8章 王国潜伏編 11 話 王城侵入・・・⑤
アクセスありがとうございます。
ポタ・・ポタ・・ポタ・・
「・・・・んっ」
顔に当たる水滴に刺激されたようで、沈んでいた意識がゆっくり浮かび上がる。
「あ・・雨?」
目を覚ますと、雨の匂いが少しする。積み重ねられた家具の隙間から灰色の空がが見え、雨が降り注いでいる。全身がビショビショに濡れている感覚があったが寒さを感じるどころか、暖かい体温が俺を包んでくれていた。
「リル?・・クウコ?」
俺の声に濡れた銀色と金色の毛並みのケモミミがピコッと反応し、パチっと目を開け視線が重なる。2人の体温が人族より高いため、一晩びしょ濡れになっていた俺は寝てしまっていても体温を維持することができたのだろう。
「また助けられたね。ありがとう、リル・・クウコ」
ピッタリ寄り添うようにくっついていた2人をギュッと抱き締め、狭い空間に3人が入っているからリルとクウコを順に出して最後に俺が外に出て、大通りに出る。
ボロボロの泥だらけで濡れている俺たちは、まるで孤児院から抜け出した人間と間違われ通りすぎる人々から冷たい視線を次々に浴びせられる。
冷たい視線から逃れるかのように3人下を向いて歩き王都を出るため南門を目指し、リルのスキルを頼り門兵に気付かれることなく王都から出て街道の端っこを歩く。
「・・・・疲れてないか?」
「「 うん・・平気 」」
2人は頷き、そう呟く声に元気は無い。
その2人を見て、俺は2人がまだ今より背が低かった頃によく抱いていた時と同じように抱き抱えた。
「少しだけ、2人の顔の位置が高くなっちまったな・・」
あの頃の2人の視線は、俺よりまだ下にあった。けど今の2人は俺より高い位置に視線がある。
「うん。いっぱい抱っこしてくれて嬉しかったよ」
リルが思い出し甘えてくる。
「今は、いっぱい手を繋いでくれるし、ハルと繋がってひとつになれる」
クウコもリルに負けじと甘えてくる。
「そうだね・・大人に成長したら2人は俺から自立して行くのかな」
「それは無いよ。リルは、ずっとハルの傍にいる」
「そうだよ。クウコもずっとハルの傍にいるよ」
「ありがとな。人族の俺は、2人より先に寿命がくるから、リルとクウコを置いて行くのが心配だな・・」
街道を歩き、遠い先の俺達の家へ向かい歩きながら、そんな話をした。2人は黙り込んでしまい。首元に顔をすり寄せている。
そのまま歩いて帰ったため、夜になった頃にラニア達が待つ家にたどり着いた。
「リル、クウコ・・家についたよ」
すっかり寝てしまった2人を起こそうとしたが、起きる気配はなかった。
ドンドン!
両手が塞がっているため、足でドアをノックすると思いのほか強く蹴ってしまい荒いノックをしてしまった。
すると、声を低めにして警戒するミオの声がする。
「この時間に何用だ?・・名を名乗れ!」
「悪い、ミオ・・俺だ。両手が塞がっているから開けてくれ」
「ハルッ!」
ガチャガチャ
慌て気味の音を出しながら、ミオがドアを開けて飛び出してくる。
「お帰りなさい!」
「ただいま、ミオ。遅くなった」
「うぅ・・大丈夫です。・・リルちゃんとクウコちゃんが連れて来た2人は、2階にいます」
「そうだったな・・また迷惑かけたなミオ」
「いえ・・私達の知らないハルのことをたくさん教えてもらいました。ベッドの下に隠す本があるとかなんとかを・・」
少し紅い顔をするミオが、モジモジしながら下を向いてしまう。
「な・・そんなことを!・・他には?ねぇ?他には?・・なんか言ってたか?」
「えっと・・そのとりあえず、中へ入りましょう・・」
ミオがクルッと踵を返し逃げるように2階へと向かって行く。その後を歩いてついて行き、2階の大部屋に入ると黒髪の2人が仲良く並んで座っていた。
「琴音、美音」
「おにぃ!」
「にぃに!」
琴音と美音がソファから立ち上がり俺のそばにやって来る。2人の声にリルとクウコが目を覚まし、俺から離れ部屋に敷いているマットへ移動しゴロッと横になる。
「久しぶりだね、元気だったか?」
「うん・・おにぃ、いろいろあったけどね」
「やっと逢えた・・しかもこんな豪邸に住んでいるなんてズルいよ、にぃに」
「まぁ、俺もいろいろあったしな・・まさか2人もこの世界に召喚されるなんて驚いたよ」
「うん・・それなんだけど、こっちに来ることを真衣先輩が知っていたような感じだったの」
「えっ?・・真衣が?」
琴音は、真衣が事前にこの世界に召喚されることを知っていたようだと教えてくれた。すると、琴音が不満な顔で聞いて来る。
「にぃに・・なんで真衣先輩を呼び捨てなの?」
「えっ?今それ聞く?・・まぁ、その・・真衣とは付き合っていたからな。アイツは、部活が忙しかったし学校で人気だっただろ?俺と会うのも放課後だけで、周りに知れ渡るような感じじゃなかったしな」
「そうなんだ・・でも大好き」
美音が妹として言ってはいけないことを言ってきた。
「美音?・・その大好きはライクだよな?」
「にぃに、もちろんラブの方だよ」
「・・・・・・」
「美音ズルいよ!・・おにぃ、私だって大好きなんだからね!・・もちろんラブだから」
「・・・・・・」
双子の妹がとんでもないことを打ち明けてきた。俺の頭の中では理解できず、どうしたものかと考えていたら後ろにいるラニアが余計な一言を告げたのだった。
「ハルさん、王国では兄妹の婚姻は公式に認められているのよ。それに、ギルド長時代に何組か見たことがありますから」
(ラニアよ・・今それを言うなよ)
と心の中で泣き叫びながら、俺は2人の本気度を試してみた。
「そ・・そうか。ならさ琴音、美音」
「「 なぁに?? 」」
3階の寝室横に風呂があるから、一緒に入って今夜は一緒に寝るか?」
「「 うん!! 」」
即答だった・・。しかも、めっちゃ笑顔で返事されてしまった。声には出さないだろうが、奥で寝転んでいるリルとクウコのケモミミがピコッと反応したから2人も来るだろう。
その後は、ラニアが作ってくれた夕飯を食堂で食べ終えた俺は今、3階の風呂場の浴槽で3人一緒に浸かっている。
脱衣所で服を脱ぐ2人は恥じらい隠しながらついて来たのに、時間が経つに連れて大胆にになり何も隠さなくなったため、逆に俺は目のやり場に困っていた。
(見ないうちに2人とも成長したんだなぁ〜)
そう思いながら直視せず、視界の端に2人の姿を眺めているとドアが一気に開放された。
ガチャッ
タタタッ・・ザブ〜ン!
予想通り、リルとクウコが全裸で乱入し湯船に飛び込んで微妙な隙間に体を入り込ませ、ピッタリと身体を絡ませてくる。
「キャッ!!」
2人が飛び込んで来たおかげで、頭からお湯を被り琴音がリル達に注意するが当の本人達は、まったくもって気にしておらず、顔を俺に向け目を閉じて聞こえないフリをしている。
この乱入者に遅れること数秒、開いたままのドアから2人が飛び込んで来た。もちろん、ミオとミリナも同じように全裸で入って来たが浴槽前で急停止して、体にお湯を掛け流しゆっくり湯船に入ってくる。
「・・せ、狭くない?」
大きい桶・・いや、浴槽で5人が入れるように作ってもらったが、さすがに7人が入ると狭く互いにの身体が密着してしまう。
このカオスな状況に慣れていない琴音と美音は、顔を紅くし戸惑っているが慣れている獣人4人は、互いの位置関係を決めているようでスッポリ収まっている。
「・・おにぃ、どうしてそんなに落ち着いているの?」
「ん〜この世界が長いからかな?4人と旅をしていた頃は、いつも一緒だったしな」
「にぃに、それってハーレムってやつ?」
「まぁ、そうなるかな」
「・・沖田くんと一緒だ・・」
琴音のオキタという言葉にリルがいち早く反応し、素早く立ち上がり殺気を滲み出し琴音を見る。
「アイツとハルを同類にしないでくれる?」
「ゴ、ゴメンね・・リルちゃん」
「言っとくけど、私達の意志でハルの側にいて尽くすと誓っているの。アイツは、ただ自分の欲望を満たす為だけに女を囲っているだけ。ハルとは違う」
「リ・・リルちゃん・・」
リルの威圧に琴音は、半泣き状態になってきたため、俺は口を出す。
「リル、そんな本気になるなよ・・琴音は、そんな感じで言ったんじゃないよ」
「なら、どんな理由で勇者と一緒だと思ったの?」
リルの追撃が止まらない。今夜のリルはなぜこんなに熱くなってしまったんだろうと考えていると、リルとクウコが俺の腕を強めに掴んでいる。
「ハル、少しこの子達と話し合いが必要みたい。先にベッドで待ってて」
いつもに増して真剣な瞳で見てくるリルに気付き、俺は先に風呂場から出てベッドに腰掛ける。
「・・・・なかなか出てこないな、大丈夫かなあいつら・・」
なかなか出てこない6人の女を1人ベッドで待つ俺の心は、穏やかではなかった・・。




