8章 王国潜伏編 6話 親愛なる2人の今・・
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「こんなもんか・・・」
アルシアとシェルが出て行った商店で1人欲しいものを買い揃えた俺は、支払いを済ませてラニアが待つ商人ギルドへ足を運ぶ。
久しぶりに商人ギルドに入ると、いつか見た白髪の男が近づいて来る。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で?」
「あぁ、ここに来ているラニアを迎えに来たんだ」
「しばらく、お待ちください」
白髪の男は一礼し、奥の部屋へと消えて行くとラニアが姿を現し小走りに近づいて来た。
「ハルッ!」
「待たせたね、ラニア」
「そんなことないわ。久しぶりに職員の子達と話しに夢中になったから、あっという間だっだよ」
「それなら良かった。リル達がお腹空かせていそうだから、そろそろ帰ろうか」
「はい」
ラニアと商人ギルドを出て馬車を引き取り、リル達が待つ家へと向かって街道を走り抜ける。陽も高くなっていてもう昼飯の時間に近づいている。
このままのペースだと少し昼を過ぎるくらいに着きそうだから、少しリル達に我慢してもらわないとっと考えていると街道の向こうから2つの影が近付いてくる。
「ん?・・・・まさか・・」
「どうかしたの?」
「あれ・・リル達じゃないか?」
2つの影の方向に指を差す。
「えっどこどこ?・・ん〜私には見えないわ」
ラニアは、戦闘のスキルが無いため視認することができなかったようだ。
「ハルゥ〜!!」
「ラニア〜!」
俺とラニアを呼ぶ声が遠くから聞こえ、その声がだんだん近付いて来てからラニアはリル達が見えたようだ。
「あっ!いたいた、あそこにいるわ!」
ラニアがリル達の姿を見つけ手を振っている。それを横目に俺は、嫌な予感がよぎる・・。
「まさか、またあのまま・・・・」
「ハルッ!」
「まっ待て!・・うぉぷっ!」
街道を走る馬車に近づくリル達が馬の横で跳び上がり、全力で身を委ね俺に突っ込んでくる特攻リルを衝撃を相殺受け止めた直後に次弾のクウコが突っ込む。
「ハルッ」
「クウコ・・」
リルに続いてクウコをギリギリで受け止めることができた。
「はぁ・・はぁ・・お前ら、俺を殺す気か?」
「ハルなら平気だよ!」
「「 ねーー?? 」」
金色と銀色の瞳で見つめてくる2人は無邪気な笑顔を見せている。
「ね〜じゃないし。いいか?受け止めるのも結構いた・・ん?なんだよ」
リルとクウコが自身の口先に人差し指を当ててから、馬車が進む方向に指差しているが理解できない俺は、その方向を見るとミオとミリナが宙に浮き飛び込んで来ていた。
「「 ハルーー!! 」」
「お前らもか!」
リルとクウコを受け止めていた俺は半身になっていたため足の踏ん張りが効かず、しかも2人同時に飛び込んできたため勢いを殺すことができないまま荷台まで吹っ飛んでしまった。
ドドン!・・ゴンッ!
「いっ・・」
ミオとミリナを傷付けないよう抱き留めたまま荷台の床に背中を強打し一瞬息が止まりると、後ろまで滑り後あおりに後頭部に強い衝撃を感じると同時に意識を手放した。
ハッと目を覚ますと、目の前にオッドアイのミオと視線が重なる。
「いでっ・・」
まだ後頭部に鈍痛が残っているが、柔らかい感触がその痛みを癒してくれる。
「・・・・ミオ?・・・・ここは寝室?」
「ごめんなさい」
どうやら3階寝室のベッドでミオは涙目で膝枕をしながら看病してくれていたようで、よく見ると頬に泣いた跡が残っている。
俺は、そんなミオの頬に手を伸ばしそっと触れながら聞いた。
「ミオ・・ずっとここにいたの?」
ミオは、コクリと頷く。
「なら、昼飯食べれてないだろ?」
ミオは首を横に振りながら答える。
「わたしにそんな資格ありません・・ハルを傷つけたから」
「そんなこと言うなよ・・ラニアが昼飯作ってくれただろ?」
「はい。ラニアさんは私達の分を作ってくれました。でも、ハルが心配で・・なのでリルちゃん達も食べずにいるんです」
俺は隣にいるリル達を見る。
「それでリル達もここで寝ているのか・・せっかくラニアが作ってくれた昼飯を食べないと申し訳ないな」
上半身を起こしベッドから立ち上がると、微かに揺れたベッドに反応しリル達が目覚め背伸びをしている。
「ん〜起きたぁ?」
「おはよ、みんな。ラニアが作ってくれた昼飯を食べに行こうか?」
「「「「 うん 」」」」
それぞれが起き上がり寝室から出て食堂へと向かうが、ミオだけは俺の後ろにピッタリついて歩いている。
「ミオ・・そんな気にすることないよ」
「・・はい」
振り向いて、ミオを抱き締めた後に両頬を軽くつまむ。
「ほら、笑って・・ミオは笑顔がよく似合うから」
「・・うぅ〜・・ひゃい・・」
ぎこちない笑顔を見せたミオの頬から手を離し食堂へ向かい入り、椅子に座って外を眺めているラニアに声をかけた。
「ゴメン、ラニア。昼飯まだあるかな?」
「まだあるけど、冷めちゃったから作り直すね」
「いいよ。それを食べるから」
「ありがとう、ハル」
そう言ってラニアはキッチンに向かい、1度片付けていた皿を配膳しなおしてくれる。
みんなの料理が揃ったところでだいぶ遅れた昼飯を食べ終わると、満足したリル達は食堂を出て遊びに行く。でも、ミオは反省しているのかリル達と一緒に行かずラニアの片付けを手伝っている。
その様子を見ながら食堂を出て隣の大部屋へ移動しソファに座っていると、ミオがお茶が入ったコップを持って入りテーブルに置く。
「ハル、お茶どうぞ」
「ありがとう、ミオ」
ミオが持って来てくれたお茶をひと口飲んで、テーブルに置く・・なぜかミオは俺の後ろで立ったままだ。
「ミオ?」
「・・・・・・」
ミオは、俺を見るも何も喋らない。
「・・なんか、ニシバルの奴隷商から引き取った直後みたいな立ち位置だね」
「・・・・・・」
ただ頷くミオを捕まえ、膝の上に座らせた俺は久しぶりにミオのケモミミと尻尾を弄ることにした。
触り始めるとミオは俺が触りやすいように姿勢を変えてくれるため、いくらでも触っていられる。真っ黒なケモミミの反応が懐かしく感じてずっといじっていると、目の前に黒く細長いものが漂っている。
「おっ?今度は尻尾だな」
ミオが尻尾を触って欲しいのをアピールするかのように、黒く細長い尻尾を俺の顔に向けてフアフアと揺らしている。
ケモミミを弄るのをやめて要求通りミオの尻尾を弄り始めた。根元から先っぽまでを不規則に弄り倒し続けていると、ミオの呼吸が少しづつ荒くなっている。
「今日は、リル達と一緒に遊ばなくていいのか?」
「んっ・・今日は、ご主人さまと一緒にいます」
「呼び方戻ってる・・まぁいいけど。それじゃ、今日は俺の相手してな」
「はい・・ご主人さまぁ」
久しぶりに長い時間をかけてミオを弄り倒した結果、ミオは意識を手放しソファで寝息をたてて寝ている。アイテムボックスから野営で使う毛布を取り出し彼女にかけてゆっくり部屋を出る。
そのままキッチンにいるラニアに、庭に行くと伝え下に降りて庭に出た。目の前に広がる光景に王城があり、野外イスを取り出し座り景色を眺める。
ふとマリアの笑う顔を思い出し、会いたいなと思ってしまった感情に対して呟いてしまう。
「・・自分勝手だな・・俺は」
陽が沈み始め、夕陽に照らされる王都全体がオレンジ色に染まりはじめていき少しづつ街に明かりが灯り始めるのを数えていると後ろから誰かが来た。害意が無いため振り向くことなく相手の動きを待つ。
バサッ
後ろから毛布をかけれた俺は顔を上げると、ミオが覗き込んでいる。
「ラニアさんにココにいるって聞いたから・・・・」
「ありがとな、座って」
アイテムボックスから野外イスを取り出し右隣りにお置くと、ミオは俺にかけた毛布を捲り俺の上に乗ってきた。
「・・そうきたか」
「はい・・そうきました」
冷えてきた空の下、1つのイスにミオと座り毛布をかけているため互いの体温で暖め合っているから寒さを感じない。
「・・ミオ、リサとカラは何処にいるんだろうな」
「・・リサさんとカラさんは王都にいます・・でも・・」
「でも?」
「・・・・えっと」
「言い難いなら、言わなくていいよ」
「いえ、あの人達は裏切りました」
ミオの言葉に俺は絶句したが、落ち着きを取り戻し言葉にする。
「う、裏切った?・・リサとカラが?」
上に乗っているミオが身体を横にし、俺を見上げ口を開く。
「はい・・勇者一行の・・あの異世界人の男と番いになる予定だと聞きました」
「・・・・そうか。それが2人が選んだ道なんだね。それなら2人の幸せを祈ろうよ・・ミオ」
ミオは俺をギュッと抱き締めながら想いを口にする。
「・・だけど、あまりにも酷いです。ハルが命を代償にしてまで救ってくれた命なのに・・命なのに!それなのにどうして・・どうして・・」
ミオは俺の感情を身代わりになってくれるように泣きじゃくり悔しがっている。
「ありがとう・・ありがとうな、ミオ」
俺は、ただそれしか言えずミオの頭を優しく撫で続けることしかできなかった。
しばらくして落ち着きを取り戻したミオは、俺の知らない情報を教えてくれる。
「その・・リサさんとカラさんは、王城で暮らし王女様の身の回りのせわをしているようです。アイナさんは、ご自分の別宅で1人生活されていて、要請があれば騎士団の鍛錬を手伝っているそうです」
「マジか・・」
「そして、勇者一行は、各地の領主や貴族からの支援を受ける代わりに魔物討伐の妖精に応じ、戦力増強しながら魔王討伐の準備を整えています。
「それでギルドの情報誌に各地で活動する勇者情報があったんだな。今は王都にいると思う?」
「はい。地方からの討伐から戻ると一定期間の休養期が設けられていますので、しばらく王都で過ごすはずです」
「そうか・・ちょっと良いこと考えた」
イスから立ち上がりミオを立たせる。
「何かするのですか?」
「あぁ、ちょっとね・・ミオ、夕飯は別で食べるとラニアに伝えてくれ」
「えっ?・・どういう意味ですか?」
「少し王都へ出かけてくる」
「ふぇ?」
気配探知スキルを発動し、リル達の居場所を特定すると丘を降りた村にいることがわかった。
「ミオ、行ってくる!」
ダッ!
そう言い残し、地を蹴り庭の柵を越えて丘の急斜面を一気に駆け下りて最短距離で、リル達の元へ向かう。
ズザザザザァァーーーーー!!
「ハル?」
突然現れた俺を見て3人がキョトンとしている。
「リル・クウコ・ミリナ、俺は今から王都へ行って来るから夕飯は先に食べていてくれな」
「何するの?」
「ちょっと、王城にいる勇者達にイタズラかな?」
「リルも行く〜!」
「クウコも〜!!」
「だぁ〜め。これは、俺1人の問題なんだ」
「「 ヤダヤダーー!! 」」
一緒に行けないリルとクウコが猛抗議して服を掴んでいる。
「ん〜今から行くから、帰る時間は夕飯の時間過ぎちゃうからな〜」
「だったら食べてから行く!」
「クウコもそうする!」
2人は瞳を輝かせ俺を見つめる。
「わかったわかった。俺は先に行っているからな。リル達なら、隠密スキルを使っている俺を見つけられるだろ?」
「うん!バッチリだよ!!」
リルは自信満々に頷く。
「・・そんな自信満々で言われると、さすがに凹むな・・。まぁ、それは仕方ないとして・・ミリナ!」
「はいっ!」
「良い返事だ。夕食後は、ミオと家の警備と留守番を頼むな」
「わかったよ」
「良い子だね」
ミリナの頭を撫でて、服を掴んでいた手を離すリルとクウコの頭を撫でた後に3人と別れ、俺は街道を走り暗闇の世界に包まれて行く王都へ向かった・・。




