8章 王国潜伏編 8話 王城侵入・・・②
お付き合いありがとうございます。
このドアの先に2人が居る・・ミオが言う2人が俺を裏切ったと、その言葉が脳裏に自然とリフレインする。
(2人が裏切った・・・・これは裏切りなのか?きっと2人は悪くない、これは仕方ないんだよな。でも、どうして異世界人の男を選んだのだろう・・)
そう思いながらドアをノックする。
コンコンコン・・
・・・・・・
部屋から返事はない。気配探知スキルで2人が部屋にいる事は把握している。
コンコンコン・・コンコン・・・・
「・・・・はい」
やっとドアの向こうから女性の声がする。久しぶりに聞くリサの声だ。
「・・・・」
「どちら様ですか?」
この声は間違いなくリサの声だ。
「夜分に失礼します。おふたり宛にプレゼントをお預かりしたため、お届けに参りました」
「・・私達にですか?」
「はい。花束をお預かりしました」
「・・花束・・ですか?」
どうやら不審に思っているようで、ドアを開けてくれる気配がない。仕方なく、次の段階へ移行する。
「そうです。・・・・それと、依頼主様から伝言を承りました」
「伝言を?・・・・なら、伝言を先に・・」
「はい。このままお伝えしてよろしいのですか?」
「・・・・廊下に・・近くに貴方以外に誰かいますか?」
「いません。この時間は、勇者様達の夕食の対応で使用人達はこの階にいません」
「わかりました。伝言を言い終わった後に、その預かった花をドアの前に置いてお引き取り願います」
「・・・・承知いたしました」
思っていた以上に警戒するリサの言葉に驚く。どうやらドアを開けてくれず、そのまま立ち去れと言っているからだ。少しの間を開けた俺は、彼女達に伝えたかった思いを伝言として告げる。
「それでは、お伝えします。カラ様も聞こえる場所にいらっしゃいますか?」
「・・えぇ、聞こえているわ」
カラの声も聞こえる事ができた。2人の声しか聞こえないが、ドア越しに2人の顔が見えているような気がして懐かしい感情が込み上げてくる。
「ありがとうございます。それでは・・リサ様、カラ様への伝言をお伝えします」
「「 えぇ、どうぞ 」」
「やぁ、リサ、カラ元気かい?猫人族のミオと再会して、こないだ彼女から2人が異世界の少年と番になると聞いたよ。ミオはちょっと怒っていたけど、俺は心から2人の幸せを願っています。リサとカラとまた一緒に過ごせないのは寂しいけど仕方ないよね?あんな別れ方しちゃったから。俺は、俺の道をこれから歩んで行きます。また、リル達と暮らして冒険するんだ。だから、2人も新しい男と幸せになってください・・・・冒険者ハルより」
俺は、伝言を言う前に2つの花束をドアの前に置き、依頼主の名前を告げる時にはドアから離れ立ち去り始めていた。今夜の目標が達成できた俺は、廊下を歩き彼女達の部屋から遠ざかる。
後方からドアが勢いよく開けられて花束を拾う音がした後に、俺は立ち止まりゆっくりと振り返り部屋から出て来た2人が無人の廊下を見渡し人を探している。
俺は何を考えていたのか、無意識に隠密スキルを解除してしまい2人の前に姿を晒してしまい廊下に突然現れた俺を見て目を見開いて固まってしまった。
「・・本当は、姿を見せるつもりは無かったんだけどね。リサ、カラ久しぶり!そして、婚姻おめでとう。これが言いたくてココに来たんだ」
2人は涙を流しながら首を振っている。
「もう、リサとカラの心の中に俺の居場所が無いと聞いたからさ・・最後にお別れの挨拶を兼ねて祝福の花束を届けに来たよ。俺は勇者達と敵対しているんだ・・だから、こうやって顔を見るのも最後なんだ」
「ハル・・会いたかった・・夢?夢じゃないよね?」
カラが1歩前に出て聞いてくる。
「夢じゃないさ。俺はちゃんと生きているから現実さ。第3王女のマリアに聞いてみたらいいよ。今は、帝国冒険者になっているけどね」
「ハルッ!!」
突然背後から俺を呼ぶ、可愛い少女の声がした。
シュタッ!!
リルとクウコがいつもの俺の横に立ち顔を見上げている。
「速いな・・ちゃんと夕飯食べた?」
「「 うん!!残さず食べたよ!! 」」
「そっか、偉いな」
無邪気な2人に視線を向けて頭を撫でた後に再びリサとカラに視線を向けると、リサが口を開く。
「リルちゃん・・クウコちゃん・・」
突然やって来た、リルとクウコの懐き具合を見て、俺が本物のハルだと思い始めたようだ。
「それじゃ、次に会う予定の子が待ってるから」
「ハル?お家に帰らないの?」
てっきり帰ると思っていたクウコが聞いてきた。
「あぁ、大事な双子に会う約束をしたからね」
「わかった。クウコも一緒に行くね」
「むぅ〜リルも〜!」
俺にしがみ付いて離れない2人に苦笑いしながら廊下を歩き階段がある場所へ向かう。
「待って!お願い!」
背後でカラが叫ぶが、俺は足を止める事なく顔だけ向けて2人に手を振るだけにした。
「違うの・・誤解が!・・・・あぅ・・」
カラが話す途中に隠密スキルを発動させ、姿と気配を消した俺は琴音と美音が自分達の部屋に戻るまでの時間を城内で消化するため中庭へと出た。
「ねぇ、ハル?」
「どうした、リル?」
「あの2人のこと、どう思っている?」
「リサとカラのこと?」
「うん」
俺達は敵地と言ってもおかしくない王国の王城中庭で、手を繋ぎながら歩き会話をして緊張感の欠片もない。
「そうだな・・嫌いじゃないよ」
「じゃぁ、好き?」
「ん〜俺が愛していた人・・でも今の彼女達は他の男を愛している。だけど、好きと言う感情はゼロじゃないけど・・今は親しい人だったかな?」
「そう・・・・」
中庭を歩き、誰もいない鍛錬場の隅にある長椅子に座っている。さすがにこの時間は誰もいないため静かだ。昼間は騎士達の声で賑やかなんだろうなと想像する。
「2人は・・リルとクウコは側にいてくれる?」
「「 うん!! 」」
「ありがとうな」
左右に座る2人をギュッと抱き寄せ、2人の体温を感じた俺の心が落ち着いて行くのを感じる。俺より小さな身体だけど、大きな存在感があるリルとクウコ。
くぅ〜〜ぅ
2人のお腹が鳴る。
2人がギュッと強く抱き付いてくる仕草で夕食をちゃんと食べていない事がわかった。でも今は、小言を言う気になれず黙ったままの俺はアイテムボックスから好物の肉串を取り出し渡す。
「食べな」
「「 ありがと 」」
肉串を受け取り仲良く食べ始める2人を見ながら、水筒を取り出し一口飲む。2人が1本目を食べ終わる時に2本目を取り出し渡すと、コクっと頷いてから受け取り食べ始める。
することの無い俺は、2人のケモミミを触り待っていると、3本目を欲しがる仕草をしないため濡れタオルを出して口の周りを拭いてやった。
食べ終わりお腹を満たした2人は寝る事がなかったが、俺に体を委ね夜空をずっと眺めている。しばらくゆっくりしていると、琴音と美音が1つの部屋にじっといるようになった。
「そろそろいいかな・・リル、クウコ行こうか?」
「うん・・んっん〜〜!!」
長椅子から立ち上がり、大きく背伸びをするリルとクウコの無防備な背中を見る俺は、普段隠している2人の尻尾をスカートから出して優しく撫でる。
「「 んぁっ!! 」」
不意に尻尾を触られた2の手入れされた尻尾がピンッ!!っと真っ直ぐ立った後は、フワッと脱力し俺の手に絡み付くように動く。
きっと俺以外の男が2人の尻尾に触れようとした瞬間にこの世から存在を消滅されるんだろうけど、俺と彼女らの関係ではそんなことにはならない。
リルとクウコの尻尾を十分堪能した俺は、ちゃんと尻尾をスカートの中に戻す。その間の2人は俺に体を委ね自ら動こうとはしなかった。
「急に触ってごめんな・・リル、クウコ」
「ハルなら、いつでも良いよ」
「うん。また好きな時に触ってね」
「あぁ、また触らせてね」
俺1人分空いている2人の間に入り、手を繋ぎ歩き出す。もちろん、行き先は琴音と美音がいる部屋だ。
城内に入り、あと1つ上の階に上がれば琴音と美音のいる部屋に辿り着くタイミングで他の誰かが部屋に入った。
「このタイミングで誰なんだろう」
「ハル、アイツが入ったよ」
「アイツ?・・勇者か!なんでまた・・」
「きっと、また夜這いの誘いに行ったはずよ」
「・・なんだって!!」
俺は、リルとクウコの手を引っ張り、その部屋へ急いで向かった・・。
もうしばらく、王城でのイベントが続きます。




