトリアがここに来た理由を知らないため問う。


「そういえば、なんでナトリアがここに?」



 マリアに支えられながら立ち上がり告げる、ナトリアの言葉に俺は驚きを隠せなかった・・。








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