8章 王国潜伏編 3話 新たな住人と少女の声
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王都から南に向けて移動した先の村にある丘の上に俺達の新居が完成し、今日から移り住むことになった。今はラニアが御者をする商人ギルドの馬車で向かっている。
「やっぱ馬車必要だよな〜」
そう思いながら遠く離れる王都を見ながらいると、いつのまにか眠ってしまったようだ。
「んっ・・」
「ハルさん、着きましたよ」
身体が揺さぶられ、目を開けると目の前にラニアの茶色い瞳があった。
「おはよ」
「おはようございます。新居に着きましたよ、ハルさん」
ラニアに起こされた俺は、背伸びをしてから馬車から降りるとちょうど目の前が門の入り口で見上げると新居があった。
「ハルさん、無事にこの日を迎えることが出来て幸せです」
「ラニアさん、今日までお世話になりました。まさか、ギルド長自ら最後まで対応してもらえるとは思いませんでしたよ。
「ハルさんの対応は、私じゃないと無理だと判断したので担当を務めさせていただきました」
「本当にありがとう、ラニアさん」
ラニアと握手を交わした俺は、挨拶を済ませて門扉を開けて中に入る。するとなぜかラニアも後ろから付いてきて門扉を閉める。
「ん?ラニアさん?」
「どうかしましたか?」
「いえ・・なんでも」
きっと家の説明が残っているのだろうと思い気にせず敷地を歩き家の玄関ドアを開けて中に入り中央ホールの階段を上がり2階へ向かう。
後ろからは、リル達と楽しそうに話すラニアの声がするが、何か家の説明をする気配は無い。
そこで俺は1つの違和感に気づいたのだった。
それは、ラニアが両手に大きな鞄を持っているのだ。今までは、小さな手提げ鞄を1つ持っていたのに今日は違っていた。
とりあえず、ラニアの件は後回しにして、家具の設置を優先する。
2階の食堂に入った俺は、アイテムボックスに収納していた大きなテーブルと10人分の椅子囲うように出して並べる。
そのまま並べた奥の椅子に座らず、バルコニー側のテーブル中央あたりの椅子に座ると左にリルとミオが座り右にクウコとミリナが座り浮いた足をプラプラさせている。
そして1人残ったラニアは、台所側の方に立ったまま笑顔で俺を見ている。
「ラニア・・さん?」
「ハルさん、夕食はいつにしますか?」
「・・はい?」
ラニアの言葉に驚いていると、ミオが俺の代わりに告げる。
「ラニアさん、ご主人さまの夕食は今の時期だと陽が沈むくらいが、ちょうど良い時間です」
「ミオちゃんありがとう。それではハルさん、夕食はその時間に食べれるよう支度しますね」
そう言い残したラニアがキッチンへと消えて行く姿を見た後に、無言でミオを見つめる。
「・・ご主人さま、そんなに見つめられたら恥ずかしいです」
いつのまにかリル達3人は、バルコニーへ出てゴロゴロ遊んでいる。
1人状況がつかめない俺は、ミオを手招きし抱き寄せて質問をすることにした。
「ミオ・・」
「はい、ご主人さま」
「ここは、俺達の家だよな?」
「はい。ご主人さまの家で間違いありません」
「それなら、商人ギルド長のラニアが夕食を作るのはおかしくないか?」
「ご主人さま?リルちゃんから聞いていませんか?」
ミオが顔を見上げて不思議そうに俺を見る。
「リルが?なにも聞いてないけど・・」
「そうでしたか、実はですね・・」
どうやら、リル達は家が完成するまでの期間俺が別件で不在している時、ラニアの作る料理が気に入ったらしく家が完成したらメイドとして住まないかと打診していたらしい。
もちろん俺が反対すれば、この話しは無くなる。
「マジか・・そんなことがあったなんて。あのリルが俺以外の料理を食べるなんて」
「ご主人さま、それでラニアさんについてどうします?」
「あぁ、それなら答えは決まったよ」
俺はそう言いながら、ミオの頭を撫でてケモミミを久しぶりに弄りながら身体を委ねてくるミオと甘い時間を過ごした。
3人での遊びに飽きたのか、リル達がバルコニーから戻ってくる。
「あ〜ミオだけズルいよー!」
リルがそう言いながら俺に抱きついてくる。ミオも場所を譲るかのように少し姿勢を変えてクウコとミリナの場所も作った。
四方から抱き締められている俺は、なにもすることが出来ず4人が満足して離れるのを待つだけだった。
そこで、ヒョコッとキッチンから顔を出したラニアが口を開く。
「ハルさん、嫌いな食べ物はありますか?」
「特にコレって物は無いよ」
「わかりました」
スッと顔を戻しキッチンに消えたラニアを見て、なぜか料理が待ち遠しい俺がいる。
すると、いつもの場所にミオがいるため、今は右側から抱き付いているリルが俺を呼ぶ。
「ハル、あのね・・」
「ラニアのことだろ?問題ないさ」
「ありがと、大好きよハル」
「けどさ、ラニアは商人ギルド長だよな?」
「うん。もう後継者は決まっているからラニアはいいみたい」
「そっか・・なら問題無いな」
「うん」
ずっと食堂の椅子に座るのもどうかと思い、隣りの大部屋へ移動した俺たちはソファやテーブルを出して、大きな四角いマットを敷いてゆっくり過ごせる空間を完成させる。
俺はソファに座り前を見ると、4人は敷いたマットでゴロンと横になりくつろいでいる。
それを見ながら何かが足りない気がすると思いながら、深くソファに座っているといつのまにか意識を手放していた。
暗い空間にいる・・だけど穏やかな時間が流れている。不安な要素は1つも無い。これからのんびりとこの家で過ごして、ナトリアに頼まれたことをやるだけだ。
すると、この空間に少女の声が微かに聞こえる。
『どこ・・どこにいるの?』
(・・誰かを探しているのかな?)
『・・お願い・・この・・声がが届いたら・・・・』
(この子のスキルに干渉してしまったみたいだな・・邪魔しちゃダメだな)
『・・私の声が・・届いたらお願い・・』
(コレは念話スキル?・・だよな。なんで俺なんかと・・)
しばらく途切れていた後にさっきまで微かに聞こえていた少女の声が鮮明に聞こえた。
『お願い!私の声が届いたら・・・・ハル!!』
「 マリア!! 」
思わず半年以上前に別れた彼女の名前を叫びながら、俺の意識が覚醒した。
ラニアがメイドとして住み込むようです。




